運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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この大空に -ヴァンバル-

FF12-RW合流後、ですがあまり関係ない(笑)。
ヴァンが絡むと穏やかに全てを受け入れられるようになってるバルフレアとかをイメージ。何でもないことで自分の変化に気づいて、でも満更じゃなくて、幸せと苦笑の入り混じった感情を抱いていたら良いと思う。



「――それ、何て歌ってるの?」
いくつもの計算式を書き連ねた紙の上にさらにペンを走らせていたら、予想外に近い場所から声が聞こえてきた。空気の揺れを受けて動いた髪が、耳を微かにくすぐる。
ペンを手にしたまま振り返ると興味をたっぷりと浮かべた空色の瞳とぶつかることとなった。ベッドの上に正座をするようにしながら、上半身はバルフレアの方へぐいっと前のめりになっている。教えてオーラ全開の子犬のような姿に、邪魔をするなと返そうと思っていた唇を音が出る前に閉じた。
「ねぇ、何?」
「あん?」
「歌詞だよ、今バルフレアが歌ってた歌の」
「歌ってたか?」
「鼻歌で歌ってたじゃん。ふんふん?ふふふふ??、っての」
「……ヴァンお前、舌っ足らずなだけじゃなくて音感も可哀相なほどに皆無だな。お嬢ちゃんはリズム感もばっちりだっていうのに」
「これでもマシになったんだよ!」
「……そうか。それは悪かったな」
くっと空気を吸い込みながら笑みを浮かべてみせる。
ペンを置き腕を前で軽く組んで背もたれに体重をかける。ギシッと安物の椅子が軋んで抗議の声を上げたが関係ない。
ヴァンの鼻歌ではいったい何の歌を指しているのかわからなかったが、今頭を空っぽにして浮かんでくる歌という条件なら思いつくのは一つ。転調も含めてメロディも歌詞も鮮明に覚えているのはその歌しかないと言っても良い。だがその歌ですら、自分が覚えているということを今の今まで忘れていた。
恐らく無意識でなければバルフレアの口から紡がれることはなかっただろう。音楽に耳を傾けることはあっても自分で歌を歌うなど、幼い頃にしかやったことがない。そしてあの頃に染み付いたはずの数々の歌は大半が故意に記憶の外へと押しやってしまい、そして本当に忘れてしまったのだから。
「で、何て歌ってたの? タイトルは何?」
「無意識に出ただけだ。覚えてねーよ」
「嘘だ! その言い方、本当は覚えてるだろう!」
「……さーて、何だったかなぁ」
「隠すなよ。教えてくれたっていーだろ」
「知りたきゃお嬢ちゃんにでも聞くんだな。お前のその素敵な鼻歌を披露すれば、運が良ければ教えてくれるかもしれないぜ?」
「ケチ! いいよ! パンネロに聞いてくるから!」
ぷいっと膨れて足音をドンドンさせながら走っていく。
全く子供みたいな反応だ。もっともそんな反応をするとわかっていて素直に教えないバルフレアも、随分子供っぽい対応をしているという自覚はある。自覚はあるが、思い出してしまった歌詞の子供っぽさに抱いた気恥ずかしさの方が強かったのだ。
昔はもっと色々な歌を知っていたが、故郷を捨てて飛び出した時に一緒に捨ててしまった。純粋に歌を口ずさんだあの時の記憶と重なる歌は何一つとして残っていない――そう思っていた。
だが消えていなかったようだ。この空の上の大地に来てから、長い間蓋をして気づかないふりをしていたものが自分の中から自然と溢れてきている。苦い過去も連れてくる記憶も、けれど優しいメロディーの中に埋没して柔らかく響いてくる。
「――この大空に、ね」
笑いながら呟く。
ヴァンならば確かに、歌詞にあるように羽ばたいていけるだろう。

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