運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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瞼に浮かぶのは -ディムスタ-

今日のSSはPSP版TOD2発売直前記念(?)としてTODのその後、TOD2のネタバレ含めます。ちなみにどの程度のネタバレかというと「10年前の出来事」という感じです。わからない方&ネタバレ嫌な方は読まないように。まぁTOD2やるとすぐに気がつくレベルって言えば気がつくレベルなんですけどね。ディムロスに出会ってたら問題なしです。

それではOKな方だけどうぞ。
はっきり言って自己満足の世界。





――誰だ、こいつは。

剣を構えて向かい合いながら、スタンは冷や汗が背中を滑り落ちていく感触を嫌に強く感じた。剣を握る手が異様に汗ばんで、自分の感覚に強い違和感を覚える。

手にしているのが幾度もの戦いを共に切り抜けた剣ではないから、というものではない。それは未だに心の奥で痛む思いではあるが、それでもその悲しみに耐えながら時を過ごしてきた。あの時のような無条件の安心感はないものの、ディムロス以外の剣を手にすることにも慣れてきていた。

一歩。踏みしめるように巨漢の男が近づいてくる。
手には血にまみれた大振りの剣。そしてロニ。

「英雄……か。そう名乗ることの罪深さを思い知らせてやろう」
「――ロニを離せっ」
「ふはははは!この状況でまだ英雄を気取るか。なるほどなぁ。身をもって教えなければわからないということか。そうか…そうだったな。おまえはあの許し難い男――ディムロスと共に戦ったのだったな。ならば俺様が鉄槌をくれてやろう!」

思いがけない言葉に行動と思考が止まる。
ディムロスと確かにそう言った。限られた人間しか知らない、世界を守ったソーディアンの名前を。スタンが誰よりも大切に心に抱いているものの名前を。誰も、知るはずがないのに。

「おまえは、いったい……」
「俺様か? 俺様は英雄バルバトス様だ。ディムロスなどが英雄ではない!俺様が、俺様こそが本物の英雄なのだ!!!」
「――くっ」

振りぬかれた剣を辛うじて受け止める。
だが物理的な力は圧倒的にバルバトスの方が上だった。まともに正面からぶつかり合ったら力押しで負ける。だがそうとわかっていてもスタンはそれ以上動きようがなかった。自身の後ろには気を失ったカイルが倒れていて、バルバトスの腕の中にはロニが囚われているのだから。

渾身の力を込めた鍔迫り合いが続き、擦れ合った金属がヒステリックな音を立てる。その中にピシッと嫌な感触と共に小さな音が聞こえ、スタンは歯噛みをした。スタンの剣に小さなひびが入る。
護身用の剣では強度が足りないのが明らかだった。

「スタンさん!俺はいいからこいつを!」

悲鳴が鼓膜を叩いたがスタンは動かなかった。
スタンが切りかかればバルバトスは容赦なくロニを斬り捨てるだろう。残忍に笑みをたたえた飢えた獣のような瞳がそれを物語っている。やれるものならやってみろと。

退くことはできない。でも誰かを犠牲にすることもできない。大切なものを犠牲にすることなど、もう二度としたくはなかった。
あの時ダイクロフトの神の目にディムロスを突き刺した時の、鋭い痛みが胸に蘇る。

あれはディムロスが望んだこと。他のソーディアンも覚悟を決めていたこと。そして世界を救う為にはそれしか方法がなかったこと。自分は世界を救う為にやれることをやるのだと誓っていたこと。
理屈ではわかっている。何も間違っていない。誰が悪い訳でもない。けれどもしあの時をやり直すことが出来たとしたら、もう一度神の目にディムロスを突き刺すことができるかどうか自信がなかった。例え世界が滅んでも、大切なものが死ぬことになろうと、自分が死ぬとしても、ディムロスに軽蔑されようとも、残り僅かな時間をディムロスと共に過ごすことを選んだかもしれない。もし突き刺すことが出来たとしても、きっと脱出せずにあのままディムロス共に散ることを選んだかもしれない。

