運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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不機嫌な月 -バシュバル-

バシュバルエロ本に参加させてもらうことになって原稿書いている途中です。が、ここでSS書くのは明らかに現実逃避(笑)。ネタ的には好きだったんですが、本の趣旨とずれていたので再利用。


「それほど好きなのかね?」
 質問に大した意味はなかった。今日は晴れそうだと朝に天気のあいさつをする程度の、何の気なしの言葉。だがバルフレアは、後ろで突然大声を出されたような表情で振り返った。
「何がだ?」
「――いや。月を良く見ているから、それほど好きなのかと思っただけなのだが」
 瞠目した表情にやや戸惑いながら答えた。彼が動揺を表面に出すのは極めて珍しい。
「月を? 俺が?」
「あぁ。良く見上げているだろう? それにこの前は一緒に月見酒も飲んだし、風流なものだと思ったんだが……違ったのかね?」
「アンタがそう言うなら、俺は良く月を見ているんだろうよ」
 だが、と続く口ぶりだった。同時にその先には踏み込むなとも、踏み込んでくるなとも言っているようだった。彼自身も自分の気持ちを測りかねていたのかもしれない。深呼吸三回分の沈黙。それだけの時間を空けるのも珍しいことだった。
「――バッシュ。アンタ、何で俺が空賊になったっと思う?」
「…………」
「海賊や盗賊ではなく、空賊を選んだと思う? 足の付きやすい飛空艇を使ってまで」
「……空が自由だから、かね」
 自由を求めて空賊になった、そう言っていたことを思い出して答えた。だが酷く自嘲的な苦笑いを浮かべ、自由なんてないと呟いた。
「空に自由なんてない。どこにも自由なんてない。それはアンタだってわかってるだろう? ――俺はただ、地面ってやつが大嫌いなんだよ。何でもかんでも見上げなきゃ見えない大地がな。だから見下ろしてやろうと思った、それだけだ」
「見下ろす?」
「そう。見下す、でもいいけどな。空の上から、大嫌いな大地を見下ろしてやりたかった」
 口調は軽い。けれどその言葉には彼の過去そのものが凝縮されているかのようだった。容易に触れてはいけないような傷跡。
「飛空艇からなら何でも見下ろす位置にある。上を見なくて済む。けど――」
「けど?」
「空を飛んでても空はまだ上にあるってことさ」
 大地は眼下に広がり、建物も人も山すら見下ろす位置にある。けれど空を飛んでいても空はやはり上に広がり、星も月も頭上で輝く。いつまでたっても見上げているしかない。いつまでたっても見下ろされたままだ。
「では君は月が嫌いなのかね?」
「大嫌いだね」
 躊躇いのない答えが返ってきた。
 月は毎日上りそして毎日沈む。けれどその沈む瞬間すら見下ろすことはできない。消える最後の時にようやく同じ視線になる程度で、それ以外は飛空艇からでも見上げなければ見ることはできない。空を自在に飛んでも、常に月に見下ろされている。淡い光を放ちながら深い闇であるはずの夜を照らし、ヒュムを見下ろしている。
「月を見てるとヒュムは所詮踊らされているだけの道化に思えてくるのさ」
「だから嫌いだと?」
「あぁ」
 月はヒュムのことなど気にしていない。存在すら知らないかもしれない。けれど人は月を見上げ、月に心奪われる。届かない思いを抱えている。それはまるで憧憬。
「では何故いつも見ているか聞いても?」
「……。見ていないと――」
 バルフレアは再び背を向けて月を見上げた。薄雲に遮られながらも満月の光は空に白金の円を描き出している。
「――忘れそうだからさ。嫌いなことを」
 その言葉に誘われ、バッシュも同じように月を見上げた。

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