運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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赤く染まった教室と君

ペルソナ3で綾主

後半はR18になりそうだったのでぶった切りました
私にはまだそっちのキタローを書く勇気が足りなかった
いつか…そのうち


 
 誰もいなくなった教室で二人きり。
 たったそれだけなのに、まるでここは自分の知らない世界のように感じられた。休み時間になると元気になる順平もいなければ笑顔の可愛い女子もおらず、生命力を感じられる賑やかな話声の一つも今ここにはない。
 開け放った窓からは冷たい空気が流れ込んできて、ここから離れた場所にあるグラウンドでの運動部の練習の声が、揺れるカーテンの音に半分掻き消されながら鼓膜をくすぐる。閑散としてしまっている教室の中には沈みかけの太陽の光が差し込んできていて、この短い瞬間だけ世界を赤色に染めていた。まるで燃えるように鮮やかな色だねと机に腰を掛けながら呟けば、彼は椅子に座って肘をついた手の上に顔を乗せたままこちらを見上げ、そして窓の外へと視線を映してから、血の赤だよと感情を込めずに呟いた。
「……じゃぁ君も僕も、血まみれだね」
 手を伸ばして彼の白い頬を、けれど今は夕日で赤く赤く染まった頬を、そっと撫でる。
 普段は蒼をまとったような色の瞳が沈みゆく夕日を掬い取ったように赤く揺らめいていて、あぁこれは確かに命そのものの血の赤だと、拭っても拭っても落ちることのない血のように美しい色だと、そんなことを思った。怪我をするのも血を流すのも嫌だけれど、そこに彼という存在が加わるだけで全く別のもののように見える。
 世界の全ては、彼を通してみた時はなんと美しく鮮やかに変貌を遂げるのだろうか。今日の昼間までは確かに、彼が普段纏っている青が何よりも美しい色だと思っていたのに、今の瞬間にはこの赤こそが美しさの象徴のように思えてしまう。
「――物騒だな」
 くすり、と笑う。低く透き通った声。沈んでしまえば浮かび上がれないほど深い海なのに、透明過ぎてどこまでも潜ってしまい戻ってこられなくなるような、そんな吸い込まれそうな響きだ。
 薄い唇が試すようにくっと持ち上がる。夕日に染まった唇はとても赤く、まるで誘惑しているように色香を感じさせた。思わずごくりと鳴らしてしまった喉に、笑っていた唇はまた一段と笑みを深くした。
 先ほどまで少し肌寒いと感じていたのに、喉を掠めていく呼気が熱い。
「……ねぇ。血の匂いが興奮するって本当?」
 いつもと違う見慣れていない赤い姿。海のように空のように、心を落ち着けてくれる青をまとっている彼の姿が何よりも好きだと思っているけれども、赤く赤く染められたその姿も嫌いではなかった。彼から普段感じている安らぎとはまた違うベクトルの、強く突き動かしてくるような衝動を伴った、好きが自分の中に生まれていた。
 いつも彼はこうやって綾時に初めてをくれる。感情も衝動も興奮も喜びも熱も締め付けられるような苦しさも呼吸ができなくなるような痛みも抑えることのできない動悸も、全て彼という存在を通してもたらされるものだった。
 だからこそもっと知りたいと思ってしまう。
「綾時は発想が単純だな。……でも、たぶん本当だよ。怪我を負って命の危機を感じると生物は子孫を残すために本能が強くなる、らしいから」
「そっか。うん、それならわかるよ」
「別に命の危機はないだろ」
「あるよ、すごく」
 今現実に呼吸ができないような苦しさがある。
 触れている手が痺れるように痛い。
 打ち付けてくる心臓がまるで壊れそうだ。
「君と居たらいつでも僕は壊れそうな気がするんだ。眩暈がするほど苦しくなって他に何も考えられなくなる」
「ふーん。困ったな」
「うん。だから……上手く呼吸できなくなるから、呼吸を、させて」
 触れていた手で引き寄せて、覆い被さるような姿勢で唇を重ねる。
