運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

| スポンサー広告 | TOP↑

≫ EDIT

声を聞かせて

ちょっとサイト更新出来ないのでブログでSSS投下。
レイユリ。
おっさんは乙女。これは譲れない。


 
 目を開けて、室内の暗さに三度瞬きを繰り返した。室内灯がサイドテーブルの上で赤みを帯びた光を放っていたが、それは勿論眠りを妨げない程度の薄暗い明りで、室内の様子をはっきりと映し出す役目はしていなかった。
 身体を動かさないように顔だけ動かし、目当ての姿を探す。眠る前の記憶では自分の左側にいたはずだと顔を向ければ、探すまでもなく視界に黒く長い髪が目に入った。シーツを片手で手繰り寄せるようにして抱えている姿は、起きている時とは違って子供っぽさが滲み出ている。手で引き寄せているから肩が完全に外に出ていて冷えるだろうにと思うのだが、本人曰くはこれが一番すっきりと目覚められる寝方らしい。昔から散々フレンに注意されてきたらしく、特に問題もないのだから成人した今ぐらいは好きな格好で寝ても良いだろうと、不機嫌の割合の高い口調で言われてしまった。
 自分にだけ見せる、大きな紫紺の瞳に宿る表情を思い出す。レイヴンは音を立てず口の端に笑いを浮かべた。
 静かだった。夜中を過ぎ、夜明け前の時間。宿の皆は寝静まっているし、街で騒ぐような連中も既にいなくなってしまっている。眼を閉じてじっとしていると、どこにいるのかもわからなくなってしまいそうだ。すぐ傍にあるユーリの姿さえ消えてしまいそうだった。聞こえるはずの寝息も、重い静寂の中に沈み込んでしまっていて、微かも鼓膜を揺らさない。
「ユー……」
 名前を呼び掛けて、止める。
 起こすにはまだ早い時間だ。それに昨日は随分と無茶をさせたような気もする。ユーリはそういったことを口も表情にも出さないし悟らせるようなこともないけれど、毎晩のことでは若いとはいっても疲れているはずだ。
 レイヴンは自身のことを何に対しても執着などない人間だと思っていたが、どうもユーリ相手だとまるっきり勝手が違った。抑えようのない欲しいという感覚や、もっとという際限ない欲求に否応もなく突き動かされてしまう。まるで死んでいた十年を取り戻そうとしているかのように。
 きっと、それに気づいているからユーリは何も言わないのだ。それ以外の、他愛のない要求――デザートは控えめにして欲しいとか、少しぐらいは手を繋いで欲しいとか、愛情コロッケ作って欲しいとか――は素気無く断るくせに、求めれば何も言わずに抱き締めさせてくれる。
「……青、年」
 沈黙の中に紛れるように小さく囁いた。
 レイヴンに向けたままの背は、動かない。
「ユーリ」
 なだらかな曲線を見せる肩が微かに上下していた。
 シーツを握り締めている手は、真っ先に魔物に突っ込むような戦い方をしているにもかかわらず、白く綺麗な指先をしている。指の節がやや骨ばっているところが、辛うじて剣を持つ者の特徴といえるかもしれない程度だ。
 レイヴンの、日に焼けてゴツゴツとした手とは随分違う。
「――愛してる」
 反応は、やはりない。
 黙ったままレイヴンの言葉に晒されている背に、小さく笑った。
 今まで気持ちを込めて囁いたことのないこの言葉を、レイヴンはいつでもユーリに言いたくて仕方がなかった。意識がある時にその言葉を囁けば問答無用で握り締めた拳がやってくるので、詠唱に託けて叫ぶ以外はこれでも自重しているのだ。だが眠ったままのユーリは拳を繰り出してくることも、不機嫌そうな表情を無理矢理張り付けて睨みつけてくることもない。伝えたい言葉を飽きるほど囁いたとしても、レイヴンの言葉の前にじっとしている。
「青年、愛してる。青年のこと、好きだわ。青年が何よりも大切よ」
 言葉にすると安っぽくてくすぐったい、けれど偽りのない想い。
 伝えたくて叫びたくて苦しくて、けれどそれだけで満たされる想い。
 ああ、それでも、と思ってしまう。この想いだけで、伝える相手がいるだけで満足しているはずなのに、それでもと思ってしまうのだ。大切な存在がすぐ手の届くいる場所にいるだけで、これ以上なく満たされているはずなのに、それでもまだ強請りたくなってしまうのだ。
「……早く朝にならないかしらね」
 そうすればユーリの声が聞けるのに。
 殺気手前の気配を瞳に宿しながら、容赦のない拳を繰り出されるとしても、彼の低く良く通る声が自分を呼ぶのは、とてもとても心地良いのだから。

| ヴェスペリア | TOP↑

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。