運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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朝食と昼食

足主
途中で何を書きたかったのかわからなくなった。

食べ物間に挟んで会話しているのが多いのは気のせいですよ。
気のせいです。
決して発想が貧弱なわけではry


 
 朝目が覚めると人の気配がして、柔らかな匂いと何かを作っているような物音がする。とんとんとん。まるでテレビから聞こえてくるような何かを刻むテンポのいい音。
 匂いも音も普段なら自分の部屋には存在しないものだ。都会に比べればやや広い作りになっているとはいえ所詮ここは独身者用のワンルーム。基本的には寝るのも起きるのも一人が当たり前だ。設備は悪くないが豪華なわけでもないアパートは、壁も窓も平均的なものでしかなく冬になれば寒さが染み込んでくる。部屋が一階ではなく二階なのはせめてもの救いだが、それにしたって疲れ切った体の時には少し急なアパートの階段が酷く億劫だったりするのだ。
 本来ならこの部屋には足立一人だ。堂島家に行くことはあっても堂島もこの部屋に入ったことはない。酔い潰れるのは大抵堂島の方だったし、あの人抜きで酒を飲む機会など寂しい宅飲みしかないのだ。近くまで堂島に送ってもらったことはあっても、この部屋に足を踏み込んだのは引っ越し業者ぐらいだ。というのがつい最近までのことだった。
 眠る時も朝目覚める時も自分以外にこの部屋には誰もおらず、物音が聞こえるとしたら壁越しの隣の部屋の物音だったり、真下の部屋で何やら暴れている音が聞こえる時ぐらい。振動は上から下へと響くが音は下から上によく通る、などという別に大してありがたくないことはここに来て十分実感していた。
 この部屋の中で目が覚めた時に音が聞こえるとしたらそれは、毎日鳴る設定にされている携帯のアラームか、寝る前に消し忘れたテレビの音か、外からの騒音。子供がはしゃぐ声にはたまに殺意を覚える。通学路なんかクソくらえだ。平日なら構わないだろうと容赦のない工事の音もたまにある。休日ばかりが休日だと思うな。
 この部屋で聞く音は大抵は不快なものが多い。それぐらいだ。それぐらい、だった。そうだ過去形だ。今はそれに加えてもう一つの音が目覚めを飾ることがあって、今日の音はどうやら新しく追加された理由だと、昨晩のことを思い出しながらようやく理解が追い付いてくる。
 今さら自分の隣に手を伸ばした。シングルベッドは足立にとって別段小さくはないがもちろん大きくもなく、左右に少し手を伸ばせばすぐにベッドからはみ出て、この新しいけれども安物で大して寝心地の良くないスプリングの上には、シーツと布団と枕とそして自分の体以外には何もないことが簡単に確認できた。
 ならば断続的に足立の耳に届いている音は、間違いなくたった一人の人物のものだろうということは疑いようもない。そもそも最初から疑う余地もないのはわかっているが、頭が正常に動き出すまでの準備運動だ。つまりは今現在自分を脅かすものはなくて、気を使う必要もないのだと結論付けて、体から力を抜く。
 眠くても人の気配が嫌いで署内では仮眠をとることもしない自分が、こんな近くに人の気配を置きながらどうして安心感を抱くのかという何とも言えない疑問を抱きつつも、迷うことなく欲望に忠実に、もう一度寝なおすという選択肢を体はとろうとしていた。
 躊躇いはない。問題もないはずだ。今日は正しく休日だった。足立にとっても世間にとっても休日だ。昨日が土曜日で、夜勤からほぼ署に詰めていたので、この日曜日という日は世間の休日と完全に一致して足立の休息を約束してくれている日なのだ。だから休むのは正しい。布団を頭からかぶって、自分の体温で適温に保たれているベッドの上で丸まる。この時間は堪らなく心地がいいまどろみだ。
 そうやって半分眠ったまま過ごせば、時間ですよ起きてください、とドラマの中でしか聞かないような定番の台詞が優しい口調でもたらされて、布団をかぶったままの肩に、既に活動を始めている人間の体温が添えられて、強すぎず弱すぎない力で前後に揺さぶられる。あぁまるでこれでは逆に眠りに誘われるようだと、子供を寝かしつける時の揺れの様だと感じた。
「ご飯、できてますよ」
「んー」
「あ、また寝ようとしないでください。もう十時を回ってます」
