運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

| スポンサー広告 | TOP↑

≫ EDIT

不在証明 -アシュルク-

誘われるように振り向いた。吹き抜けていく風に髪が舞い上げられて視界が赤く染まったが、それも一瞬のこと。すぐに景色がいつもの色を取り戻す。
だが視線の先には何もない。
眩し過ぎる太陽の光によって描き出された、鮮やか過ぎるコントラストを見せる自分の影があるだけだ。明るければ明るいほど鮮明に黒く塗りつぶされる影。まるでぽっかりと開いた穴のようで、アッシュは足元が僅かに浮遊するかのような、揺れるつり橋の上に立っているような感触を覚え、思わず一歩下がった。
「…………」
もちろん身体が地面に沈むようなことはなかった。
先ほど感じた浮遊感も既にない。全ては正常に戻っている。だが、足りない、とアッシュは思った。
前方へと向き直ると目指していた建物の前まで足を進め、けれど扉には手をかけずにその前の石の階段に腰を下ろした。野外であるにもかかわらず、階段の上には砂埃一つ落ちていない。
翠の双眸を眇めて眼前を見下ろす。
綺麗に整備された花壇には色取り取りの花が咲き誇っている。かつてここを専門に手入れしていた人物は既にここにはいないが、引継が良かったのか現在の担当者がマメなのか、少しも美しさは損なわれていない。植えられている花の種類も、手入れの難しいものがあるにもかかわらず、一つも変わってはいない。
誰もこの庭を見ようとはしないというのに。この庭を見せたい相手はもうここにはいないというのに。それなのに庭は保たれている。見れば彼のいない痛みを思い出してしまうにもかかわらず、変えてしまっては彼の存在すら消えてしまうような不安を抱いているのだ。
「馬鹿馬鹿しい……」
庭は所詮庭だ。記憶は所詮記憶だ。どちらも彼に連なるものであったとしても彼自身ではない。彼はもうこの世界にはいない。彼という個人は既に失われ、欠片がわずかにアッシュの中に残っているだけなのだ。
側にいる時は省みず、過ちを犯した時には突き放し、必死に生き急いでる姿を傍観し、身を捧げる行為を見ぬ振りで肯定した。それなのに今更、何故嘆くというのか。彼をこの世に留める機会はいくらでもあったはずだ。彼と共に逝く機会もまた、数え切れぬほどあったはずだ。だがどれも選ばずに、彼がただ一人で消えることを仕方ないと言いながら受け入れたのは、誰だ。
生きている人間には――この世に形のある存在には、彼を懐かしむことも消えたことを嘆く資格もない。
ただ「ここにいて良い」と言って欲しかった小さな子供は、そのために自分自身の全てを削り犠牲に捧げた。命の一欠けら、身体の一欠けら、記憶の一欠けら、未来の一欠けら、希望の一欠けらまでも残すことなく全て捧げた。
被験者はただ被験者だというだけで生残り、レプリカはレプリカであるというただそれだけで奪われた。抵抗する術一つ持たずに。何かを少しでも残す術さえ与えられずに。
「お前みたいなレプリカ野郎なんか――生まれてこなければ、良かった、んだ…」
――そうすればこんな身勝手な喪失感など味合わずに済んだのに。
言葉は誰の耳にも届かず消えていく。ただ強い光の中で鮮やかな色の花が濃い影を地面に落としながら、アッシュの呟きなど意に介せず静かに揺れていた。


EDアッシュ帰還後のイメージで。
アッシュはルークの記憶があるからこそルークの死を受け入れざるを得なくて、だから誰かがまだルークの生存に望みをかけてることに苛立ちと憧憬を抱いていたらいい。

| テイルズ(X・A・D・S-R・マイソロ) | TOP↑

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。