運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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愚かな子供におやすみを

P4で足主

BADではないつもりですが暗いです
死にネタ絡むので苦手な方は全力回避

だが私が書く足主としては相思相愛に近い、はず


 
 なんだかもう拒むのが面倒になって埋めてくる顔をそのまま胸で受け止める。
 強風の時でも髪型の崩れることの滅多にない髪は、だが予想に反して細く柔らかくくすぐったい。頭頂部のふわりとした毛先が顎や鼻先に触れてくしゃみが出そうになった。が、そこはぎりぎり押しとどめる。僕だって、そこまで空気を壊したいわけじゃない。
「あ、……ちさ、ん……」
「なんだよ」
「――――足……立さ、ん」
「はいはい」
「――ち、さん」
「……」
 苦しげに絞り出される声は小さな子供の悲鳴のようで、酷く耳障りだ。聞き取りにくい音量のくせに無視することのできない響きで、意識を別の所に追いやろうとしても執拗に追いかけてきて鼓膜を揺らす。まるで呪縛のようだ。
 あぁイライラする。これだからガキは嫌いなのだ。
 もっと世間体とか矜持とかにこだわって、本心なんか包み隠して忘れてしまえばいいのに。大人になったらできないようなことを簡単にやって見せるから嫌いだ。見せたい自分ではなく自分のままの自分を簡単に晒してしまう、そんな無防備なところが大嫌いだ。
 さっさと消えてしまえばいい。
 それは紛れもない本心なのに、押し付けられてくる頭にそっと手を置いた。
 靄のように薄い色彩の髪はところどころ赤黒く染まってこびり付いていて、汚れて固まった砂埃と血が指で梳るのを阻む。無理やりに指を通せば、ぷちりと抵抗があって髪が抜けたが、抗議の言葉も反応も返ってはこなかった。
 痛い、ぐらい言えばいいのに。きっと足立の手のひらの温もりを全身で感じているのだろう。バカで愚かでどうしようもない子供だ。
 ひらりはらりと短い髪が散っていく。
 埋められた顔がただ無心に、足立の左胸にぴたりと頬を寄せるようにすり寄ってきた。
 白かったシャツは赤く汚れて破れていた。お互いに。
「足立、さんの……」
「うん?」
「心臓の、音」
「そんなもの聞いて楽しい?」
「生きてる……心臓の、音」
「そうだねぇ。君が僕なんかを生かしたから、ね」
 本当に君ってムカつくほど馬鹿だねと言えば、胸元に体重を預けたまま灰色の双眸だけが足立の方を見上げた。ぱちりぱりちと瞬きをゆっくりとする表情は、先ほどまで足立を糾弾し刃を向けていたのと同じ人物とは思えないほどに幼い。
 悠の寝顔は菜々子と似ていて妙に可愛げがあるのだと、親バカっぽいことを言っていた上司の言葉が思い出された。それって褒め言葉になってないですよと苦笑しながら返したが、なるほど、こうやって油断しきった表情は高校生とは思えないほどに幼くなる。普段が大人以上に大人びた表情を崩さない分、その落差は別人のようだ。
「……死なせません」
「あのね……。君のそれはね、菜々子ちゃんのことが辛かったから過剰に反応してるだけなんだよ。わかる? 誰にだって自分より大切なものがあるかもしれないけど、普通はそれにも順序があるし、もちろん自分より大切じゃないものだって沢山あるだろ」
 対峙した時に彼が放った一撃は足立にとって致命傷だった。
 足立がそうさせたのだ。もう面倒で、どうでもよくて、だから振り抜かれた刃に一歩踏み込んで目を閉じた。それだけのことだ。自分で自分のことを始末するのは怖くて、だからほんの一瞬の気の迷いで終わらせてくれるのならばそれも悪くはないだろうと思ったのだ。逃げ続ける選択をしてきた足立の、最後の気まぐれの選択だった。
 本当ならそれで即死できたはずだ。だが無駄に反射神経も運動神経もいいこのガキは、ぎりぎりのところで軌道をわずかにずらした。大したものだ。褒めたくはないけれど。
「バカだよねぇ、君」
 自分に縋り付く自分より背丈の大きな、けれど小さく見える子供を見下ろす。
 本当にバカだ。血の気の失せた顔を見下ろして舌打ちする。
