運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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諦めた

堂主を書くつもりが中断したら修正不能なまでに行き先を見失ったので諦めた。
再利用するのも微妙なので文章っぽい部分だけUPする
という訳で別に何にもしてない番長と堂島さん。
唐突に終わるし続きはありません。

雰囲気で察しろな文章になってますが雰囲気で察してください
前後に色々あったんだろ!と各人で補完するのが吉


 
 初めは本当にそんなつもりなど微塵もなかったのだ。
 そう言い切るのは確かに憚られる不純な成分が自分の中にあったことは認めるが、それは何も今回の行動に対してのものではない。相手に対して抱くべきではない感情は常に自分の中にあって、正確には事件が一段落ついて穏やかというか怒涛のような夏休みだった八月の終わりごろにふっと自覚してしまった時から心の内側に張り付いてしまって取ることができなくなったものだ。
 スイカ割をするのだと嬉しそうに訴えた菜々子に、その発想はなかったなと困り顔で頭をかきながら、切り分けられたスイカを片手に叔父は悪いなと菜々子を見つめながら苦笑した。その瞳は本当に優しい父親のものであり、仕事での叔父が厳しい刑事であろうとも、時折一人で考えごとをしている時には近づくことはおろか呼吸をすることさえ躊躇ってしまうほどに張りつめた空気を身にまとうことがあろうとも、この人の本質はとても優しいのだなとわかるものだった。武骨な手や逞しい体つきは誰かを守るための、大切な娘を守るためのものなのだ。
 そんな父親としての表情をしながら、けれど綺麗に切り分けられた盆の上のスイカを見つめながらさてどうしたものかと真剣に困惑を浮かべた表情は年齢や肩書とは似ても似つかないほどに無防備で、もしこんな表現を許してもらえるのならばとても真っ直ぐで可愛らしいとでも言いたくなるようなものだった。思わず笑ってしまった自分に、いっておくが俺は真剣なんだぞと、怒っているような口調ながら拗ねているように見える表情で訴えてきたのもまた、そんな思いに拍車をかけるものでしかなかった。
 叔父の手から盆を受け取る時に触れた手は熱くてしっとりと汗ばんでいて、それは夏の熱気だけではなく少しでも早く喜ばそうと急いでいたからなのだろう。玄関を入ってきた時には呼吸一つ乱れてなかったが、そういうところを見せないように自然と行動するのはとても叔父さんらしいものでもあった。ご苦労様ですと心を込めて言えば複雑そうな表情を見せたもののすぐ一瞬後には破顔して、大きな掌でこちらの頭をくしゃくしゃと乱暴に撫でてきた。照れ隠しだったのだろう。大きめのコップで冷たい麦茶をもらえるかと、そう要求された言葉がとても嬉しかった。
 そういえばあの頃からのような気がする。明確なきっかけはなかっただろうけれども徐々に叔父が家の中で自分に何か用事を頼む時に、悪いな、と言わなくなったのだ。それは別に気遣いがなくなったという訳ではもちろんなく、余計な気遣いをしなくてもいいだけの近さまでたどり着けた証なのかと、交わす会話が少し減った代わりに間にある空気が軽くなったのを実感してそう思ったものだ。叔父は少しずつ色々な表情を見せてくれるようになったし、自分も思っていることを少しずつ口に出して伝えられるようになっていた。ただしそれ以上に言えない言葉も増えてしまって、あまりにも増えすぎて実は抑えているつもりが辺り中に溢れだして、隠しているつもりがすべて見られているのではないかと思う時がある。
「――叔父さん、飲みすぎじゃありませんか?」
 もうずいぶんと正体をなくしている叔父の要求に従って新しい缶ビールを渡しながら様子を伺うようにしながら声を掛ければ、酔いで赤くなった眼差しが悠を正面からとらえた。そこには刑事として見据えてくる時の研ぎ澄まされた鋭さはなかったけれども、呼吸することを忘れてしまうほど深くまで侵入してくる強さはあった。一瞬身を後ろに逸らしかけたが、これは自分が望んだ状況だろうと言い聞かせて表情には出さないようにした。
 机の上には二桁に突入したビールの空き缶。だが量だけならば正体をなくすほどでもない。ただいつもと違って帰ってきてそうそうのところに、夕食の用意に時間がかかりそうだからと先にビールを渡したのは自分で、しかも普段なら軽いあてを出すところをそれもしなかった。疲れた体のすきっ腹に酒を注ぎ込めば酔いがすぐ回るのは当然のことだ。それでも以前ならば気を使っていたのか家で飲みすぎることもなかっただろうが、今では格好悪い姿を見せたなと翌朝に謝ることが度々あるぐらいには力の抜けた姿を晒してくれる。だからそれをほんの少しだけ後押ししてしまえば、熱を帯びた表情の叔父に会うことはそれほど難しいことではなかった。
 酔いのせいで少し傾いた叔父の体が肩に当たる。酒のせいで熱を帯びているのであろう体はじわりとしたものを伝えてきて、煙草と汗の混じったこの半年で嗅ぎ慣れてしまった匂いがした。スーツに移った残り香は普段から嗅いでいるが、こうして体温と共に漂ってくる濃い匂いに自分の鼓動は運動後のように強く速く打ちつけてくる。すぐ近くで視線だけで窺うように見つめてくる瞳が、隠そうとしているものを一直線に見据えて貫いてくるようで、至近距離で接していることで感じる熱と同時に冷たいものが背筋を撫でていく感触もあった。
