運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

| スポンサー広告 | TOP↑

≫ EDIT

一代雑種 -ジェイルク-

桜の季節ももう終わりかけですが、桜ネタを投下。
TOAはアシュルクも好物ですがジェイルクはまた違った味でこちらも大好物です。ジェイ→←ルクなんだけどジェイドがほとんど無自覚というのに萌えます。しかも自覚するのはレム塔以降希望。初めての感情に自覚し出した時には、その終わりが見えていたというのがいい。
いや、ラブラブなのも好きなんですけどね。



 舞い落ちる花びらの中を落ち着きなく動き回る赤い髪を、ジェイドはじっと立ったまま目で追っていた。
 葉を芽吹かせる前に薄ピンク色の花を満開に咲かせ、あたり一面を染めてしまう花があるというのは知識として知っていた。過去にも何度かその珍しいピンク色の花――桜を見に行かないかとピオニーに誘われていた。もっともお祭り好きのピオニーが望んでいたのは桜を見ながらするという「花見」であって、桜そのものではなかったのだろう。
 今までピオニーの誘いを断り続けていたので、桜の実物を見るのはジェイドも初めてだった。だが初めてといっても花はたかが花で、空も地上も覆い尽くさんばかりの花の色に随分と自己主張の強い植物だと思いはしても、格別な感慨を抱くことはなかった。生物学には興味があっても植物の分野には対して関心がない上に、ただ見て感想を抱くという趣味も持ち合わせていなかった。
 だがジェイドを連れ出したルークにとっては違うらしい。
 目と口を大きく開けてずっと桜の花を見ている。舞い落ちる花びらに感嘆の声を上げ、咲き誇る枝に手を伸ばし、地面を染め上げている花びらに触れている。
「桜って、俺初めて見たけど、すっげー綺麗なんだな」
 弾んだ声に、同意の言葉も不同意の言葉も返せずに、曖昧な表情のまま曖昧に首を少しだけ傾けて見せた。花を見て綺麗だとそんな感情は持ち合わせていないが、澄んだ翠の瞳を向けられると素気無く否定するのが多分に躊躇われたのだ。
 そんなジェイドの心情を知ってか知らずか、ルークは幸せそうな笑みを浮かべて「すっげー綺麗だ」と繰り返した。その台詞が半年も前のものであれば何も考えていない子供の台詞だとしか思わなかっただろうが、屈託ない口調がかえって言葉に重さを含ませていた。この綺麗な花を、彼はもう一度見ることはないのだ。確実に。
「……ソメイヨシノは観賞用にコマツオトメとオオシマザクラを交配させて作りだされた人工的な品種です。コマツオトメの葉よりも先に花が咲く特徴と、オオシマザクラの大きな花が咲く特徴を受け継いだ一代雑種ですよ」
 声をかけようと口を開いたが、結局ジェイドの口から出てきたのは本を開けば書いてあるような知識だけだった。昔読んだ本の中に書かれていた内容をそのまま告げるだけの言葉。会話と呼ぶにはあまりにもお粗末なものだ。だが普通の会話を交わそうとしても何が普通なのかジェイドにはわからなかった。そして視線の先で尚も笑ったままのルークが、ジェイドに何を求めているのかもわからず、さらに自分自身が何を気にしているのかもまた、わからなかった。
 何に分類していいかわからない不可解な感情の存在。不可解な感情に気づく自分自身。感情の一端がルークに起因しているだろうこと。何もかもが不思議であり今までの自分と違和感があった。
「一代雑種?」
「一代限りで続くことのない雑種ということですよ。ソメイヨシノは滅多に自然に結実しませんし、したとしてもその種が発芽することは皆無です。不自然な植物なのですよ。人の手により人が好むように作りだされ、人の手から離れれば寿命が来れば何も残さずに消える。一代限りで」
「へー。ジェイドって物知りだよなぁ」
 ルークの表情が一瞬曇ったことに気づいたが遅かった。最後まで言い終えたジェイドが何かを言おうとする前に、いつもの表情に戻ったルークはいつもの口調でそう言った。
 不自然な存在。人の手で作りだされたもの。何も残さずに消える。その言葉で連想されるものが何であるかは考えるまでもない。
「――俺も何も残さずに消えるけど」
「…………」
「この桜みたいに綺麗に咲けるの、かな。咲きたいと思っても――いいのかな」
 ポケットの両手を入れたままの姿勢から動けなかった。手袋の中で手の平が汗ばむ気がした。
 風にさらわれるように舞い散る薄ピンク色の花びらが、ルークの赤い髪までもをピンク色に染めていく。桜の色は人の生き血を吸った色だと、面白おかしく話していたのはピオニーだったか。今それを思い出してしまい、ルークの血がこの桜に吸われていってしまっているような錯覚を覚える、人知れず身震いを感じたことにジェイドは言葉を失った。
 失うことを恐れているのかもしれない。その事実が酷く似つかわしくなかった。
「人に見てもらって綺麗だって言ってもらうために作られたんなら、やっぱ綺麗に咲きたいよな」
「ルーク――」
「……っていうか、ありえねぇって。ジェイド」
 頭の上に降り積もった花弁を片手で払い落しながら、ルークはジェイドを指差した。花弁の中でルークの翠の瞳の鮮やかさが一際目立っている。
「今、ありえないぐらい、驚いた表情してた。お前でもそんな表情するんだな。何か、すっげー得した気分だ」
「人聞きが……悪い言い方ですね」
「だって、マジありえねーって」
 人の望みのままに作りだされたレプリカ。いずれ失われるレプリカ。何も残さず消えるレプリカ。
 ならばジェイドの胸の中にほんの少しつけられた傷も、いずれ彼と共に消えるものなのだろうか。この時間の終了と共に。

| テイルズ(X・A・D・S-R・マイソロ) | TOP↑

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。