運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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レイユリと言い張る

レイユリなんだけど…今回もおっさんが乙女。
ヤバイ。格好良いおっさんが書けなくなってる。
シュヴァーンの時のような格好良さを滲ませるおっさん、が好みなのに。
ま、ヤマもオチもないSSですよ、と。


 手首を捕まえると顔だけで振り向いて細い首を左に傾け、どうかしたのかと問いたげに宵闇色の瞳をぱちぱちと二度瞬いた。無言のまま少しだけ力を入れて手を引けば、特に抵抗もなく黒い髪を肩から滑らせるようにして身体ごとレイヴンに向き直った。じっと掴んだままの手は振り払われることなく、警戒の欠片もない綺麗な眼差しだけが向けられている。
 ユーリは敵意や殺気には恐ろしいほど敏感に反応するくせに、それ以外については無頓着というか興味がないのか、ほとんど反応らしい反応を見せることがなかった。特に年少の仲間の前ではまだしも、レイヴン相手には時折恐ろしいほど無防備な表情を浮かべる時がある。そんな時の表情は年齢以上に幼くて、見方によっては中性的な美しさを浮かべるのだ。
 透けるように白い肌に浮かぶ黒真珠のような瞳を見開いて、形の良い薄桃色の唇は緩く閉じられた状態で、艶やかな黒髪の隙間から陶磁器のように滑らかな首のラインを覗かせながら見つめてくるのだ。今、レイヴンに対して見せているような表情で。
 もう片方の手も掴み両手を掴んで向かい合う。それでも腕が振り払われることも、近づいた身体を離されることも、行動に対しての疑問を問われることもない。浮かべた表情そのままに、レイヴンが起こす行動の続きを待っていた。だから少しだけ背を伸ばすようにして身体を引き寄せながら、小さく開きかけた唇に自分の唇を重ね合わせた。
 ドクリと心臓が跳ねる。ユーリにも音が聞こえたのではないかと思うほど大きな鼓動だった。
 合わせた唇が無様にも震え、無意識の内に止めていた呼吸を吐き出す。
 唇を離し、手を離し、一歩離れた。俯きかげんの視界にはきつく結ばれた帯と、剣を振るうとは思えないほど細い手首に嵌められた魔導器が見えている。空気は音を伝える役目を放棄したかのように静止していて、自分の呼吸音や周りの音すら拾えなかった。何かしら発せられるだろうと思っていたユーリの言葉も、聞こえない。
 視線は、上げられなかった。
「――ねえ、青年」
「ん?」
「何も言ってくれないの?」
「何もって、何をだよ」
 急に何をするんだ。こんなことは女相手にしろ。何の悪い冗談だ。とうとう頭がおかしくなったのか、おっさん。そんなことを言われるのは想定していた。もしくは問答無用で右の拳が飛んでくるとか、技を叩き込まれるぐらいのこともあるかもしれないと覚悟していた。
 だが無言と無反応は拒絶の言葉よりも心臓に突き刺さる。自分で行動しておいて甚だ自分勝手だが、ユーリの反応を知るのが怖かった。そして怖いくせに自分の行動を止められなかった。無防備過ぎるのが悪いのだと心の中で呟いたのは、もちろんただの責任転嫁であり言い訳だ。
「なあ、おっさん」
「な……に?」
 顔を上げるのが怖い。自分を見下ろしているであろう瞳に何が浮かんでいるのかを知るのが怖い。知ることを避けたところで現実は何も変わらないが、それでも視線を上げられなかった。
 苦笑交じりの溜息が頭上で聞こえる。
「――『冗談はほどほどにしろよ、おっさん』」
 用意された台詞を読み上げているかのような棒読みに顔を上げた。
 だがその時には既にユーリは背を向けて、いつものように歩き出していた。

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