「――あぁ、確かにそうだな」
「叔父さん?」
「少し飲みすぎた気がする」
 新しいビールを一気に流し込んで半分ほどになった缶をテーブルに置き、視線を戻しながら呟いた。視線の先にあるテレビは真っ黒な画面のままで、それは何も今日が特別なわけではなく、菜々子が起きている時や普段はニュースなどを見るのだが、疲れて帰ってきた時は頭を休ませたいのか毒にも薬にもならないような番組すら見ることはない。最初は静かな空間に間が持たないような気がしたが、今は叔父が食事をすすめる音と二人分の呼吸そして間に挟まれる短い会話の音だけが漂う時間が嫌いではなかった。
「枝豆茹でましたから、どうぞ」
 つまみを出すには遅すぎるタイミングだと思いつつも出来立ての枝豆をそっと叔父の前に置いた。普段なら先に作っておいて帰ってきてすぐに出すものだ。ここまでお酒がすすんだら今さらあまり手を付けないだろうが、それでも差し出したのは自分に対する言い訳のようなものだった。さり気なく体の位置を近づけて動きに合わせて腰が触れるような位置に座る。
 用意がいいな、と耳の近くで笑いを含みつつ叔父の声が囁いた。それが料理に対する純粋なものだったのか自分が図ったタイミングに対するものなのかを一瞬判断しかね息を吸い込めば、それを答えと受け取ったかのような太い指先が肩に触れた。あ、と思う暇もなかった。左手が肩を掴んだかと思うそのまま片手で体を倒される。それは自分の体を支えるために後ろに手をつくような無造作な動きに似ていたが、抵抗する間はなくまた振り払えるような力でもなかった。
 座ったままの叔父に片手で押し倒された格好で見上げる。覆いかぶさるように抑え込まれている訳ではないのに、片手一本で完全に動きを封じられていた。肩に感じる力は何げない姿勢のはずなのに力強く、抵抗できないように抑えるすべを仕事柄よく知っているのか体の大半は自由なはずなのに指先まで痺れたようになって自由に動かせなかった。以前菜々子が、お父さんが自分よりも大きな男の人を簡単に捕まえているのを見たことがあると、嬉しそうに話していたことが思い出された。
「叔父、さ……――」
「あまりこういうのは感心しないな。いや、曖昧にしていた俺が悪いのか」
 視線が落ちてくる。まだ酔いの赤みを色濃く浮かべているのに瞳の奥には仕事をしている時の鋭いものがあって、だが向けてくる声は刑事としてのものではなく労わるように酷く優しい。その落差が自分の小さな企みに気付いていることを示していて、一瞬で背中が氷のプールに浸されたような冷たさに包まれる。血の気が引くという言葉は確かにその通りなのだなと凍りつきそうな思考の中で思った。そして同時に自分の口元には苦笑とも自嘲ともいえるものを浮かべる。
「……酔ってないなんて、狡いですよ」
 こんな時ばかりは感情が表に出ないたちでよかったなと心底思う。陽介などには鋼の心臓かと言われたことがあるが実際はそんなにたいそうなものではなくて、心の中は今すぐ叫んで逃げ出したくなるほど震えているというのに、神経の伝達が麻痺してしまったかのようになって行動に移せないだけなのだが、それでも目の前で取り乱した姿を晒さずに済んだことはありがたかった。叔父はさすがに刑事というべきかこちらの状況を見抜いているようで、表情の変わらない顔をじっと見ながら細く長いため息を一つ吐き出した。
 今更ながらに自分を抑える手が常と変らない体温だとか、目や頬に赤みはさしていてもそれほど濃いものではないだとか、呼気にアルコール臭ははっきりとするものの声音はいつも通りだとか、口調は多少砕けたものではあっても事件のない時としてはそれほど逸脱していないものだとか、そんな当たり前のことを理解する。
 この叔父は、父親としてのことは不器用すぎるし鈍すぎるところはあるがそれ以外に関しては本当に刑事が天職だなと感心してしまうほどに鋭いから、きっと自分が何を考えていたのかなど全てお見通しだったのだろう。そしてそれでも知らないふりをして最後までやり過ごすことを選ばなかったのは、自分のことを大切に考えてくれている上で家族としての立場で向かい合っているということだ。つまりそれ以外としては向かい合えないと、そういう意味だ。
「悠、前にも言ったが――」
「冗談です、叔父さん」
「……」
「この頃帰りが遅いので、少しからかってみただけです」
 酔いが回った状態ならと思ったのは事実だ。だが別にそれほど深いことを考えてのものではなくて、普段はあまり見せてくれない素の表情をもう少しだけ見たいとか、自分のことをどう見てくれているのかその末端の感情だけでも知りたいとか、もっと具体的に言うのならば普段よりも隙の大きくなった叔父が自分に少しでも寄りかかってくれればとかその程度のものだったが、そんなものは自分の行動が見透かされた後では言い訳にすらならない。
 それでいいんですと付け足した言葉は誰が聞いても信じないほど震えていたが、静かな眼差しはそれ以上の追及はせずに、そうかとだけ短く呟いた。

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