運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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貴方故、と言わせて

レイユリ。
ジャンルは「期待させておいて期待はずれ」なSS。
前後の説明がないのでシチュがわかりづらいのはいつものこと。
各人、妄想で補完して下さいませ。
拙サイトではわかりやすい話&eroは無理ってことです。

つまり今年も、「自己満足」を貫くサイト、ってことでよろしくお願いします。

P.S.
日曜のイベントがリアル都合で行けなさそう…
何で休み三日間もあるのに重なるんだよ。
誰か慰めて。そしてレイユリ本とかユリレイ本とか買ってきて(切実)。


 
 背中に視線を感じた時に危ないと思ったが、同時に既に遅いこともわかっていた。
 肩を掴まれ身体を振り向かされるのと、もう片方の手がレイヴンの身体を後ろに押すのがほぼ同時。変に抵抗しても純粋な力では負けることがわかっているので、押されるがままにそのままベッドに尻餅をついた。顎を持ち上げられ目の前に広がった天井。その天井の模様を隠すように、長い髪が照明を受けて紫色に光りながらベールのように視界を覆う。
 ――また、だわね
 肩を掴むユーリの右手の力は痛いぐらいに強く、顎を掴んだままの左手は荒々しさがこもっていた。片膝だけをベッドの端に乗せ、上から覗き込むようにレイヴンを腕の中に引き寄せる。重ねた唇が熱く、貪るように舌を侵入させてくるくせに、どこか怯えたような眼差しを消し切れていない。けれどそれにレイヴンが気が付いた瞬間には、それらの感情は紫紺の瞳の奥に押し込められて、いつもと同じ穏やかな色合いだけを浮かべた。
 器用なくせに不器用なユーリは、こうして大人と子供の仮面を半分ずつ被った表情を、レイヴンの前でだけ見せるのだ。自分の感情に気づいて欲しくて、けれど慰められるのは望んでいない。それでも優しい手を欲して、縋ればレイヴンが受け止めることを知っていて、でもつけ込むように縋る自分が許せない。隠しきれない感情が溢れて、でもそれすらも「知って欲しいが故に隠していない」からなのだと、自分自身で知っている。
 子供の感情と欲求を、大人の理性と常識で必死に覆い隠そうとしている姿。でもそれすら、子供の部分を言い訳に使った卑怯な欲し方だと、ユーリ自身は思っているのだろう。
「まったく面倒な性分よね、青年は」
「……何のことだよ」
「聞き返さなくてもわかってるでしょ」
 手を伸ばして頬に触れれば、少しだけ肌が強張ったのが伝わってきた。だがレイヴンを見下ろす眼差しも掴んでいる手も、僅かばかりも揺れはしない。変に自制がきくところが、本当に面倒で損な性分をしているものだと思う。もう少しぐらいは自分に甘くても誰も咎めはしないし、その程度のことで自分を甘やかしていることにはならないはずだが、いくら言ったところで聞き入れはしないだろう。
 それこそ彼の性分、なのだから。
「大丈夫よ、おっさん生きてるから」
 肌蹴た服の隙間から洩れこぼれる赤い光を放つ魔導器にそっと手を置き、そしてその手をユーリの左胸に添える。添えた手からは肌越しにユーリの心臓の鼓動が伝わってきた。いつもよりも早く脈打っているように感じるのは、気のせいではないと知っている。
 皆の前では心配する素振りも見せないくせに、本当は誰よりもレイヴンの心臓を気にしているのだ。鋭い剣戟を乗せた刃を、この左胸に向けて振り下ろしたのは他ならないユーリなのだから。
 悔いているとは言わない。苦しいとも言わない。悲しかったとも言わない。けれどその諸々を抱えているのは知っている。戦いの後剣を鞘に収める瞬間に、宿で武器の手入れをしている時に、野営の見張りを一人している時に、自分の左手を苦い表情で眺めていることを何度も見た。そしてそれを、誰よりもレイヴンに気づかれないようにしていることもわかっている。
 今朝もまた唇を噛み締め胸を抑えて堪えていた。皆が寝静まった部屋の中で、息を殺しながら、一人で。
「大丈夫よ」
 全部一人で受け止めて、例え皆と荷を分かち合ったとしても重要なところは一人で背負いこんで、そして真っ直ぐと立ってみせる。それがユーリだとわかっている。だがそうやって生きることができたとしても、それが苦しくない訳がないのだ。
 もうレイヴンは見てしまっているのだ。バクティオン神殿で、何も纏っていない生身の感情を曝け出した瞬間のユーリを。痛みと苦しみと悲しみを幾重にも織り交ぜて、悔恨という名の布を編み上げたかのようなあの瞬間を見てしまっている。そして、僅かも取り繕うことが出来ない剥き出しの感情をユーリから無理矢理引き出したのは、レイヴンに他ならないのだ。
 しかもそのことに何よりも強い後悔と、そして喜びを感じてしまったのも、レイヴンなのだ。
「青年の左手はおっさんの心臓を止めてないし、」
「…………」
「青年の右手が届かないところに、おっさんは行かない」
 両手をユーリの手に重ねる。ユーリの方が僅かに大きな手の平に、ユーリの方が僅かに長い指。けれど今だけは少しだけ小さく感じる、その両手。離したくないと思い、同時に離さないと誓う。そして無謀にもそう誓ってしまえる自分自身に、苦笑と賛辞を送りたくなった。
 誓いの言葉を口にするなど、何年振りだろうか。
「――ったり前だ」
「そうそう、当然のことよねー」
 絞り出した声にこもっている想いの強さを実感しながら、わざと軽い口調で返す。
 人は欲求があれば生きていける。そしてその欲求をレイヴンに抱かせたのは、紛れもなくユーリという存在だ。だからユーリはあらゆる意味で、レイヴンを死人から生者へと変えた存在なのだ。そして今生きていること、そのものなのだ。だから口にした誓いは何よりも重いけれど、何よりも当たり前のことなのだ。空気が存在していることのように、当たり前の誓い。
 笑ってしまうほど稚拙な考えだけれども、それが事実だ。
 何年も遠回りばかりして見つけた、小さな小さな真実だ。
「だから心配しなくてもいいのよ、青年」
「心配なんか、してねーよ」
「そうね。心配なんか、しないわよね」
 重ねていた手を離してユーリの首へとまわし、ゆっくりと引き寄せた。
 そして吐息のように優しい口づけを、交わした。

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