運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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心臓に刻まれた理由

時期は奪還後の帝都。ネタバレです。
ユリレイなのかレイユリなのかは不明。
別に甘くはない。
ストーリー上のちょっとした補完妄想。

書いててわかったけど、私はユーリ総受け希望じゃない。何ていうか、総惚れられ希望。しかも総愛されではなくて、総惚れられ。右でも左でも良いけど、皆が皆、男前兄貴なユーリに惚れているというのが似合うと思う。
そういう風に書けないのが甚だ悔しいけど。




「何でこんな所にいんだよ」
「いやー、なんていうか落ち着くってやつ? 青年も好きでしょ、こういう所」
「オレは別に好きで入ってた訳じゃねーよ」
「あれー、そうだっけ」
「ま、おっさんはこういう胡散臭い所が似合いそうだけどな」
 牢の中で寝転がっていたレイヴンがいつもより少し軽めに答えれば、若いくせに妙に気のつくユーリは同じ調子の軽い口調で返してきた。普通はもう少し言葉に詰まるとか複雑な感情をのぞかせるとかするところなのに可愛げのない青年だ、と思うのはレイヴンの勝手な言い分なのだろう。そうされれば楽な逃げ道になるというのに、自然と人に手を差し伸べるくせにこういうところは容赦ないのだ、ユーリは。
 レイヴンは感情を出さないように、億劫そうなのんびりとした動作で顔を上げた。長い黒髪の向こうから見下ろしてくるユーリの姿を見上げると、顔と態度に呆れた表情が浮かんでいた。思いの外にその顔が近くて、一瞬意味もなく空気の塊を飲み込む。
「……胡散臭いって、それってちょっと酷くないー?」
「おっさんから胡散臭さを取ったら何が残るんだよ」
「傷つくなー」
 ユーリはそう言っていつものように皮肉っぽい笑みを浮かべる。あまりにも変わらない態度に、今の状況や自分がやったことを忘れてしまいそうになる。
 元から利用するために側にいた訳で、実際は胡散臭いどころか正真正銘の裏切りものだった訳で。察しの良いユーリのことだからレイヴンが本当に「胡散臭い」ことぐらいは感づいていたはずだ。それでも同じ口調と態度で接してくる彼は、やはりどこか不思議な存在だった。
 はっきりと慰めようとしてくれている訳ではない。やったことを全て水に流してくれている訳でもない。そのまま事実として受け入れている、というところだろうか。ただヘラクレスで殴られたのは、なかなか本気で痛かったのは事実だ。色々な意味で。
「で、こんな所で何してる訳?」
「いや、なーんにも。ちょっと静かなところで一人になりたいなーってね。色々考え事がしたい時もあるのよ、おっさんにも」
「そりゃぁ珍しいな」
 本気で驚いたような表情で言うのだからさすがに傷つく。
「ちょ、そこはもっと同情的な返事を期待しても良い所じゃない?」
「そりゃぁ悪かったな」
「悪いと思ってないでしょ、青年」
「思ってないな」
 あっさりと肯定の返事が返ってきて、思わずがっくりと肩を落とした。そして同時に、何かが胸の奥から流されていくのも感じた。
 そんなものを感じる資格などないというのに不思議だ。
 不思議だと言えばあのお譲ちゃんもそうだ。自分が一番酷い目にあわされたのに、一発殴るだけで受け入れてくれるのだから。普通は違うだろうと言いたい。殺されたって文句の言えない立場だ。少なくとも、もっと恨まれるなり憎まれるなりするものなのに。
「エステルがそれでいいって言ったんだ。オレが口を挟むことじゃないだろ」
「……変わってるわ、あんたら」
「おっさんに言われるとは不本意だな」
「少しぐらいは自覚を持ちなさいよ」
「比較対象がおっさんだと、何をやっても普通に感じちまうからな」
「本当に容赦ないね、青年は」
「そうか? 死にやしないんだ、どうってことないだろ」
 生きてるんだからなという台詞に、レイヴンはそっと心臓に手をやった。
 十年前に自分はとっくに死んだつもりだった。実際、魔導器を埋め込まれなければあの時死んでいたし、今でもこれを取り除けば簡単に死ぬ。だがそう言った肉体的なことだけでなく、ずっと死んでいたのだ。生きる価値を持たず、生きる意味もなく、また生きる理由を探すことも出来ずに。
 あそこで死ぬつもりだった。偽りの旅であったとしてもそれなりに楽しんだ末に、裏切り者として、幕を引かれるのならばそれはそれで良いと思っていた。もしレイヴンが生き残ってしまったとしても、絶望の中でアレクセイに切り捨てられて惨めに死ぬのも悪くないと思っていた。
