運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

| スポンサー広告 | TOP↑

≫ EDIT

ただの戦い

現在TOGの原稿してます。
そんな中で没にしたシーンを。

これにはCPも何もありません。
それどころか色気も雰囲気もなくてただの戦闘シーン。
本当に戦闘書いてるのが一番楽しい。

前後がありませんが問題ない方はどうぞ。
フェンデルでの戦闘です。


 
「――教官!」
 呼びかけられた声と同時に、背後に回り込むように魔物の気配が現れた。前方では既に戦闘態勢に入っているアスベルの背中が見えて、マリクは背の投刃に手をかける。
 慣れた緊張感が肌を叩いた。すぐ隣にいたシェリアを自分の背後に庇うように位置取る。前方ではすでに複数の魔物を引きつけるようにアスベルが応戦していた。
 見慣れた魔物だがかなり数が多い。囲まれると厄介だ。距離を開けながら短い詠唱を済ませると続け様に炎を放った。降り積もった雪が炎に熱せられて瞬間的に蒸発し、煙のような水蒸気が上がる。
 視界が一瞬遮られるが問題はない。魔物の位置は先に把握済みだった。正確に魔物の位置を頭の中で描き距離を取りながら、次の詠唱の時間を稼ぐ。
 雪の中での戦いは独特だ。移動する足音は柔らかない雪に吸い込まれるように完全に消し去されてしまうし、魔物の咆哮や空気を切るように弧を描く刃の音さえも振り続く雪の中に吸い込まれてしまい把握が難しい。それに雪が降り続ける視界は、白く覆われていて魔物を見つけやすいように思わせておいて、その実は動くものを判別し辛くする。
 だが注意していたはずなのに背後からの接近を許すとは不覚としか言いようがなかった。休みなく降り続く雪が張りつめているはずの神経を覆い、その重みで隙間を広げ侵食してくるようだ。
 この国はどうも懐かしさ以外のものが多過ぎて調子が狂いそうになる。あまり嬉しくない考えを苦笑一つで区切りをつけ、戻ってきた刃を素早く連投して魔物との距離を作った。
 戦闘のスタイル上接近戦となると不利は否めない。大技は狙わずに複数相手に休むことなく術を繰り出す。タイミングと先読みが必要だがもう既に慣れた戦い方だ。これでも一応騎士学校では教官として一目置かれていたのだ。生半可な相手ならば一切の接近を許さずに片づけられる自信はあった。
 もっともこの炎の弾幕の中を躊躇いもなく突っ込んでくるような教え子の存在もあるので過信は禁物であろうが。
 と、炸裂する炎を放ったその先に雪煙りが舞ったのを視界の端で捕らえた。
 それが誰の動きを示したものかは考えるまでもない。
 注意を喚起する前に白い雪と同化するような流れが魔物の群れの中央に滑り込んできた。弾ける炎の照り返しで一瞬真っ赤に染まった姿は、すぐさま軽い身のこなしで背後へと回り込む。魔物がその動きを追いかけるよりも早くに、白い影はすっと身を屈めたかと思うと流れるような動作で蹴りを繰り出していた。
 軽いステップを踏んでいるだけの優雅な動きはだが確実に急所を捕らえていて、細身のシルエットの中に隠れた力強い蹴りは剣を抜かずともそれだけで魔物を沈めていく。
 剣士としては決して恵まれた体格という訳ではないにもかかわらず、戦っている姿はそんなことを一切感じさせない。マリクと比べて拳二つほど身長差があるはずだが、迷いのない動きは力強く大きなものに感じられる。
 視線が交錯した。意図をくみ取りすぐさま炎を放つ。真っ直ぐとアスベルに向って。だがその炎がアスベルを焼くことはない。わかっている。寸前で身を躱したその向こうには今にも飛びかかろうとしていた魔物がいたが、炎を正面から浴びる格好になり叩き落された。
 同時に踏み込んできていたアスベルがマリクと交差する。すれ違い位置を入れ替えたその瞬間、白い手の中でずっと抜かれていなかった刀が煌めいた。乱戦の中の抜刀は見惚れるぐらいに型通りの美しさだ。
 十分に重さと威力の乗った一撃は、マリクの体すれすれの位置を閃光のようにすり抜けていく。マリクのすぐ後ろに迫ってきていたもう一匹の魔物が、一刀のもとに斬り伏せられた。短い断末魔すら許さない、貴公子然とした整った容貌からは想像しにくい容赦のない攻撃だ。
「あまり無茶をさせてくれるなよ、アスベル」
「大丈夫ですよ、教官」
「お前の大丈夫はアテにならん」
 わかってはいても心臓に悪い。こういう時の行動に一切の迷いがないのはアスベルらしいといえばアスベルらしいが、一歩タイミングがずれれば惨事になるのだ。
 もちろんマリクの背後に迫っていた魔物が炎の効きにくい種類であることを察し、且つマリクの反応を信用しての行動だったのだろうが、理由はどうあれあまりこちらを巻き込まないで欲しいというのは正直な感想だ。
 ちなみに弟のヒューバートなどは毎度目を吊り上げて改善を要求しているが、それで改まるようなアスベルなら最初から身を省みないような戦い方はしないだろう。言うだけ無駄だとは思うが、変なところで自分の行動に頑固なのは立派に兄弟のようなので、マリクの方に被害が及ばない内は微笑ましい気持ちで見守ることにしていた。
 手元に戻ってきた投刃を構え直して辺りに視線を巡らせる。雪が赤く染まり独特の匂いが漂う中、あれほどいた魔物はもうほとんどが雪の上に伏せているか逃げてしまっていた。だがぴりりと肌に感じる気配が消えていない。まだどこかに潜んでいる。
 一瞬の静寂。
 次の瞬間、甲高い鳴き声と共に地面に黒い影が映った。
「――上かっ!」
 何処に潜んでいたのか人の三倍はあるほどの大きな翼を広げた魔物だった。応戦するように素早く投刃を放ったが、魔物は悠然と身を旋回させてするりと躱すと、標的をマリクから後方にいたシェリアに定めて急降下していった。小さな悲鳴が激しい風きりの音に混ざる。
 態勢を立て直すのが間に合わない。だが拙いと思った瞬間に、
「頼みます、教官」
 短い声と共にアスベルが既に行動に移っていた。
 無茶をするなと喉元まで出かかった言葉は飲み込んで急いで詠唱を紡ぐ。どうせ気をつけろと言ったところで行動に変化がないのは今までで実証済みだ。せめて頼りにされているフォローぐらい務めるのが自分の役目だろう。
 動き難い雪の上でも流れるような動きだった。力強いのにまるで体重を感じさせない。追従するように細かな雪が舞い、その辺りだけ吹雪のように一瞬白く染まると、シェリアの前に滑り込むようにアスベルの体が割り入った。
 魔物とその背に誰かを庇いながら立ち塞がるアスベルの姿。既視感のあり過ぎる光景だ。
 自分の身を当たり前のように盾にして仲間を守る無茶な行動を、この短い旅の間にもいったい何度見てきたことか。そんな行動に移らざるを得ない状況に何度遭遇してきたことか。
 浮かびかけた忸怩たる思いは、実戦中の今には不要だと無理やりに意識の外へと蹴とばした。

| グレイセス | TOP↑

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。