運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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ソメイヨシノ -師ティキ-

週末にお花見してきました。
朝の内は良かったんですが、昼頃になると花を見てるのか人を見てるのかわからない有様。日本人ってお花見好きだなぁと思いました(あくまでも「花を見る」ではなく「お花見」が好き)。と思いつつ、我がグループも花よりもBBQに一生懸命だったのであまり人のことは言えませんが。
青空に映える桜を見てると、馬鹿みたいにずーっと見てしまいます。



 ざわざわと風に揺れる満開の花を見上げ、ティキは溜息をついた。
 この季節はいつにも増して仕事をする気が起きない。普段も熱心に千年公の仕事に精を出している訳ではないが、この、桜の花が満開に咲き乱れる時期になると何もする気が起きない。薄ピンク色の花が咲き誇り、空を覆い尽くすように広がる。そこには青い空も緑の葉もなく、ただただ一面に桜色の世界が広がる。
 ロードは綺麗だと楽しそうに眺めていたが、ティキはどうも桜を見ていると心がざわめく。風に揺れて小さな花弁を散らし、空ばかりか空気までも染め上げてしまいそうな桜の靡く音に煽られて、心の奥の見つからない隙間がざわざわとした風を招き入れる。
「あー。何だかマジ、やる気でないわ」
 ――お前もそう思うだろう?
 ポケットに手を突っこんだまま、目の前の背中に投げかける。
 淡い花の色で覆われた世界の中で唯一鮮烈な色を誇る赤い髪がゆっくりと振り返る。髪と同じく鮮やか過ぎる赤い眼差しが、面倒臭そうにティキの姿を下から上、そして上から下へとねめつける様に動いた。行儀悪く咥えたままの煙草の煙が、花雨の合間を縫うように空へと立ち上っていく。
「テメェのやる気がないのはいつものことだろう」
「いつも以上にって意味」
 こっそりと後をつけてきた、はずだがクロスに驚いた様子はなかった。もっともティキもクロスが自分の存在に気づいていない訳がないと思って話しかけたのだからお相子なのだが。
「ロードたちはお花見するって出かけたんだけどさ、日本ってどうしてこんなに桜が好きなんだろうねぇ。オレは何かさ、心桜見てると落ち着かないって言うか。そんな感じしない?」
「そんな繊細なタマか。そういう台詞はもう少し落ち着きのある行動をしてから言うんだな」
「酷いなー」
「花見酒の邪魔だ」
「花、見てないじゃん」
「関係ない」
 素気無く返されたが構わずに、クロスがもたれかかっている桜の木の反対側に、ティキも背を預けた。風が吹く度に花びらが空中に溢れるように散り、赤く細い髪がその薄い色合いの合間を縫うようになびいている。ざわざわと桜の木を揺らす風と共に、ティキの心の内側もざわざわと揺らしながら。
「ソメイヨシノは……」
「へ?」
「貴様が見ているこの桜だ。――ソメイヨシノはコマツオトメとオオシマザクラの人工交配によって作られた品種でな、見た目が綺麗だが自然結実はほとんどしない」
「自然結実?」
「つまり、自分で実を結ばないってことだ。結んだとしてもその種が発芽に至ることはない、自然に子孫を残せない品種って訳だ。寿命が60年ほどだって言われているからな、誰も手を入れなけりゃその内ソメイヨシノは消えてなくなるだろうよ」
「……ふーん」
 何を言おうとしているのか判断がつかずに、地面に落ちていく花弁を目で追いながらティキは曖昧な返事を返した。クロスがティキとの会話に付き合うのは珍しいことだ。それを望んで話しかけたのは確かだが、普段とは違う反応に何かが含まれていそうで思わず身構えてしまう。
「――不自然な花って訳だ」
「不自然な、ね」
 それはまるでノアのようだ。運命の悪戯のように、ノアの遺伝子によって人間から不自然に作りだされたノアという存在。ノアという種族が他にいる訳でもなく、同じ存在を生み出すことも出来ない。このまま放っておけば、エクソシストが殺さずともその内消えていくだけの存在。
「で?」
「だから――」
 赤い影が動いてティキの視界に入ってきた。揺れる前髪が瞳に映る色合いを隠していて、どんな感情が浮かんでいるのかをうかがい知ることはできなかった。ただ、伸ばされてきた手をじっと見つめて、逃れることができなかった。
 ティキの黒髪に触れる指。笑いを浮かべる唇。一面の桜色。
「その不自然さゆえに心がざわめく、そうだぜ?」
「……誰、の言葉だよ、それ」
 ざわざわと揺れる桜。わざわざと揺れる心。ざわざわと音を立てる世界。
「もちろん俺様の、だ」
 重なる唇から移される強い酒の残り香。
 くらくらと目眩がしそうなほど、酔いそうな芳香。
「……オレにも酒、飲ましてくれるって?」
「たっぷりとな」
 心がまた一段とざわめく音が、花風の中に沈んで消えていった。

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