運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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アップルミント -ティキアレ-

鼻をつく悪臭が辺りに立ち込めている。
何年か前の記憶にはこんな匂いは全くなかったのに、今ではこの匂いを嗅がない日はないのではないかと思う。いつしか自分の体臭もこの匂いと同化して、異臭と認識する感覚もなくなってきてしまっている。もはや空気よりも自然に感じられてしまう。

淡い月明かりと小さな外灯だけが周りを照らしていて、淡い世界を作り出している。原形が何であったか全くわからないほどに潰れたアクマの残骸の上に、淡い自分の影が映るのをアレンはじっと見ていた。左手のイノセンスだけが歪な大きさと形を有していて、普通の人間ではないのだと突きつけてくる。

エクソシストとして生きることはアレン自身が選んだ道。例えもう一度道を選び直すことができたとしてもきっと同じ道を選ぶだろうとわかっている。
それでも異様な自分の姿と、慣れてしまったアクマの異臭と、身体を蝕む疲労感と、全身に纏わり付くアクマの体液に捕えられると、自分の立っている場所が定かでなくなってくる。自分がここに居る意味と意義が曖昧になってくる。

「――貴方はいつもこのタイミングで来るんですね」

微かに香ってきた煙草の匂いに振り向けば、累々と積み上げられているアクマの屍の向こうに一つの影が立っていた。黒いスーツを身にまとい、白い手袋をした人影が、軽く帽子を上げながらにっこりと笑ってみせる。闇よりも黒さを思わせる雰囲気で。

「少年が全力でイノセンスを解放している最中に飛び込むような野暮なマネは趣味じゃないんでね。まぁその方が嬉しいってんなら、次からはお仕事の最中にお邪魔させてもらっても良いんだけど」
「その時は、貴方も一緒に救済して差し上げますよ」
「怖いなぁー。でもほら、オレ、神様も信じてないから。少年に相手してもらえるのは凄く興奮するんだけど、あまり有り難味は感じられないんだよ」

まぁ少年がどうしても、っていうのならお付き合いするけど。
咥え煙草のままティキはおどけた口調でそう続けた。離れていても甘みを感じる煙草の煙がゆらゆらと二人の間に四散し充満していく。
潰れたアクマの悪臭を覆い隠すように甘い香り。嗅ぎ慣れた匂いを飲み込んでいくように甘い甘い香り。
いつもの煙草の匂いと違う。
そう思ったのが顔に出たのか、ティキはポケットからチラリと煙草の箱を覗かせて「良く気づいたね」とまた笑った。

「ロードが臭いって煩いからちょっと変えてみたの。どう? どこかの航空母艦と同じ名前の煙草。アップルミント味。似合ってる?」
「……似合ってるかどうかなんて僕には関係ありませんよ」
「冷たいなぁ。関係なくはないでしょう?」
「関係ありません」
「ちゅーした時、匂いが気になるでしょ?」
「…………貴方とはしませんから、関係ないです」
「あはは。やっぱり少年は可愛いなぁ」

ふわりと吐き出される煙。
白い煙が広がって、甘い甘い匂いを撒き散らす。
アクマの匂いしかなかった空間を、場に不似合いこの上ない甘い甘いアップルミントの香りが包み込む。まるで子供が好む甘いキャンディーのような甘さが口の中いっぱいに広がっていくようだ。

「――その香り」
「ん?」
「僕は好きじゃありません」
「あ、そうなの? それは残念だ」
「だから……」
「だから?」
「僕に近づかないで下さい」
「――前の煙草の香りだったら近づいてちゅーしても良かったのかな?」
「…………」

殺気を込めて睨みつけてもティキは余裕の表情を少しも崩さずに、アレンの前へと優雅に近づいてくる。アクマの屍を越えてくるのに少しも汚れず足音一つしないと不思議に思って目をやれば、ティキの足元は地上から数センチ浮いた状態で空中を歩いていた。
戦う時ですら滅多にノアとしての力を使わず千年公から渡されたティーズしか使わないのに、関係ないところでは当たり前のように力を使う。特にアレンの前では戦いと無関係の時だけ、見せつける様にその能力を使ってみせる。

いつでも主導権はこちら側にあるのだと言う様に。
アレンには選択権などなく、全てはティキが選ぶ通りにしかならないのだと教え諭すように。

アクマの匂いを掻き消すような甘い香りと共に近づいてくる。

「……少年は、自分が何かわかってる?」
「僕はエクソシストですよ。貴方たち千年公爵の企みを阻止する為の」
「違うよ」
「違いません。僕は貴方たちの敵で、貴方は僕の敵であるノアだ」
「わかってないな。少年はね、エクソシストなんかじゃない」
「僕は――っ」
「――少年はね」

ティキは、しーっと言うようにアレンの唇を人差し指で押さえて微笑んでみせる。向かい合わせの瞳には心細いまでの薄い外灯が映りこんでいて、僅かな光の痕跡が余計に闇の深さを知らしめるようでもあった。
優しい微笑み。
幼子を慈しむような微笑み。
優しく柔らかな笑みを浮かべる表情は、けれど反対に背筋を氷の針で突き刺すように冷たく鋭い痛みを注ぎ込んでくる。背骨も皮膚も凍りつくようで、そっと触れられた部分から脆く壊れてしまいそうだ。

「少年は、人間だよ。酷く脆くて愛しい人間」
「…………貴方も、でしょう」
「オレ? オレは残念ながらちょっと違うかもね。でも少年は人間だから――だからこそオレは少年を好きでいられるのかもね」
「…………」
「ずっと少年を好きでいさせておくれよ」

そうしてそっと左手に唇を落とす。
まだイノセンスが発動したままの歪な左手に、そっと。

「そうでないとオレ、悲しいからさ」

大きく持ち上げられた唇の隙間から赤い舌と白い歯が見えた。
血のように赤い舌。雪のように白い歯。
アレンの中の闇を引き出す呪いのように鮮やかな色合い。

今日は別の仕事の途中でゆっくりしていられないから挨拶だけだよ、と笑いを噛み殺したような声で囁くと、ティキはアレンの反応を待たずに背を向けて歩き出した。先ほどと同じように地面に足をつけることなく、まるで闇の一部であるかのように。

残ったのは嗅ぎ慣れたアクマの異臭と、嗅ぎ慣れないアップルミントの香りだけ。


銘柄は英国空母と同名のアークロイヤル。ティキが似合わないことこの上ない甘い煙草を吸ってると萌えるなぁという妄想。絵的にはダンヒルが似合いそうかな。
WJ27号、ロードにずっと抱かれてるティキに萌えて仕方なかったです。可愛過ぎる。ラビ戦忘れてティキだけを追いかけてしまう。来週も色っぽい眠り姫ティキに会えますように(笑)。

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