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運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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モレンド -morendo-

ミョルゾ到着時。
イベント前。
レイユリ…にはまだなってない、かな。




「嫌な色、よね」
 いつ戻るかわからない散歩の主をじっと待っているのも億劫で、息抜きがてら外に出てみた。辺りは静かで、けれど開放的な空気を含んでいてる。だが街の中を歩きながら目に映る空の色に、思わず感情が染み込んだ言葉を呟いた。
 クリティア族が住む隠された街、ミョルゾ。空の上から見渡すことのできる空は、始祖の隷長の薄い光に包まれていて、地上で見るよりも白みがかった青色をしている。出迎えたクリティア族は皆マイペースでおっとりとしていて、これも空の上で浮かんでいる影響なのかとぼんやりと思った。
 どこか地上とは別の時間が流れているようだった。穏やかで平和で、けれど居心地が悪い。
「あれ、おっさんも散歩か?」
 後ろから聞こえてきた声に、首から上だけを動かして振り向いた。
 視線の先にはレイヴンの少し前に部屋から出ていった、ユーリの姿があった。左手に剣を下げたまま、特に急ぐでもなくゆっくりとした足取りでレイヴンに近づいてくる。細い毛質の黒髪は歩く速度の風にもふわりと靡いて、形の良いカーブを描く顎のラインを隠すように揺れていた。
 何もかもが薄い色彩に彩られたミョルゾで、その姿だけははっきりとした黒を纏っている。違和感と安心感、そして罪悪感に似た苦いものが込み上げてきた。だがいつもと同じようにそれを表面に出すようなことはせず、呼吸と共に嚥下して消し去る。
「青年は、偵察かねた散歩?」
「ただの散歩だよ。のんびりどーぞ、って言われると何となく落ち着かねぇしな」
「あー、それは何となくわかるわ」
 レイヴンの落ち着かない理由は別のところにあったのだが、そのことは口にしなかった。
 口にしても仕方のないことだ。この後の出来事はきっと、この青年や他の仲間たちを傷つけるだろう。いや、傷つけるというのは随分と自分を過大評価している表現かもしれない。それは彼らに「レイヴン」が、仲間として信頼されていて初めて成り立つ感情だ。だから彼らが示すものは、裏切り者に対する怒りだけという可能性も十分にある。
 レイヴンのそんな心境を知ってか知らずか、ユーリはレイヴンの返答にふーんと、興味がないのか信じていないのかわからない曖昧な返事を返してきた。真っ直ぐな、けれど単純ではない紫紺の視線は、隠し事をしているレイヴンの心臓に突き刺さるような気配を纏っている。攻撃的な鋭さや悪意を持っている訳ではないが、奥にあるものを見透かすような輝きが、偽物の心臓を止めてしまうのではないかという気にさせられた。
 無意識に懐の小太刀に手を伸ばしかけて、慌てて動きを止める。
「皆は?」
「村長の家にいるわよ」
「なんだ、まだ戻ってきてねーのか」
「まだ暫くかかるんじゃないのー」
 ぐるりと周辺に目をやってみるが、村長らしき姿は見えなかった。それほど広い街という訳でもなさそうだが、道が入り組んでいてなかなか複雑な造りをしているので、案外歩いてまわれる距離は広いのかもしれない。
「まぁ丁度いいかもな」
「ん?」
「話を聞くにしても時間があった方がいいだろ。フェローからの話だって、まだ整理できていないだろうしな」
「まぁ、急に大事になったからねー」
「おっさんはあんまり驚いてねーみたいだけど、な」
 何気ない会話に織り込まれる、確認するような台詞。
 本当に、どうしてこの青年はこれほど鋭いのかねと嘆息したくなる。彼がいなければもっと気楽に簡単に事が運べただろうに、油断していると尻尾を掴まれそうだから困ったものだ。だが、そんな面倒なはずの緊張感があるからこそ、ついついこの中から出たくなくなっているのも事実。このまま彼らと共に行動する、なんてまったく自分らしくないことを想像してしまう。
 自分の行動を決める自由など、レイヴンにはないというのに。
「そんなことないわよー。もうビックリしっぱなしでついてけないわ」
「そうか? ジュディの話、心当たりがあるっていう感じだったぜ」
「いやいやもう驚き過ぎて。ほら、おっさん顔に出にくいタイプだから」
「で、誤解されやすいタイプでもある、と」
 カプワ・トリムでの発言をそのまま返されて、あはははと笑いで誤魔化す。
 やはり何か勘付いているのかもしれない。確証があってのことというよりも、何となくの違和感を抱いているのだろう。普段通りに振る舞っているつもりだが、些細な変化でもユーリが目敏く気づくのは今に始まったことではない。気が付いていないだけでレイヴンの言動にも変化が表れているのだろう。
「あれ? もしかして根に持ってる?」
「別に気にしちゃいねーけどな。ただ、」
 黒い瞳がレイヴンを捉え、顔から爪先へ、そして爪先から顔へと視線を一往復させる。艶やかな瞳の中に、ミョルゾの妙に白っぽい景色と、普段通りに演じているレイヴンの胡散臭い笑みが映り込んでいた。本物の輝きを放つ瞳の中に映る、偽物だけで作られたレイヴンの姿。何とも皮肉な組み合わせだ。
「調子悪そうだっただろ、エゴソーの森で。どこか怪我でもしたのかと思って、な」
「――大丈、夫よ」
 こういうところは、本当にいつまでたっても慣れない。簡単に人を信用せず警戒心も強いのに、そのくせ手を差し出すことを躊躇いはしない。それはきっと自分の手の長さを正しく把握しているからなのだろう。自分の両手で守れる範囲をわかっているから、中のものは守ろうとする。
 そして胡散臭いはずのレイヴンも、その輪の中に入れてくれているのだ。
 だが後数時間もすれば、レイヴンはその輪から外れるどころか敵対するのだ。そうすればここに存在している守るための腕は、彼の仲間を守るために、剣を持ち刃となってレイヴンに向けられる。それは最初から決まっていたことで、回避することの出来ない決定事項なのだ。
「堪んないわね」
「レイヴン?」
 今更なのだ。何もかもが。
「……このマイペースな空気、ちょっと合わないわねーって」
「おっさんには、向いてそうだけどな」
「そう? おっさん意外と働き者なのよ」
「…………ま、よくウロチョロしてるのは確かだな」
 その言葉にレイヴンが反応する前に、戻ろうぜと続けられた。ユーリは村長の家の方へと歩き出す。レイヴンもいつものように、歩きだしたユーリの左後ろを、同じ歩調でついて行く。どうやらレイヴンがずっと、何かで動いていることに気がついているようだ。本当に周りを良く見ているものだと感心する。
 そして同時にそれでも態度を変えない姿に、どんな感情がこもっているのか自分でもわからない溜息を一つ、長く細く吐き出した。


甘く仕上がらないのはお約束です。
この後の、ユーリのおっさんフラッシュバックに萌えたのは私だけですか。そうですか。

モレンド=だんだん遅く弱く(演奏用語)。
語源はイタリア語のmorente(瀕死、滅びゆく)。
レイヴンとしての自由、生きているように錯覚出来た時間の終わり、とか。

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