 風に触れていたからか柔らかな唇は少し冷たくて心地よい。感触と温度を確かめるように舌でなぞりながら緩くなった隙間にそっと入り込めば、抵抗を示すように体が離れようとしたけれども、力のあまり入っていないその手を机に押し付けレ橋台に抵抗はゼロになっていった。唇とは違って口内は生温かで濡れていて、絡み合う舌と舌の感触がどこまでも体の奥の熱を上げていくようだ。柔らかな彼の中は先ほど口にしていたコーヒーの香りが少しして苦かったけれども、熱を同じにするように舌を動かし続ければ、やがて感覚が拾うのは酷く甘美な痺れだけになっていった。
 はぁ、と吐息を漏らせば、赤く沿盛った瞳と頬の彼も同じように、不器用な吐息を漏らす。唇の隙間から零れ落ちていく呼気が勿体ないと思った。彼に言えばきっと呆れられてしまうのだろうけれども、それは偽らざる本心だ。彼からもたらされるものは、彼から発生するものは、全て僕だけが受け止めて閉じ込めたいと思ってしまう。
「……キスしてたら呼吸、できない、だろ」
「だって僕にとっては酸素より君が必要だもの」
 キミとの距離を隔てるのならば空気さえ邪魔だと思ってしまう。
 呼吸をするために空気が必要だというのと同じレベルで、自分が呼吸をするためには彼という存在が必要不可欠なのだ。もしどちらか一方しか選べないというのならば、迷わず僕は彼という存在を取る。それでもし窒息死するとしても構いはしない。彼という存在から離れてしまう恐怖を思えば、この手が繋がっているというだけで満たされるのだから。
「ねぇ、――したいんだけど」
「……お前、馬鹿か」
 学校だぞと視線を外される。
 でも二人きりの部屋だって同じように反応されるのだから、強い拒絶がこもっていないことがわかってしまう。僕には彼の心の中を正確に覗き見ることはできないけれど、彼が望んでくれているものは見えないどこかで重なっているかのように伝わってくるのだ。
 僕が抱いているものと同じ望みが。
「だって君が悪いんだよ。赤く熟れて美味しそうだもの」
「食べ物じゃない」
「わかってる。でも僕は君がもらえなきゃ飢えて死んでしまう」
「そんなことある訳ないだろ。馬鹿、綾時……」
 でも彼は僕の手を振り払ったりはしない。
 でも彼は勢いよく立ちあがりこの教室を出ていったりしない。
 机の上に大人しく手を縫いとめられたまま、赤く染まっている瞳を窓の外へと向けて、息を押し殺すように黙っているだけだ。鮮やかな赤を示している頬は、夕日だけに染められているものなのか。もう一度触れれば答えがわかるだろうが、今の僕にはその答えをわざわざ知る必要などなかったので、今度は下から覗き込むようにして近づき、その細い首筋に優しく歯をたてた。
「ぁ――!」
 ぴくりと体が反応するけれど逃げようとはしない。
 耐えるように小刻みな震えが伝わってくるけれども、ダメだという静止の言葉はなくて、だから甘噛みしたまま首筋を舐めた。細くて滑らかな首は女の子のもののようだったけれども、舌の先に感じるのは確かに喉仏で、その存在が不思議な興奮を生み出すようだった。
「好き」
「っ! そんなところで、しゃべるな」
「じゃぁ――」
 もっと味わってもいい?
 少しだけ強く噛んで。柔らかな肌に歯が沈み込む。もちろん噛み切ったりなんてしない。当然だ。このきれいな肌に傷をつけるなんて考えられない。でも滑らか過ぎる肌に少しぐらいは自分という存在を残してみたいという欲求が止められなくて、唇を細めながら肌をちゅっと吸い込んで、赤い痣を一つ、刻んだ。
 赤い夕日に染められた赤い首筋に、それよりも濃く赤い痕が一つ。
 僕のもの。僕だけのもの。
「……綾時」
「ごめん。でも、したかったんだ」
「お前はいつもそうだ。謝るくせに我慢が足りない」
「だって君のことだもの」
 どれだけ近くにいてもどれだけ触れても、まだ遠いと思ってしまう。もっと、もっともっと、僕たちは近づけるはずなのにと思ってしまう。満たせば満たすほど残っている距離がもどかしく遠く感じてしまって、抑えることのできない上が込み上げてくるのだ。
「もっと、君が欲しい」
 赤いリボンタイを指で摘まんで引き解く。
「たちが悪いよ、綾時。お前のそんなお願いを拒めないことぐらい、よく知ってるだろ」
「うん、ごめんね」
「だから謝るのは――――。はぁ……まぁいいさ」
 諦めたように誘うようにそっと閉じられた瞼に口づけを落としながら、シャツの第一ボタンに指をかけた。

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