運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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愚者の慰め

慰める言葉を囁くのは誰のためなのか
それはとても愚かな者に捧げる自己救済

P4で足主
足←主寄りの足主です
足立くんが弱っていて、番長がナチュラルに酷い思考回路
11月の救出後


 
 伸ばされてきた手は酷く優しい手つきだった。
 壊れ物に触れるような動きで髪をとかし、冷たい指先で耳に触れて、そのまま子供をあやすように頭を撫でてくる。髪の流れに逆らわないようにゆっくりと、何度も何度も体温以外を分け合うかのような動きだ。
 だがその動きに意味などなくて、ましてやこちらに対して何かを与えようとしているものではなくて、心の中の乱れをそのまま動きに転嫁しているだけであることはわかっていた。きっと足立自身も、自分が何をしているかなど意識していないに違いない。
 喉元まで出かかったいつもの応酬は小さな呼吸と共に飲み込んで、無言のままそっと瞼を伏せた。自分を撫でてくるこの手が、いったい本当は誰を慰めたい故のものなのか、それがわかっているからこそ掛ける言葉などない。できるのは、
「……大丈夫だよ」
「はい」
「堂島さんも菜々子ちゃんも、大丈夫だよ」
「ええ。きっとすぐに退院できますよね」
「――うん。大丈夫さ」
 力なく呟かれる、どちらがどちらを慰めているのかよくわからない台詞に、定型文のような応答を返すだけだ。
 形だけは、家族を心配する高校生とそれを慰める大人で、実際は慰めるその手で必死に体を支えようとしている大人を見て見ぬ振りする高校生。次第に温かくなっていく撫でてくるその手のひらに、安堵のようなやり切れない苦いもののような、どちらとも判別しがたいものが込み上げてくる。
 不安だというのならば、一人きりの家の静けさに自分自身も押しつぶされそうなのは否定しない。八十稲葉に越してきた当初なら思いもしなかっただろうが、一度家族としての温もりを知ってしまった今は、誰も答える声のない静けさとか自分意外に気配のない冷たい空気は、この身を鑢で削られるかのような痛みの連続だ。
 居心地の良かった場所が消えるのは自分を見失いそうなほどに苦しい。
 だが今にも崩れそうな相手の姿を目にしていると、自分自身でそれほど脆くなっていることを気づきもしていない姿を見ていると、自分の痛みの在り処など分からなくなってしまう。自分を支えるはずの手を、相手に差し出すことしかできなくなってしまう。
 自分はきっと、彼以上には苦しんでいない。
 まだ麻痺していて実感がわかないだけなのかもしれないけれども。
「ねぇ悠くん、晩ご飯は? まさかお惣菜で済ませてるの?」
「……一人だと作るのが面倒で」
「ダメだよぉ。そんなことだと堂島さんも心配するじゃない」
「それを、毎日ジュネスのお弁当で済ませている足立さんが言うんですか?」
「あー、それはまた別、だよ」
 僕は大人だからね。
 理由になっていない理由をしたり顔で続けて、撫でていた手が頭から離れる。
 ゆっくりと瞼を上げて視線を向ければ、困ったような表情があった。
 堂島家にやってくる時に見せるにへらとだらしなく笑って見せる表情に近くて、けれど下がった目尻も持ち上がった唇も少しも笑みを浮かべてなどいなかった。
 きっと自分がどんな表情を浮かべているか気づいていないのだろう。取り繕うように笑えていると思っているのかもしれない。普段の作り慣れている表情すら上手に浮かべられないほど自分が動揺しているのだと、気づいていないのだ。
 いや、認めたくない、のかもしれない。
「料理を一人分作るのって、手間で面倒で、それに案外高くつくんです」
「あぁそういうものなの」
「でも……。買い置きしていた食材が賞味期限が来そうなんです、よ。だから、足立さん――」
「ん?」
「食べて、帰ってくれますか?」
 だったら作ります。惣菜ではなくて手作りの夕食を。
 頼りなさげな子供の表情で、呟いた。
