運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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not to return -ティキ-

体調不良が重なっていたので思考が暗くてすみません。しかも今日はお雛さんだというのに何という空気の読まなさ…。
ティキは常にノアである自分に違和感抱いていたらいいなぁと、そんな妄想1000%の産物です。



 目の前の「少し前まで動いていた物体」をティキは静かに見下ろした。
 次に自分の手を見てみると、生温かな赤い血を滴らせる心臓があった。
 自分が、少年の胸へと手を差し入れ、心臓を掴みだして殺した。それはもう何度も繰り返してきた行為で、今更自分の所業に驚いたりするはずもなかった。だが手の平の上の心臓から手首を伝って肘まで濡らし、そして地面へと滴り落ちていく赤い血は心の端をギュッと掴んでいるようで、呼吸が苦しくなるような気分にさせられた。
「何か……気分、ワリィ」
 どろりとした塊が胃から這い登ってきて喉元にこびりついている気がする。無理矢理飲み込んだ塊が気管へと侵入して、呼吸をするのを妨げているような気がする。酷く空気が少なくて深い沼の底へと押し沈められているかのようだ。今回に限って何故こんな気分になるのか、自問しながら視線をもう一度横たわる少年に向けた時、納得がいってあぁと小さく言葉を漏らした。
 似ていた。穏やかな表情をして両の眼を閉じている少年の表情は、しばらく会っていないイーズに似ていた。顔の造形が似ているというよりも、身にまとう雰囲気というか表情の浮かべ方が似ていると言った方がいいだろうか。動いている時はそれほど感じなかったが、動かなくなった今、驚くほど表情が重なって感じる。
 無駄だと知りつつ手を伸ばし、心臓を左胸に押し当てた。だが心臓がその胸の中に入り込む訳などなく、もちろん少年がもう一度瞼を上げることも息を吹き返すこともない。もう動かないのだ。ティキが殺したのだから。
「ティキぽん、お仕事終わったようですね」
「――千年公」
 少年に触れたままティキはゆっくりと声の方を振り返った。そこにはいつも通りに笑みを浮かべたままの千年公が、いつもと同じように傘を広げて立っている。にっと笑った口元は、それ以外の形を作っているのを見たことがない。
 いつも向けられる笑顔。それは人が言う楽しいから笑っている、という種類のものではない。奥にあるものを隠しているような、それでいて隠しておかなければならないものを曝け出しているような、そんな不可思議な笑みだ。不気味さと恐怖心を人に抱かせるものかもしれない。だがティキは、いや、おそらくノアと千年公に呼ばれている者たちは、そうした恐怖を感じることはない。どれだけ不気味でも自分に害が及ぶことはないと、何故だか確信しているのだ。
「千年公がついて来るんだったら、オレでなくてもいいんじゃないっすか?」
「不満ですか?」
「自分で言うのもなんですけど、オレ、働くの嫌いなんですよね」
「おやおや。大人のティキぽんがそんなことでは、他の子供たちに示しがつきませんねぇ」
 けれど、ともティキは思う。害が及ぶことはないが、きっとそれは自分たちのことを思ってのものではない。多大な力と特別な保護とをもってして、柔らかな檻を構築しているだけなのだ。一度足を踏み入れたら足下から飲み込まれるような、柔らかで纏わりついてくる逃れることのできない檻を。
「心臓、戻りませんねぇ」
「そりゃー、オレが殺したんですからね」
 真横に立って楽しげに少年とティキを見下ろす。
 簡単に抜き取ることができても戻すことなどできるはずがない。ティキの力はただ拒絶するだけの力だ。全てを自分から遠ざけ、他者から全てを奪う。そんなことは百も承知だ。わかっていて、快楽のためだけに人を殺すのだ。
 もしこの心臓をもとに戻すことができたなら、何かが変わるだろうか。
「生き返らせたいですか?」
「――へ?」
「もう、人間を殺すのはやめますか?」
 快楽のために殺したのだから、悪い気分を抱くくらいな殺すことなどやめてしまってもいいのかもしれない。好きなことだけやって、気が向いた時に気が向いたことだけをやって、そうやって生きていけばいいのかもしれない。実際、そうやって流れの者の日雇い労働者として生きてきて、別段不自由も不幸も感じなかったのだ。何も生み出さず何も奪わず、世界に何の影響も与えることなく生きて朽ち果てていく、それで十分だったはずなのだ。
「やめるって言ったらどうします?」
「さぁ、どうしましょうかねぇ。他のお仕事を探してこないといけませんねぇ」
 可能か不可能か、なら可能なのかもしれない。だが今更逃げられはしない。あの穏やかで何もない日々が良かったのなら、そのままあの場所で朽ち果てれば良かったのだ。その選択肢があったはずなのだ。それなのに、戻れない道を選んでしまった。遺伝子が奏でる快楽の鐘の音に、耳を傾けてしまった。
 もう戻れはしない。抜き取った心臓を元に戻せないのと同じで、戻れはしない。選んだのは自分。光溢れるつまらないほど穏やかな世界が心地よく手招きしても、快楽に手を染めた身で光の元に戻ることなど不可能なのだろう。
「どうします、ティキぽん」
「もう少し労働条件を緩和してくれませんかね。オレばっかり働かされてる気がするんで」
 本当は戻れるのかもしれない。手遅れではないのかもしれない。だが探し出すにはその道は細過ぎて、見つけだすことなどできはしない。
「……そうですねぇ。考えておきましょうか」
 一際笑みを深くして千年公が愉快そうにそう答えた。
 誰かが囁く。頭の奥で、胸の底で、遺伝子の隙間で。一度快楽を手にしたのならば、最後の瞬間まで手を取り共に踊り狂うしかないのだと。最初に選んだその時に、全ての運命は定まったのだと。
 あまりにも深い闇の気配に軽い眩暈を覚えながら、瞼を下ろし小さく首を振ってその気配を追い払うと、真っ直ぐと目を合わせないようにしながら千年公の後ろに付き従った。

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