運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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チェリーリキュール -師ティキ-

バレンタインにUPしたSSがあまりにアレだったので、随分と遅れてしまいましたがバレンタイン師ティキに再挑戦。書いてる私が一番恥ずかしかったです。っていうか、ティキ、どれだけ乙女なんだよ。

 ――さて、どうしてくれよう
 ポケットの中にある小さな箱を指で触りながら、何度目になるかわからない問い掛けを自分に投げかける。あの時、偶然と気まぐれに襲われて手にしてしまってからずっと、この物体に悩まされ続けている。どうしてこれを手にしてしまったのか、過去に戻ることができるのならば、力づくででも自分の行動を阻んだだろう。
 指先の箱の感触。ふっと消えてしまうことがないかと期待しているのだが、残念ながら願いが叶う気配はない。触れないように拒絶してみても、一時の逃避にしか過ぎず、ずっとポケットの中に居座り続けている。そしてさらに悪いことに、今日会わなかったら全部なかったことにして忘れてしまおうと思っていたのに、街を染める夕日の中で、夕日よりも鮮やかな赤い髪の男を雑踏の中から見つけてしまったのだ。
 もともと神様なんか信じていないが、いるとしたら相当に底意地の悪い神様に違いない。見つけたら問答無用で心臓を抜き取ってやる。
「受け取ってやってもいいぜ」
「何をだよ」
 反射的に言い返したが、にやりと笑ったクロスの表情は全てお見通しだと言っていた。まったく、どういったルートで情報を仕入れているのか見当もつかないが、知られたくないことほど知っているのだ。本気になったら世界中の女性のスリーサイズだって、簡単に入手できるのではないかと思う。
「四日遅れか? まぁ合格範囲内だな」
「だから、何だよ」
「チョコだろう? 甘いものは好きだぜ、安心してポケットから出せよ」
「お前にやるなんて――」
「ボンボンじゃなくて、ただのリキュール入りチョコってのが俺の好みをわかってる選択だと褒めてやってもいいぞ?」
「…………」
 本当に、どこから知ったのか疑問だ。
 仕事帰りのあの時、ふらりと立ち寄った街。店先に並んでいた、売れ残りと思しき一つの箱に目をとめたのがいけなかった。割引されたその価格と、偶然持っていたお金と、同額だったのも何かの悪い企みに引っ掛かったとしか思えない。相場よりも安い、けれどティキが使うお金としては高いそのチョコを思わず買ってしまっていたのだ。
 赤い包装紙でラッピングされた、チェリーリキュール入りのチョコ。
「……食いたきゃやるよ」
 触り慣れたその箱を掴むと、無造作に放り投げる。
 赤く染まった夕日の街の中、ラッピングされた赤い光沢のある箱が、燃えるように赤い髪をした男の手元に放物線を描きながら納まった。悪い冗談のような光景だ。何だってティキが、鬼畜で傲慢で敵のエクソシストであるクロスにチョコを渡さねばならないのか。
 受け取ったクロスはその場で箱に掛っている金のリボンをほどいて箱を開けた。正直クロスが甘いものを好きか嫌いかだなんてティキは知らない。チョコレートを食べるのかも、ボンボンが苦手なのかも、リキュール入りが好きなのかも知らない。そもそも明確に渡すつもりで買ったものですらない。偶然に気まぐれと運命の悪戯が加わって、ティキのポケットに納まってしまっただけのものなのだ。
「ほー、これはいいなぁ」
「な、何だよ。好きな銘柄か何かだったのか?」
 箱を開けたクロスが一際楽しそうに呟いた。
 瞬間的に身体が逃げ腰になる。こういう時はロクなことがないのだ。本当は問い返したくもないが、どうせ逃げられはしないのだ、せいぜい何でもない様子を取り繕うしかない。
「お前がこれほど俺に会いたがっていたとは、な」
「はぁ? 一言もそんなこと言ってねーだろうが」
「取り繕うなよ? これが証拠だ」
 そう言ってクロスは人差し指と親指で、箱の中のチョコを掴んで見せた。
「あっ」
 クロスがつまみ上げたのは細長い形のチョコレートだ。正確には「元」細長い形とでも言うべきか。チョコレートは解けて変形しており、中に閉じ込められていたはずのリキュールが漏れ出ていた。
 上を向きながらクロスがチョコレートを口に入れる。流れ出たリキュールが舌の先に滴り落ちる様は、妙に艶めかしかった。
「あ、いや、それは――」
「俺様に会えなくて寂しかったか? ん?」
 考えてみれば当たり前だった。ポケットに入れていただけならまだしも、ついつい手で触っていたのだ。それも今日は癖になってしまっていてずっと握り締めていたような状態だったのだから、温まったチョコレートが溶けてしまうのは当然だった。
 唇についたリキュールを舌で舐めながら、クロスがティキの身体を引き寄せる。
 何を、と抗議する前に、クロスの唇がティキの言葉を封じ込めた。いつもと同じ濃い煙草の匂い。癖のある強いチェリーリキュールの香。そして似合わないチョコレートの甘い味わい。それらが混ざり合って唇からティキへと流れ込んでくる。ふわりとした浮遊感と奥で目覚める熱と少しきつめの刺激。
 いつもより甘いその口付けに、ティキは瞠目した後、自分から瞼を下ろした。

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