 玄関先で半歩距離を詰めて、額を足立に預けるように寄りかかり、一緒に食べてくれますかと重ねる。
 もう少しだけこの家に居て、俺を一人にしないでくださいと囁く。
 支えを必要として縋り付くような指先で触れる。
「――家に一人なのが寂しいって?」
 揶揄するような言葉は、けれど口調ほどには軽い響きを伴っていなかった。
 どちらかと言えばほっとしたような響きを含んでいた。
 自分が抱く不安よりも大きな不安を抱えた存在を見つけることができて、その相手を慰めるという取りあえずの自分の役割が確保できて、立ち位置を見つけた安堵が滲んでいた。
「足立さんはそう思わないんですか?」
「僕は一人暮らしだからね。帰ったらいつも一人だよ」
 でも帰宅時の一人は慣れていても、仕事の時に一人なのは慣れていないですよね。だからそんなに不安そうなんですよね。
 勢いで発してしまいそうになった言葉は、口を開いた形で寸前で飲み込む。完全に呑み込みきれなかったのは、自分で思っている以上にこの状況に参っていて制御が利かなかったからかもしれない。慰める相手を欲しているという意味では、自分も足立と同じなのだ。
 足立は悠を慰めることを立ち位置として自身を支えようとしていて、足立に慰められる役を自分に課すことで悠自身もここに立っている。
「寂しいですね」
「小さな子供じゃあるまいし、そんなことないよ。気楽なもんだ」
 けれどそんな小さな子供みたいなことで不安になってしまう。自分も足立も。
 どれだけあの不器用で温かだった柱に自分を委ねていたのかを思い知らされている。目を背けなければ立っていられないほどに。
「でも一人の家は……寒いです」
 静けさはテレビをつけていれば紛らわせられるかもしれないけれど、肌にまとわりついてくる空気の冷たさは紛らわせられない。新しいのを買おうと約束したまま果たせていない壊れたコタツの掛け布団の感触が、余計に寒い空気を際立たせる。
 そうやって愚かな子供の顔で続ければ、小さく笑われた。
 呼気の混じった空気は静止した家の中で仄かに温かい。
 普段の隙だらけの笑顔の、けれど深くまで立ち入らせない独特の距離とは違い、すぐ横に寄り添うような位置で感じる温かさ。いつもと違うこの近い距離は、いったい誰が一番望み、いったい誰が一番必要としているものなのか。
「言っとくけど僕、体温低いよ」
「栄養が足りてないんですね。足立さんって本当に可哀相な生活を送ってますね」
「え? ちょっとそれ何? 僕、もしかして慰められてる?」
「仕方ないですから少しぐらいまともなもの食べさせてあげますよ」
「あ、そういう流れに持っていくの? ……はぁ、君っていい性格してるね」
 でもまぁ僕は大人だから許してあげるよ。
 そうやって鷹揚に頷く足立から僅かに視線を外して、すみません、と返す。
 子供の強がりと我儘に付き合う大人、そういう逃げ道を整える。
「――――今日だけでいいですから」
 ダメ押しのように弱々しく呟けば、仕方ないなぁと返ってきた。
 苦笑を浮かべる表情の裏に本当は安堵があることを知っているけれど、今はそれを暴き立てるようなつもりはない。ここならばあなたは上司の不在に不安を抱く可哀相な大人ではなくて、可哀相な子供を慰める大人を演じられるのだと、両手を広げて招き入れるだけだ。
「まぁいいさ。今日ぐらいは、ね」
「……ありがとうございます」
 そうやって上手に慰められる子供を演じて、あなたを慰めてあげよう。
 これが茶番の慰め合いだとわかっているけれども。
 この身を差し出して、その身を受け止めて。そんなことでしか己を支える術を、今の自分たち持ち合わせていないのだから。


番長は頼られることに慣れていても頼ることに慣れていないイメージ。
だから倒れそうなほど参っていても頼られることで自分を支えようとするんじゃないかと。
足立も同じ思考。ただし足立は無意識で、番長は自覚済みでの行動。
……だと私が嬉しい、という妄想。

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