運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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月に祈りを込めて -バシュバル-

「将軍様が不法侵入かよ」

刺すように冷たい夜風が吹く中、からかいと嫌味の成分を十分に含んだ、それでいて何故か温かくなる声音が笑い声と共に鼓膜を叩いた。笑い声が収まるのを待ってからゆっくりと振り返る。

「君か……」

声の正体が誰であるかなど振り向くまでもなくわかっていた。
いや、そもそも声の主であるバルフレアに教えてもらったこの廃教会にいたのは、一人になりたかったという理由以上に彼を待っていたかったからかもしれない。彼を待つ間は忘れかけていた素直な感情が心の奥から出てきて、わだかまっている心の鉛を覆い隠してくれるようだったから。

「アンタが夕食に出てこなかったから、ヴァンやお嬢ちゃんが心配してたぞ」
「声はかけておいたのだがな」
「いつも口煩いアンタがいないと物足りないんだろ。お子様は」
「―――で、君は?」

何をしにここへ?と問い掛けるとやれやれと肩を竦めながらわざとらしい動きで頭を振ってみせる。

「お言葉だな。ここは俺のお気に入りの場所だって言っただろう。夕食後に一人で月見酒って予定だったんだがね」
「あぁ、すまない」
「まぁいいさ。アンタはお子様連中と違って喧しくはしないだろうからな」

そう言って手に持っていた包みを汚れたテーブルに置き、中からワインとチーズを取り出した。

「それはここに来る途中で買ってきたのか?」
「宿から失敬する訳にはいかないだろう」
「君が食料店で買い物をする姿は想像しにくい」
「馬鹿言うな。俺だって生きてりゃクソもするし普通に買い物もするさ。新鮮なトマトや茄子の見分け方だって知ってるぜ?」
「意外だな」
「美味い食事にありつくための対価だ」

食事を楽しむためではなく栄養補給としか考えてなかったバッシュには、些か感心する部分でもある。バッシュの味覚は世間一般とそれほどかけ離れてはいないはずだが、如何せん執着が少ないのだ。
何処のワインが美味いとか今年は何処の出来がいいとか続けるバルフレアの言葉は、意味としてはほとんど頭に入ってこなかった。ただ名器で奏でられている音楽を聴いているように心地良い気持ちに浸っていた。冷たい夜の空気を振るわせるバルフレアの声は、宮殿に招かれていたどの楽師が演奏する音楽よりも美しく響いてくる。

「おい、さっさとしろ」
「うん?」

視線を上げれば、バルフレアがソムリエナイフで器用にワインを開けたところだった。何をすればいいのかわからず止まっていると、顎でテーブルの上を示される。
そこには磨き上げられたワイングラスが何故か二つ。

「バルフレア………」
「飲むんだろ?アンタの好みに合わせて酸味の強い辛口だ」
「あ、あぁ」

バッシュはここに来る、とは誰にも言わなかった。
バルフレアも探しに来た、とは言わなかった。

けれど寂れた教会の屋根裏部屋、崩れた屋根から漏れ入る月の光に照らされているのは二つのワイングラスと、プラチナゴールドに輝く液体と、元将軍と空賊の組み合わせ。
無言でグラスを手に取り、少しだけ月に向けて掲げてみせる。

「綺麗な月だ」
「ふーん?」
「何だ?私がそう言うと不満かね?」
「いや、いいんじゃないか」

心底興味なさ気な声に思わず苦笑を浮かべる。あまりに彼らしくて、だからこそ心地良いと思える言葉を反芻し、様々な想いを煌く液体に混ぜ込みながら嚥下する。

勿体無いほどに綺麗な月だ。信頼していた同志を失った夜としては不似合いなほどに綺麗で、静かに染み渡る美しさだ。


シヴァ脱出後。ウォースラを偲んで……って、説明しないとわかりませんねぇ(汗)。

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