運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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月蝕 -ハロディム-

この前の月蝕を見逃して悔しいのでSSだけでも書いてみる。
TOD2でハロディム。個人的には公式CPだと思い込んでいます。



「あぁ、見事に欠けているな」
外殻大地のなくなった夜空を見上げて、視線をそのままにディムロスは目を細めながら呟いた。昼間の暑さとは裏腹に夜風は少し肌寒いぐらいで、長い髪の間を吹き抜けていく冷たさが心地良かった。
「でしょう。今年は11年ぶりの皆既月蝕よ。まぁ100年に一人の人材と言われる私に比べたらありきたりなものだけど、凡人にとっては有難いものよね」
「11年ぶり、か。空が存在すること自体が何年ぶりかというところだがな」
「私たちの空が見えるようになって1年。それで十分でしょう」
「あぁ……」
長い天地戦争がようやく終結して1年。
未だに争いごとが完全に治まった訳ではないし、荒廃した大地が戻った訳でもない。天上軍の残党は相変わらず潜んでいるし、戦争で荒れた人の心は容易に諍いを生み出す。疲弊した軍隊は規律の歪みを生み出し、権力を手にした政治家は簡単に理想を手放し利益を求める。
皮肉なものだ。苦しい中では堪えられたことが、光を取り戻した中では堪えられないとは。
じっと欠けていく月を見上げる。1年前に空を覆っていた外殻がなくなり月を目にした時、これほど神秘的な光を放つものはないと心が震えたものだ。だがその感動はすぐに薄れて、いつしか月を当たり前のものとして捉えている。たった1年しかたっていないというのに。
「月蝕は太陽と月の丁度間にこの星が入り込み、この星の影が月にかかって月が欠けてて見える現象よ。ちなみに、完全に影に入っても月が消えずに赤く見えるのは、波長の長い赤系の光が散乱されて月まで届くからよ」
「……ハロルド。私も一応それぐらいは知っている」
「そう? その割にはすごく感心した顔で見上げてたじゃない」
「…………」
「口、開いてたわよ」
「……実物を見るのは初めてだから、な」
ムッとなって言い返そうとしたが、自覚があった分語尾が小さくなった。
だが実物を見るのはハロルドも初めてのはずだ。というか、天上軍に属していなかったもので、実際に自分の目で見たことがあるものはほとんどいないはずだ。そう言ってはみたが、ハロルドは「私が興味あるのは何故そうなるかであって、現象そのものではないわ」といつもの彼女らしい口調で返してきた。理論的に説明付けたことが実際にそうなるという結果は重要だが、正しさが証明されればそれがどういう形であろうと気にならないと。
けれど、と小さく声が続いた。
「兄貴に、見せてやりたかったな」
「――あぁ、そうだな」
ディムロスは欠けていく月を見上げたまま答えた。
この空を取り戻す為に命を落としたカーレル。出来ればディムロスも彼と共にこの空を見上げたかった。彼にこの月を見せたかった。だがきっと彼にそれを伝えることが出来たとしても「私はハロルドとディムロスに見せたかったんだよ」と笑って答えるのだろう。それがわかっているから尚更、彼に見せたかったと悔やんでしまう。
小さな手がそっとディムロスの服の裾を掴んだ。その手は僅かに震えているようだった。
「少し――寒いぐらいだな」
言葉は風に流されて、月明かりの欠けた夜の闇に溶け込んでいった。

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