 呆れた口調ながらも無理やりに布団を剥ぎ取ったりはせず、ほんの少しだけ肩を揺さぶる力が強くなっただけだった。それだって大した力ではなくて、電車の揺れを思い起こさせるような動きで、つまりはもう一度眠りの底へとダイブするように誘う動きに過ぎない。
 この子は本当に僕を起こす気があるのだろうか。
「足立さん」
 声には苛立ちも強さもなくて、本気で僕を起こす気なんてこれっぽっちもないのではないかと思った。もう少し手に力を入れるか、声を大きくするかすれば、体中を柔らかく包んでいる綿のようなものも消え去るだろうに、彼はそれをしない。眠りを妨げたくないと思っているのか、それとも別の意図があるのか、そんなことは知らない。
 ただ薄く開いた瞼の向こう側では、なかなか起きない男を起こそうと四苦八苦しているはずの高校生は、妙に幸せそうな笑みを浮かべていた。何がそんなに幸せなのか。疑問には思っても問い返したことはない。彼が心底どのように考えていようとも返ってくる答えが、こうしているだけで幸せです、などという文学小説の中でも使わないような空々しい台詞であることは明白なのだ。
 そんな純粋培養されたみたいにまざりっけのないものを受け止めるのは遠慮したい。純度が高いということはそれだけで毒になるのだ。蒸留された水の中では魚は生きていけない。それと同じだ。
「今日は休みなんだから……」
「コーヒーを淹れましたよ」
 宣言通り鼻孔をくすぐるのは香ばしい匂い。
 残念ながら豆からひく堂島家とは違ってインスタントだ。一応値段の高いやつだ。最もそういう選び方をしている時点で味など大してわかっていないということなのだろうが、別に不便はしていない。何か拘りのキャッチフレーズがついていたように思うが、それも足立にとっては大した問題ではなかった。コーヒーの味などにこだわりはないし、ファーストフードのコーヒーですら何とも思わないぐらいなのだ。それなりの匂いと温度で飲めるものであればそれ以上は求めない。
「……で? コーヒーが冷める前に起きろって?」
「朝食の時間に朝食を食べませんか、という提案ですよ。足立さん。このままだと昼食の時間までまた寝てしまいそうなので」
「ふーん。ずいぶんと面白みのない提案だね。でもそんなこと言いつつ、君も僕が起きないことは想定済みじゃないの?」
 肩に置かれていた手を取って引き寄せる。
 抵抗ゼロで簡単に足立の方へと倒れてきた体は、最初から予想済みだったのか慌てることなくベッドに手をついて、足立の上に倒れ込まないように体を支えた。
 香ばしい匂いのコーヒーは、足立の予想通り彼の手に持たれてはおらず、ベッドわきのテーブルの上に置かれている。白くて何の変哲もないマグカップ。遠目には同じものに見えるがほんの少しだけ持ち手のデザインが違う。それがオシャレという訳ではなくて、半端ものの陶器が二つで百円だったから、当たり障りのないものを選んだ結果がこれというだけだ。
 ぱちり。目の前でまばたきする双眸。肺の奥まで吸い込んだ煙草の煙を吐き出してビードロの底にためたような瞳がじっと足立の姿を映している。
「どうして俺がそう考えている思うんですか?」
「んー? 簡単な話だろ。身近なことで言えば今君がコーヒーを手に持っていなかったこと。僕がベッドに引き込むのはあらかじめ予想してたってのがわかるじゃないか」
「それは足立さんの寝起きの行動がいつも一緒だから警戒しただけですよ。シーツを汚したらどうせ俺が洗濯する羽目になるじゃないですか」
 楽しそうに口元に笑みを浮かべている。
 なるほどやはり可愛げが足りないのは今日も健在らしい。
 試すような口調に今日は少しだけのってやることにした。一応昨晩に三大欲求の内の二つを十分に満たしたのでいつもよりは寛大な気持ちにもなれる。残り一つの食欲は、元からそれほど大きくないから今はまだ待たせておいても大丈夫だ。
「他の理由は今日の朝食が時間がたってもいいものを用意してるから、かな」
「朝食……ですか?」
 怪訝な声で問い返されて、そうだよ、と応えながら体を支えている手を崩して半回転。彼と自分の体の位置を逆転させる。やはり見下ろしている景色の方がいい。見上げてくる眼差しの方が好みだ。その方が目が大きく見えてあどけない子供の表情を晒す。決して、立っていたら彼の方が目線が高いから、などという理由は大きなものではない。