 それなのにレイヴンは生きている。
 この青年が、ユーリが、レイヴンを死なせなかった。
「それ、大丈夫なのか?」
「……ん? 心配してくれるの?」
「当たり前だろ」
 ユーリの間を置かない返答に、当たり前なのかと妙に感慨深い気分になった。最初から胡散臭くて、裏切り者で、敵対しても、それでも当たり前なのだと。そんな台詞を何も気負うことなく、かといって無条件に許している訳でもなく、自然に口にできるのだと。
「おっさんが似合わない本気だったから手加減なしに斬ったしな。コアは簡単に壊れないっていうけど、魔導器がオレのせいで壊れたら目覚め悪いだろ」
「あの時青年、本気だったでしょ」
「殺らなきゃ殺られる状況で手加減出来るほど腕に自信がないんでね」
 本当に色々な意味で負けている気がする。
 あの時のユーリは確かに本気だった。戦いの前に一瞬見せた表情以外は、冷静すぎるぐらい冷静な眼差しでレイヴンを見ていた。レイヴンが望んでのものだったとはいえ、振り下ろした切っ先は明確な殺意がこもっていた。レイヴンが全てを捨てるつもりだったのに対し、ユーリは全てを自分で引き受ける覚悟がこもっていた眼差しだった。
 それはエステルの時も同じだ。ユーリは最後まで彼女を助けることを諦めていなかったが、今楽にしてやると言った時、確かに彼女を殺す覚悟がその中にあった。助けると言った自分の手で、しかも仲間の目の前で、その命を奪うことから逃げようとしていなかった。もしエステルが自分から戻ってこようとしなかったら、ユーリは確実に彼女を殺していただろう。
 助けを求めてくる手を一つもふりほどけないくせに、それでも手を汚す腹を決めている。一回り以上も年下なのに、これではどっちが年上かわからないものだ。
「――死ぬなよ、おっさん」
「おや、そんなに俺様のことが大切」
「勝手に死なれたら迷惑だからな」
「注意するわ。俺様の命は凛々の明星のものだしね」
 生きるための理由など簡単に見つからない。死ななかったから生きている、それだけだ。年を食うと簡単に手にできるはずのものほど見つけることが難しく、捕まえることはさらに難しい。ヘラクレスで預けた命だからこそ、ここにこうしていられる。自分のことながら馬鹿馬鹿しいとは思うが、そうでもしなければ執着するものが少な過ぎるのだ。
「…………。ああ。それでいいなら、いいさ」
 本気で殺しにかかって、それでも勝手に死ぬなと言って、許さないと言いながら生きる理由をあっさりと作ったユーリは、全て了解しているように肩をすくめながらそう言った。
 その時そっと揺れた髪がユーリの視線の先を隠したので、レイヴンにはユーリの表情ははっきりとわからなかった。だからユーリの声が僅かに震えたように聞こえたのが気のせいなのかどうか、どちらと判別することも出来なかった。特に音が反響する牢の中では、くぐもった声にこもっている感情などいかようにも捉えることが出来てしまう。
「大丈夫でしょうよ。年寄りはしぶといって相場が決まってるからね」
 だから言葉を重ねたのは、完全にレイヴンの自己満足だった。もし揺れているものがあるとするのならば、それを少しでも止めなければならないと、そう思ってしまったからだった。
 レイヴンの知る限りユーリが微妙な心の揺れを見せたのは後にも先にも、皆と合流したクオイの森の時だけだ。あの時、一瞬だけ震えた声は今でも耳に残っている。年相応というには少な過ぎる、それでも僅かに垣間見えた心の揺れ。もっとも、そのすぐあとには普段と何ら変わりのない口調と態度に戻ったものだから、やはり可愛気というものがないと言わざるを得ないのだが。
「二回死にかけて二回とも追い返されてるからね、俺様」
「……死神も、胡散臭いのは勘弁ってか」
「だーかーらー、あんまり胡散臭いって苛めるとおっさん拗ねるよ」
「気持ち悪いから勘弁してくれ」
 そう言うとユーリは、明日は寝坊するなよ、とどちらが年上かわからない台詞を残して格子扉を閉めた。同時に少し皮肉っぽく見える綺麗な笑みを浮かべて見せるのは、少々出来過ぎてやしないかとレイヴンは苦笑した。察しが好くて気が付き過ぎるのは、隠し事に慣れている身には些か心臓に悪い。
 だがそのことが少し世界に色を与えてくれているようで、自分はこれほど単純だったかと苦笑しながら目を閉じた。

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