運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

| スポンサー広告 | TOP↑

≫ EDIT

掌へのキスは懇願のキス

耳へのキスは誘惑のキス

をやりたかったんだけどレイユリ何それ美味しいの?
っていう仕上がりになった。すみません。
まぁそんな訳でいつも通りの雰囲気レイユリ
足りない部分は各人で補完よろしく


 
 この想いを言葉にするなんてことはとてもできない。
 自分の全てだとか生きている理由だとか光だとか命よりも重いものだとか掛け替えのないものだとか、それこそ世界と天秤にかけても迷うことなく選ぶものだとか思いつく限りの言葉を重ねることは可能だが、一生分の言葉を尽くしても自分が抱いている想いの欠片ほども伝えられはしないのだ。それは量という意味でもそうだし濃度という意味でもそうだ。
 抱いているものがこの世界の中で一番重く濃いものだなどと自負するつもりはないが、少なくともこれよりも価値のあるものを自分は知らないし想像もできない。もしそれを相手に言えば、形の良い薄めの唇の端を皮肉気に持ち上げて、真冬の夜空に浮かぶ細い三日月を写し取ったように微笑みながら、おっさんのくだらないたわごとは聞き飽きてるんだけどオレ、と低く骨を揺らしながら薄いグラスを指で爪弾いた時のような澄んだ音色を響かせる声で告げるのだろう。
 言葉だけを追えば冷たく突き放すような言い方ばかりする青年はそれと反して一度近づくことを許した相手に対しては知ってか知らずか必要以上に甘い。本人がそれを自覚しているかいないのかは知らない。一度だけ冗談まじりに口にしてみたが聞き流していた彼がどう思っていたのかはわからない。わかっているのは知っていたとしてもそれが自分の生き方だからだと曲げることはしないだろうということだけだ。
 手を罪に染めることを怖れる心を持ち続けているくせに躊躇うということを自分に許しておらず、何もかも一人で背負いきれることがないと理屈でも経験でも知っているくせに誰かに荷物を委ねることに対しては酷く不器用で、だがそれ以外のことに関しては驚くほどに器用なものだから上手く隠してしまうのだ。こちらのことを胡散臭くて誤魔化してばかりのおっさんだというくせに、青年の方も本質的にはそうだと指摘すれば、ばれるはずがないと思っていた悪戯が親にばれた時の子供のような表情を浮かべ、でも一瞬後にはいつもの整った綺麗で皮肉気な笑みを浮かべ直し、おっさんにだけは言われたくないけどなと否定も肯定もしない言葉を返してきたりする。
 真っ白で綺麗な手を取ってその掌にそっとキスをする。
 反応は二つ。一つはくすぐったそうに身を竦める動作。もう一つは黒一色に塗り込められているその奥にアメジストを溶かした湖面を映しているかのような紫の光を浮かべる色気の含んだ瞳をレイヴンへと向けること。少し離れていれば動いたのすらわからないほどの小さな動きは、けれど心臓の鼓動を速めるには十分な艶やかさだ。
「それで?」
 音になった問いかけは短い。
 這わせた舌で手首から指の付け根をゆっくりと舐めた。昼間を移動に費やした体は少しだけ埃っぽく、少しだけ塩っぽくて、いつもより少しだけ熱い気がする。武器を持つ手とは思えないほどに整った綺麗なシルエットをしているけれども、こうして直に触れれば貴族の令嬢のように何もしていない象牙のように滑らかで艶やかなものではなく、細かな傷や皮膚が硬くなった部分が当たり前のように存在していて、それはまるで青年の生き様そのもののように思えた。
 青年が人に見せる姿は美しいとレイヴンは思う。それは取り繕っているとか自分を良く見せようとしているとかではなくて、どちらかといえば傷だらけで汚れているので近づくなと言わんばかりのものを示すことの方が多いが、その背中だけは真っ直ぐと行き先を示すように伸ばされていて、その姿は逃げることが癖になってしまったようなレイヴンから見れば太陽を直接仰ぎ見るように眩しいものだった。
 隙間なく味わうように舌を動かして掌を濡らしつくすともう一度キスをする。
 水気を含んだそれは小さな音を立てた。離した唇からはまるで未練をそのまま示すように唾液が糸を引き、安宿の照明を映しながら鈍く光りつつ途中でぷつりと切れる。濡れた掌と違い乾いたままの指先がレイヴンの顎を捉えて輪郭をなぞった。
「好きよ」
「あぁ」
「青年が好きなの」
「知ってる」
「欲しい」
「それ、おっさんの宣言だろ?」
「ううん。お願いよ」
 そう言えば見下ろした先で青年が笑う。
 乱暴に押し倒したものだから夜を切り取ったような黒い髪は糸車から外れた絹糸のように乱れて散らばっていて、顔にもかかったそれは形のいい輪郭は隠し、楽しそうにも不機嫌そうにも見える目元をわかり辛くし、目に焼付くような笑みを浮かべる口元を半分隠していた。顔を近づければ先ほど青年が自ら作っていたシフォンケーキの香を残していて、身じろぎすると微かに甘い匂いが広がる。その匂いはあまり好きではない種類のもののはずだったが、中心にいるのが青年だと思うとそのことは一切気にならなくなった。
「譲る気のない主張はお願いじゃねぇよ」
 そう言いつつも口調は優しい。
 濡れた掌の濡れていない指先がレイヴンの顎を掴むように伸びてきて引き寄せられた。でも、と前置きする声が規則正しいはずの魔導器の動きを乱すように響いてくる。くらくらとする。青年といる時の自分はどんな時よりも生きていることを実感しているくせに、死に引きずり込まれる瞬間よりも苦しいもので満たされたようにもなるのだった。
「いいぜ」
 唇が耳に触れる距離で確認するように囁く声。
 普段の声も心臓の鼓動を乱すものだが、意図的に声音を落として低く囁かれる声は酩酊に近いものを呼び起こす。だが酔っているというのならばそれはもう随分と前から。青年の前での自分はずっと正気を見失っているようなものだ。それを告げた時青年は、正気でいるということが命で責任を取るという結論を選ぼうとすることならば、いっそずっと正気を失っていればいいと悪だくみをするような表情で笑ったものだ。
「だいたい、俺がおっさんの願いを聞いてやらねぇことってあったか?」
「わりと高確率だと思うんだけど」
「気のせいじゃねぇか」
 だっておっさんの本当の願いはいつだって俺の方がわかってるだろ。
 耳元の唇が行為の続きを誘うように柔らかく耳朶にキスをしてきた。

| ヴェスペリア | TOP↑

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。