 彼が足立の言葉を疑問に思うのも当然だった。部屋の中央に置かれているローテーブルにはまだ朝食は何も並べられていないのだ。
「当ててあげようか。カツサンド、だろ?」
「……どうしてそう思うんですか?」
「あ、その顔は適当に言ってるって思ってるだろ。君が僕を真っ直ぐと、まるで信じてますって表情そのもので見てくる。でもまばたきがいつもより少ない。それって疑ってる時の顔。知ってた?」
「いえ……――。そう、なんですか?」
「そうだよ」
 他にも色々癖はあるが、今後の為にも黙っておく。
 これでも人を観察するのは苦手ではない。そうでなければ中央で出世争いなどできる訳がないのだ。もっとも、こんな田舎に飛ばされてきた身でそんなことを言っても、自虐的なネタにしか聞こえないだろうけれども。
「じゃぁ君は、自分が月曜日の夕食に何を食べたか覚えてる?」
「……トンカツですよ。足立さんのリクエストで」
「正解」
 一週間前の日曜にジュネスで彼と偶然会った。
 足立は聞き込みの帰りの小休憩の延長戦をしている時で、彼は一週間分の買い出しで、重そうな二つのビニール袋を抱えていた。その中に豚肉のブロックがあったのだ。それを見て、あぁトンカツが食べたいなと、思ったことを口にした。
 彼はそれに対して明日の夕食に作るといった。その日は堂島も足立もは早く帰れる予定の日だったのだ。多めに作るから来てください、と。
「でも仕事が片付かなかったんですよね。叔父は帰ってきましたけど足立さんはまだ遅くなるから、近場で出前を頼んだって」
「そうだよ。堂島さんも残ってくれるって言ったんだけどね、せっかく菜々子ちゃんと過ごせる機会を奪っちゃったら悪いでしょ」
「それなら――――いえ、何でもないです」
 あぁ今きっと彼らしくないことを考えたなと、ほんの少しだけ逸らされた視線で察する。それなら足立さんと過ごせる時間だって、なんていうことを言い掛けたのだろう。
 ジュネスで立ち話する以外に二人で過ごすのは、ほぼ一ヶ月ぶりだった。そう思って苦笑する。一応は特別な関係のくせにそれだけ時間を空けていたことに、ではない。最後にあった日付もその時の様子も、思い出すまでもなく鮮明に記憶の中から引き出している自分がいて、そのわかりやすい執着ぶりに笑うしかなかったのだ。
 腕の中の頬をそっとなでてやる。耳に触れればくすぐったそうに身を捩られて、不満そうに睨まれる。が、そこには不満の成分など欠片もないことはよくわかった。何を考えているのか読みにくい子供であるところの彼は、だが意外に思考基準は単純のようで、少し注視して見れば手のひらの上で転がすように感情の軌道が見えるのだ。
「僕の分も作ってくれてたのにごめんね」
「別に。次の日にカツ丼にしましたから。それも……言いましたよね」
「うん知ってるよ。でも君は、僕の分はもうない、とは言わなかったよね?」
「……」
「君のことだから僕の分残してあるんだろ。例えば冷凍にしてたりして」
 元々が律儀な性格だ。足立が食べたいと言ったのだから足立の為に残していることは簡単に想像できる。そしておそらく昨晩ここに来る時に、それを持って来てくれたであろうことも。
「堂島さんの出張は前から決まってたけど菜々子ちゃんのお泊まり会は昨日の夕方に急きょ決まったことだろ。そして僕が連絡を入れたのはもう夜の十時を回っていたし、君は三十分もしない間にここに来た」
「すぐ来いって言ったのは足立さんじゃないですか。三十分以上過ぎたら入れないって。冗談にしないのは身にしみてますから」
 以前そうやって本当に入れなかったことがある。ただしまだ暑い日のことだ。嫉妬かと言われたら違うと言うが、執着かと言われれば否定しない。ただの気紛れだ。彼がどれだけ足立のわがままな言動に付き合うか、くだらないことを試したくなったのだ。結果としては、今もまだそのゲームが続いているという事実が、どちらが勝っているかの答えにもなるのだろう。
「そう。君は急いできた。だから何かを用意してくるような時間はなかった。僕が欲しいって言ったおつまみをいくつか持ってきてたけど、それと一緒に冷凍していたトンカツも持って来てくれたんじゃないの?」
「何だかサスペンスドラマのなぞ解きみたいですね……」
「こっちは本職の刑事だよ」
「……それ笑うところですか?」
「いやいやいや。笑うところなんて一つもないでしょ?」
 君たちのお遊びとは違うんだよ、とは思ったけれども言わない。