「腰抜けが!手も足も出ぬか!」

死にたくはない。だが自分の目の前で大切なものを失うのはもう嫌だった。もう耐えられなかった。

目の前で、剣が折れるのがスローモーションに感じられた。
叫ぶロニの表情が心に突き刺さる。悔いはないけれども、彼に自分と同じような哀しみを背負わせてしまうのかと思うと心が痛んだ。

大切なものを目の前で失う痛みは深く苦しい。時間がたって表面上は何もなかったようになっても、皮膚の下には癒されぬ傷がずっと残り疼くのだ。どうして自分はと悔やみ、どうして彼はと嘆き、繰り返される記憶に心に鑢がかけられるような思いをするのだ。

――おまえのせいじゃない、ロニ……


 『いいのだよ、スタン』


自分の思いと重なるように、暴走状態の神の目の前で囁かれたディムロスの言葉が蘇る。
それまでの口の悪さはなりを潜めて、静かにけれども力強く囁かれた言葉。そのいつもと違う響きに、スタンはこれが最後なのだと否応なく悟らざるを得なかった。そして彼の言葉に従わなければならないのだと打ちのめされた。

あの瞬間ほど自分の無力さを痛感したことはなかった。何もできない。強くなっても、本当に大切な、一番大切なもの一つも守れず、逆に守られるだけ。
嫌だとは言えなかった。自分の思いよりも強いディムロスの意志を感じたから。その意思を覆すだけのものが自分の中になかったから。自分がディムロスを大切に思い守りたいと思う以上に――ディムロスがスタンを守りたいという意思の方が、悔しいけれども強かったから。

――ディムロス……

視界が暗転して耳障りな音が全て消える。

『本当におまえは馬鹿だな、スタン』

あの日別れた時のままの声が聞こえた。
聞き慣れ過ぎて、どれだけ聞いたかわからないぐらいの声。

『だがまぁ、手間のかかるものほど愛着がわくというのは本当だ。まったく、最後まで手間をかけさせる奴だ。もっとも……それがおまえらしいところだが』

笑いを含んだ声。包み込むような声。
目の前で研究所で見た蒼い髪の人物が手を伸ばす。
空そのもののような蒼さが安心感を見せてくれて、真っ直ぐと見据えてくる碧の瞳が優しさを運んできてくれて、触れ合った大きな手が温かさを伝えてきてくれた。

その手を握り返す。
ずっと触れ合えなかった手を、離さないように強く握る。

『      』

唇が開き何か言葉が発せられた。

だが聞こえたはずの言葉は身体に走った強い衝撃と熱に塗り替えられた。一瞬で視界が朱色に染まり、神経を切り裂く痛みと熱が感覚を奪い取る。体内を生温かくどろりとした液体が逆流していく。口の中に鉄の味とぬめりが広がり喉の奥に詰まって呼吸が阻害される。
手足の感覚がなくなる。自分がどのような体勢をしているのかもわからない。聞こえていた叫び声も聞き取れない。見ていた姿もわからない。そして身体中の熱も痛みも急速に引いていく。

全てがなくなっていく。だが不思議と恐くはない。

それはおまえに近づくことだからだと言ったら、ディムロスは怒るだろうけれども。けれどきっと、「しょうがない奴だ」と言ってくれるような気もするから。
そう、どんな選択も結論も、自分で悩んで考えた末のものならば、ディムロスは決して否定したりしなかったから。全力で足掻いた末の結果なら、決して馬鹿にしなかったから。



――どうか大切な人よ、おまえたちは生きていて

――俺の大切な人に託されたこの世界で、どうか


TOD2ネタバレでスタンがバルバトスに殺害されるシーンをディムスタ風味で。暗いってわかってるけど、突発的にどうしても書きたくなったSSです。
ディムスタ好きさんに怒られそうだなぁ……。

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