運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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優しさはいらない -ヴァンバル-

自分でボトルを傾けてグラスにお酒を注ぎこむ。それはいつも部屋でよく見る光景だが今日は少しだけ違った。

いつもの赤ワインではなくウォッカを、味を楽しむようにではなく煽るように次々と身体に流し込んでいく。そう、それは飲むというより身体という器をアルコールで満たそうと躍起になって注ぎ込んでいるかのような行為だった。
その自傷行為にも近い飲酒が三本目のボトルに突入しようとした時、堪らずヴァンはその手を押さえた。

お酒を飲むのを止めるつもりはない。酔い潰れたいというのならそれも構わない。けれど今日の飲み方はお酒を知らないヴァンにも常識ハズレなものであることはわかった。それに十分過ぎるぐらいのアルコールを注ぎこんで隣の部屋でも酒臭さがわかるほどなのに、バルフレアは少しも酔った様子を見せていなかった。このまま飲み続けても恐らく酔いはしないだろう。

「――離せ」

剣呑な声だったが力はこもってなかった。ヘイゼルグリーンの瞳は据わっていたが薄暗く濁っていた。苛立っていたが弱々しかった。だから何も言わずに、そっと手を離した。
けれどバルフレアの手はヴァンが押さえていた時のまま、じっとテーブルの上に置かれたままだった。まるで縫い付けられたみたいにそこからピクリとも動かない。時間が止まったように。

視線はボトルに向けられたまま。だがその瞳に映っているのは琥珀色の液体ではなく、バルフレアの目の前で消えていった人の姿なのだろうと思う。そう言っても否定されるだろうがわかっている。皆の前では至って普段通りの表情と行動を変えなかったけど、だからといって何も感じてない訳がない。

ピシッと室温で氷が割れ、カランとグラスを叩く音が響く。

まるでそれが合図だったようにバルフレアはまたグラスに酒を注ぎこむ。水流で氷が動いて、不似合いなほど透明な音を部屋中に満たしていった。

バルフレアはヴァンから逃げるように視線を窓の外へと向ける。外はまだ店の明かりが派手に灯っていて、ごった煮の騒がしい街を作り出している。この部屋と対照的な、生きている人間の欲望と快楽と生命力に満ち溢れた光景だ。
だが外を見たままグラスは一向に口へと運ばれない。ただ所在なげにカラカラと手の中で揺らされて氷の音を響かせているだけだ。一定のリズムを保ちながら、喧騒の中に沈みこんだ静かな室内に、澄んだ音だけが変化をもたらしている。

慰めの言葉なんて思いつかない。バルフレアもそれを望んでいない。ヴァンとバルフレアの間にそれは必要ないものなのだ。どれだけその背に言葉をかけたかったとしても、どれだけその背で言葉を待っていたとしても。
慰めの言葉を交わせば、二人の間にある全ての感情が同情へと変わってしまうだろう。どれだけ大きな熱い感情も、ぬるま湯のような「同情」に飲み込まれてもう元には戻れなくなってしまうだろう。

だから黙って見ている。
胸の中に強くあるものは優しさではなく、残酷なほど強い愛だけだから。身勝手でも構わない。傷ついていても構わない。傷を塞ぐ為に愛を捨てて同情を注ぐことなどできない。傷口を広げるしか出来なくても、注ぎ込みたいのは愛だけだから。

「――ごめんね」

優しくなくてごめん。
慰めてあげられなくてごめん。

「バルフ――」
「今すぐ」
「――えっ?」
「今すぐ、大量のヒョウでも降ればいい」
「…………」
「馬鹿騒ぎしてる街の連中の大慌てした顔が見られるし、それを肴にここから馬鹿笑いしてやれる」
「――――うん」

そうすれば、少しは気が晴れる。
そうすれば、この空気を振り払うことが出来るはず。

氷に薄められていく酒のように、強い悲しみも苦しみもやがて薄まっていくのだと自分に言い聞かせていた。


大灯台後です。
痛みにまみれていても欲するのは愛情だけだから、居心地のいいぬるま湯の同情を交わすことを堪えている二人。バルフレアって自分の感情に付ける名前に拘りそうだと思います。

ヴァンはわかってて同じようにこだわってあげればいい。バルもヴァンがわかっているのだと知っていて、敢えて見えていないフリをしていればいい。

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