運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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首筋へのキスは執着

そして頬へのキスは親愛
そんな綾主

どれだけ側にいても足りないのはどうしてだろう
もっと近づけるはずなのにと軋むように心が寂しがる


 
 人肌が好きだ。人の体温が好きだ。
 特に寒さが増してく冬が本格的に深まってくるこんな季節は、気がつけば温かな人肌を探してしまっている自分がいる。冬は植物が葉を散らして枝だけになり、色鮮やかな花も減り、女の子の服も明るいものではなく暗い色が多くなり見た目にも寂しくなってくる。風が強く吹き抜けて心の隙間を押し広げていくような気もする。色合いも心も何かが足りないと訴えてくる。
 それに寒いからとたくさん着込むので人と人との距離が増えてしまうような気がするのも原因の一つかもしれない。温まろうとしているはずなのに一番欲しいはずの人肌との距離が離れていくなんてとても残念なことだ。そんなことを順平に言ったら、それは綾時が女の子の素肌を見たいだけじゃないのでもそれって男としては当然の欲求だよなオレっちよくわかるよ、と嬉しいのかあまり有り難くないのか微妙な意見をもらったものだ。その見解には概ね賛成なのだけれども、教室で大きな声で話すものだからその時のクラスの女子のちょっと冷たい視線と、彼の明らかに呆れた灰青に彩られた視線は冬の寒さ以上に冷たく感じたものだ。
「――ねぇ」
「ん?」
「テレビ、つけてもいいかな」
「あぁ」
 青だけで構成されている万華鏡を覗きこんだように綺麗な瞳をすぐ真横から見つめながら問いかけたが、彼は手元の本から視線を1ミリも動かさずにそう答えるだけだった。僕の吐息が彼のサラサラの髪にかかって微かに揺れているのに、その近さもくすぐったさもまるで自分とは隔絶された出来事のように反応しない。
 小さく溜息をついた。宣言通りテレビをつけるけれども別に見たいものがある訳ではなかった。もし見たい番組があったとしても彼を見つめていられる時間が減るのならばどちらを取るかということは考えるまでもないことだ。それでもテレビをつけたのは、ただ単に彼に話しかけるきっかけが欲しかっただけのことだ。一緒にいるだけで満たされるものも多いが、さすがに二時間を超えてくると少しは相手をして欲しいと思ってしまう。例え今日のこの時間が、約束もなく急に押しかけた結果であったとしても。
 もちろん彼が本を読みだすと集中することは良くわかっていた。彼の空よりも澄んだ瞳が一心に活字を追いかけているのはとても綺麗だったし、細くて形のいい指が一枚一枚ページを丁寧にめくっていく動きは繊細で好きだったし、気だるげな雰囲気をまといつつも妙に様になるすらりとした読書の姿勢も見ていて飽きなかった。それに何より彼が読書に集中するのは基本的には一人でいる時だけで、それを綾時がいる前でも変わらないというのはそれだけ深いところまで許されているからだということを知っていたから、嬉しいと言えば嬉しい状況でもあるのだ。
 一際賑やかな番組でチャンネルを止めて、読書中の彼の肩に寄り掛かるように少しだけ体重をかける。少しだけ抵抗するように身じろぎをされたが、それでもぴたりと肩を寄せれば彼は重みごと僕の存在を受け入れてくれた。
 ぱらり。ぱらり。ぱらり。
 テレビからの喧騒と切り離されたように静かにページを繰る音だけが僕の中に染み込んでくる。体重をかけながら視線を落とせば文庫本をアーチ状になるように持っている雪よりも白くて神経質そうな指先が動く。本のタイトルは見えないけれども、彼の視線と指先を独占している本に嫉妬しそうだった。
「――――何?」
 綺麗な綺麗な青色が僕の方に向けられて止まった。
 思わず息を詰めて見返していれば、どうしたんだ綾時と言葉が再度重ねられて、その時になって自分が彼のページを繰る指先を邪魔するように握り締めていることに気づいた。細い指は見た目の白さを反映するようにとても冷たい。まるで本に体温を奪われたみたいだ。
「指、冷たいね」
「そうか? 綾時が子供体温なんじゃないのか」
「そんなことないと思うんだけどなぁ」
 ごめんねと言って手を離した。
 でもその指先は再び本に戻ることはなく、読み掛けの文庫本はぱたりと閉じられて床へと置かれた。しおりを挟んでいなかったけれどもどこまで読んだのか覚えているのだろうか。そんな自分にとってはどうでもいいはずのことが妙に気になったけれども口に出しては何も言わないで、彼の視線がテレビに向かうのと同じ速度で自分もテレビへと視線を向けた。けれど映っている映像など何一つ頭の中に入ってこない。
「綾時……重い」
「うん」
「見ないのか」
「見てるよ」
「テレビの話だぞ」
 うん、と小さく応えて寄りかかる。体を密着させる。
 どうして今は冬なのだろうと思った。自分と彼を隔てている厚手の生地の服が恨めしい気持ちだった。もし夏ならばこれだけ近くにいれば素肌と素肌で彼の体温を感じることもたやすいのだろうに、長袖に覆われているのがとてももどかしい。
 だから。
 いったいどうしたんだという風に彼が首を傾げた時に見えた、厚手の服とさらさらの髪の隙間から覗き見えた白い首筋に、引き寄せられるようにしてキスをした。
「! りょ――」
「好き」
 するりと零れ出た言葉は少しだけ嘘だった。
 好き。それは間違いではない。でも今一番強く自分の中で渦巻いているのはもっと言葉にするのが憚られるような欲求で、出来るのならばこのまま歯をたてて逃がさずそのまま一つになってしまいたいという、先ほどまで自分の中にあった温かなものを蹴り飛ばしてしまうほどの激しいものだった。
「……」
「離れ、ないで」
「…………馬鹿だな」
「ごめん」
「ん……。大丈夫だよ」
 小さく笑った彼はどうしたのだとも聞かずにただ優しく、頬にキスを返してくれた。

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