 なんで足立なんかのために優先順位をあっさり無視してしまえるのか。
 自分も酷い傷を負っているのに、なけなしの力を当たり前のように足立に使ってしまうなんて、考えなしのガキのやることは本当に嫌いだ。仲間が無事な時はそれでも何とかなるのだろうが、他の連中は皆周りで倒れて気を失っている。誰にも助けてもらえるような状況ではないのに、躊躇いもなく行動するなんて心底腹立たしい。
 頼んでもいないのに。
 むしろ迷惑だと言ってやったのに。
「足立さんに、は……生きて……」
「……あのさ。僕が生きてたらこのまま世界は霧に包まれて、僕も含めてすべてシャドウに変わるんだよ? 結局は死ぬのが確定してるのに、それを助けてどうするの」
「俺、好きなんです。足立さん、の、心臓の音」
「――……。そんなの誰だって同じだろ」
「知ってます? 嫌いだって言う時に、少しだけ鼓動が早くなるんです」
「気のせいだよ。もしくは力込めて言ってるからじゃないの」
「それでも、いいんです」
「バカだね。学年首位だなんて嘘だろ」
「だってあの時とても――安心できたから」
「……」
 くだらない。気紛れだ。
 堂島さんや菜々子ちゃんが入院して一人でいる彼に、ちょっと優しい言葉をかけてやっただけだ。その後に突き落としてより深く傷つけるために、偽りの温かさを貸してやっただけだ。心のこもらない言葉で慰めて、気まぐれに抱きしめて、大丈夫だよと眠らせてあげた。それだけだ。
 そこには本物の優しさとか慈悲なんて欠片ほどもない。意味もない。手放して突き放すための、ただの予備動作だったのだ。
 抱きしめて頭を撫でて大丈夫だよと。二人はきっと帰ってくるよと。僕が傍に居てあげるよと。もうこれ以上怖いことは起こらないよと。
 そんな無責任な言葉と無意味な抱擁とを与えただけだ。
「足立さんって、案外いい人ですね」
「案外ってなんだよ。――ってか、犯人の僕にいい人って表現はおかしいだろ。君の友達の好きな人を殺したのは紛れもなく僕なんだよ。生田目の行動を悪意を持って後押ししたのは僕なんだよ」
「そうですね。こんなことを言ったら陽介に殴られるかもしれないけど、それでも――足立さんはいい人ですよ」
「君は……バカな子だよ」
「……嘘でもよかったんです。空っぽでもよかったんです。それでも……それでもあの時の俺には救いだった」
 抱きしめられた温かさが、その時伝わってきた鼓動が、自分がここに居てもいいのだと言ってくれているように思えた。その音を聞きながら一週間ぶりに夢も見ない眠りを貪ることができた。それが救いだったんです。俺にとっての。一番の。
 だから最後までこの心臓の音は止まって欲しくない。
 途切れ途切れに紡がれる言葉は耳に優しく胸に痛い。
 縋り付いてくる手に力はないけれど逃れられない。
 あぁ彼は本当にバカな子供だ。
 そして自分は愚かな大人だ。
「――悠くん」
 優しく優しく呼びかけて、あやすようにそっと背中を撫でてやる。
 らしくないなと思いながらも、これが最後なのだからいいだろうと思う。どうせ誰も見ていないし、誰かが見ていたとしてもその記憶ごと消えてしまうのだから。
「あ、だちさ、ん――?」
「大丈夫だよ。もう怖いことは起きないから。――おやすみ」
 視界を塞ぐように胸元に抱きしめて囁く。
 おやすみなさいと、そんな振動が心臓に伝わってきた気がしたが、声はもう聞こえなかった。
 心臓に感じる重みが、息ができなくなりそうなほど重く感じる。
「……そうさ。大丈夫さ。もう、怖いことなんか起きない」
 だって何もかもなくなるからね。
 そして腕の中の温もりが何もかも溶かしてくれるからね。
 続けた自分の言葉がチープな恋愛ドラマのセリフのようで、本当に世の中はくだらないなぁと苦笑した。


相討ちに近い状態で勝ったけど足立を助けて力尽きる番長。
闘いの前に番長は真実を追う現実に負けていてそれに殉じた。そんな感じです。
偽物でも足立の温もりに縋りたかった番長と、
自分の気持ちに気付いたけれども嘘で見送ってあげた足立。

もう何も怖いことは起きないよ。僕にも、君にも。

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