運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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葬送花 -ヴァンバル-

見付けた背中はあまりにもいつも通り綺麗に伸ばされていて、だから両手に抱えた白いユリの花束との違和感を感じずにはいられなかった。

海から押し寄せて来るような風に乗ってユリの独特で強いむせかえるような香りが運ばれてくる。死者を悼むようにも生者を拒むようにも感じられる香りは圧倒的な強さをもって、立ちすくむヴァンを押し戻すようでもあった。
視線の先のバルフレアは花束を抱えたままじっとしている。それは何時間も前からそうしているように景色と一体化していて、すぐ目の前にいるのに見失ってしまいそうな錯覚すら覚える。何か声を掛けたいと思い、何か言葉を掛けなければいけないと思い、けれど思いは沢山あるのに何一つとして音としての形をとることを拒むように、喉の奥が張り付いて動かない。

ゆっくりとバルフレアは両腕を広げた。
抱えられていたユリはふわりと垂直方向に落下し、次に崖から吹き上げられた風に乗って空へと舞い上げられた。一瞬視界を白く染めあげたユリは、すぐに青空へと拡散して散々になり景色の中へと埋没していった。

「バルフレア……」
「………」

呼び掛けたが答える声はなく、恐らく振り向かれても続ける言葉はヴァンの中になかった。
ただ、そのままにしていたら空へと溶けこんだユリと同じように消えてしまうのではないかと不安になった。青い空と一体化して二度と大地へ―――ヴァンの元へと戻ってこないのではないかと。

背中から手を回してしっかりとバルフレアの身体を捕まえる。そうしていなければ目の前の姿を確認できなかったのだ。
だが常ならヴァンがそうすると煩いと振りほどくバルフレアは、ただじっと何の反応も返さずされるがままにしていた。それが余計にヴァンには不安で、自分の腕の中にいることが幻のように思えてくる。

「どっかに行ったりしない―――よね?」
「―――さぁな。まさか空賊がいつまでも同じ場所につっ立ってるって訳にもいかないだろうが。そういうのは守るものや場所がある奴らに任せておけばいい」
「黙ってどこかに行ったりしない、よね?」
「………約束ってのは俺の辞書に載せてない」
「嘘でもいいから行かないって言ってくれないの?」
「……嘘は言わないさ」
「バルフレアの嘘吐き。いつだって、俺がどれだけ真剣でもいっぱい嘘を言うくせに」
「珍しくて涙が出そうだろう?」

くくっと喉の奥を鳴らしながら振り向いた姿は、呆れるぐらいにいつもの人を食った表情だった。先ほど見せていた背中の印象とも腕の中から感じる温もりとも微妙に一致しない、ある意味バルフレアらしい姿。
どうか自分には本当の心を少しでも見せて欲しいと、ベールで覆い隠されていない生身の部分に触れさせて欲しいと願っても、一番不安定な感情を抱いている今でさえその片鱗すらつかませないようにする。掴むことが出来るのは心と切り放されたような身体だけ。

「俺じゃ駄目なの?」
「………」
「俺じゃ頼りないかもしれないけど……でも俺、バルフレアを少しでも支えたいし、俺、俺バルフレアと一緒に―――」
「―――一緒に行くだろうが」
「え?」
「あの馬鹿デカイ空中要塞に突っ込んでさっさと後始末を終わらせないとな」
「バルフレア、俺が言いたいのは―――」

そんなことではないのだと言おうとしたが、バルフレアはヴァンの腕をほどいてぐっと引き寄せると唇を落とした。

滅多にないバルフレアからのキスに言葉を失いただ呆然と見つめかえす。今このタイミングでなければそれは嬉しくて幸せな気分に包まれただろうに、まるで別れを告げるかのような感触に世界の色が失われるようだった。
先ほどバルフレアが空へと散らしたユリのように、今は亡き人に捧げられた白さのように全ての色が抜き取られていった。


踏み込ませないのではなくて、踏み込ませる場所をバル自身も見つけ出せていない感じで。

心は、哀しいでも悔しいでも清々したでもなくて、けれどそのどれでもある感情。だからこそただ、ユリの花を大灯台へと続く海へと散らす。それしか、思いつかないから。

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