「それで――どうしてカツサンドだなんですか?」
「まぁここからは予想かな。ご飯を炊いてる気配はないからトンカツになることはない。コーヒーも入れてるしね。そしてさっきの小刻みに刻む音はキャベツの千切りだろ。冷蔵庫にはキャベツぐらいしか入ってなかったはずだし、君が野菜をここに持って来てた様には見えなかったし。そんなわけで他に候補もあるかもしれないけど、疲れた状態でこの家の中のもので作れそうなので、時間をおいてもよさそうなのはカツサンドくらい、ってね」
親切にも細かく説明してやったというのに、返ってきたのは呆れたような深いため息だった。今失礼なことを考えているな、というのは表情だけでなく気配でわかる。最初に会ったころのあの控えめな彼に、今の彼の姿を見せてやりたいものだ。
「どうして足立さんは、変なところだけ頭脳派になるんですか」
「酷いなー。僕はいつだって頭脳派だよ?」
「でも全部推測ですよね」
「そうだね。状況証拠だけだよ。でも君もすぐ自白するんでしょ? だってわざわざこんな恰好なんだから」
 大人しくベッドの上に横たわったままの体に触れる。
 部屋着に彼が持ってきていたのはスウェットのズボンと同じ素材のパーカー。ただしかぶるタイプのものではなくて、前がファスナーで開閉できるタイプのものだ。パジャマ代わり、と言うのならば金属などついていない方がよほど着心地がいいし、実際堂島家で見た時はズボンと揃いのトレーナーを着ていたのだから、他になかったのではなくてわざわざこれを持ってきたということだ。その理由を問い返すのは無駄なことでしかない。
「こうして欲しかったんでしょ。悪い子だなぁ」
 ファスナーを下ろす。中にはシャツは着込まれていなかった。代わりに昨晩つけた赤い痕が三つほど飛び込んでくる。
 男にしては白すぎる肌。けれども筋肉のほどよくついた胸元。無駄を省いた体はスポーツをする学生のものというよりも、実践的な出来上がりだ。危ないことをしてる証拠だね、とは心の中だけに留めて、あまり部活をしているようには見えないのによく鍛えているねと、自分の指先が冷たいことを承知しながらそっと肌に触れた。
 わかりやすく息を飲む音。
 チープな反応だったが嫌いではない。
「まぁ後はね、レンジを使った音もトースターを使った音もしなかったから、持ってきたカツは自然解凍して温めてないってことがわかる。それはどうしてか。この後冷めてしまうのがわかっていたから。すぐには食べられない状況になだれ込むつもりだったから、違う?」
「……違いません」
「自白、しちゃったね。僕の勝ち」
「いつから勝負になってたんですか」
 不満そうな声は無視して、正解の報酬をいただくとばかりに唇を重ねてた。まだ何か言いたげな舌を吸い寄せる。躊躇いがちな舌は少し催促すればすぐに力が抜けて、ぴちゃり、と甘い呼び水のような音を立てた。甘噛みしながら口を閉じられないように侵入して弄る。
 はぁ、と熱い吐息。またたく間に腕の中で力を失っていく体。甘えるのが下手な子供が体だけは素直だなんて、今どき出来過ぎた設定だ。
「――流され過ぎだよ? ダメな子だね」
「ぁ、だちさ、ん――」
「良かったね。カツサンドだったら少しぐらい置いておいても大丈夫だし。誘い上手の悠くん」
「そんな、つもりじゃ……」
「誘ってないの? 嘘はダメだよぉ」
 膝を差し込んでスウェット越しに股間に触れる。びくり、と面白いように跳ねる。こんなすぐに反応するんだったら自転車とか乗ったら大変なことになるんじゃないの、と擦りつけるように動かす。ヤダ、とか、イヤ、とか、そんな意味もない言葉はもちろん無視するだけだ。柔らかな布が、内側ですぐに硬くなっている感触を伝えてきているのだから。
 手が間に入って拒んでいる形になっているが、そんなものに力は入っていない。ただのふりだ。デモンストレーションだ。アダルトビデオで女が最初に拒む台詞を言う、それと同じぐらいの定型文であり、単なる様式を守っただけのものだ。
「安心しなよ。今日は僕、気分がいいからね」
 つまりは朝食が君で昼食がカツサンドだ。
「足立さん――その台詞、加齢臭がします」
「そういう強がりも今日のところは許してあげるよ」
 昨晩満たされたはずなのにもう足りないのだ。
 昼食までの時間、たっぷりと味あわせてもらうとしよう。

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