運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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20万企画 -ヴァン←バル6-

自分はどうかしている。いつも自分がどう考えどう行動していたのか、当たり前に行っていた全てのことが自分の中から抜け落ちてしまっているかのようだ。その内呼吸の仕方も忘れてしまうのではないかと、自嘲するしかない。心臓の痛みを誤魔化すようにさらに強く鉱石を握り締めたが、感覚は余計に大きくなって、抜けない棘のように食い込んでくる。
じっと音のした扉に視線を向ける。誰だ、と喉まででかかった言葉は唾と共に飲み込んだ。扉の向こうにいる音の主が誰であるカなど聞くまでも無い。この部屋はヴァンの部屋で、しかもバルフレアの気配をじっと窺う人間など一人しかいる訳が無い。先ほどまで探していて、けれど今一番そこにいて欲しくない人物だ。
「…………」
このまま立ち去って欲しいと思いつつ、だがこのまま気づかなかったふりをされたら、自分がどういう反応をすればいいのかわからなくなる。息を止めて反応を窺っていると、扉越しに向こうでもこちらの様子を窺っているのがわかった。取っ手に手を伸ばしたまま、扉を開けるべきか立ち去るべきかを必死に考えている姿が目に浮かぶ。
鉱石を握り締めていた手から力を抜く。音を立てないように小さく浅い深呼吸を三回。視線は扉に固定したままにする。きっとヴァンなら数秒逡巡して、けれど立ち去るという選択肢を選びはしないだろう。馬鹿みたいに真っ直ぐで前に進むことしか知らないガキだ。自分の後ろに道があったとしても、気づきもしないで前にだけ進む。馬鹿で、そして少し羨ましい。だから背を向けず、気づかないふりも何か別のことをしている素振りも繕わないで、じっと見ていた。
実際は長くても数秒。もしかしたら一呼吸分の間しかなかったかもしれない。
――ガチャリ
扉が開いた。薄暗い室内に廊下の明かりが差し込んでくる。細い明かりは徐々に広がっていき、瞳を眇めて見つめるその中心に一つのシルエットを描き出す。明かりを背にしているヴァンの表情ははっきりとは見て取れない。反対にヴァンにはバルフレアの表情が良く見えているだろう。自分がどんな表情をしているのかまったく予想がつかなかった。普段通りの表情が出来ているのかどうか自信がなかった。だがそれはそれで、何かの切っ掛けになるかもしれないとの期待も僅かながらにあった。
「――バルフレア、ここにいたんだ」
「あぁ」
手の中で鉱石を転がしながら答えた。
「歯車、上手くいきそうか?」
ヴァンの左手に握られている物を見ながら続けた。ヴァンは握っていたものをバルフレアに手渡して「たぶんこれで大丈夫なはずなんだけど」と少し不安げな口調で答えた。
やはりヴァンはバルフレアの頼んだ物を作るために忙しそうにしていたのだ。受け取ったミスリル製の歯車を手の平で転がす。その出来の良さに感心しつつも、視線は自然とバルフレアの手の中を覗き込んでくるヴァンの空色の瞳に引き寄せられてしまいそうだった。
このまま普段通りの対応をしていれば、恐らくヴァンはこれ以上何も言ってこないだろう。もし聞かれたとしても何でもないと言いきってしまえばそれでこの話題はすんでしまうはずだ。今までだってそうしてきた。
――余裕のない理由、わかっているのでしょう?
赤い瞳が楽しげに笑う。近過ぎず、けれどバルフレアから離れることのない姿。
「ヴァン。俺は――」
喉に詰まった空気の塊を押し出すように、ゆっくりと口を開いた。

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