運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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今更欲しいなどと言わない

もうとっくの昔にお前の全ては俺のものだと決まっているから。

ま、そんな訳で昨日のSSのアスベル視点。
文章スキルがあり得ないほど落ち込んでるけど許して欲しい。


 
 欲がない、と誰かがいった。鈍い、とも。
 アスベルはそんな言葉に困った薄い笑みを張りつけて、真っ直ぐと相手を見つめながらどういう意味だ、と柔らかく問い掛ける。そうすれば相手は大抵、やっぱりアスベルだなと、そんなことを言いながら矛先を収めるのだ。そう、それで何も問題ない。どう思われようとも構いはしない。
 欲ならば身を砕きそうなほど強いものが一つ、ある。
 それ以外のものはいらないから、気遣う必要もない。それだけのことだ。
 大切なものは昔からたった一つだけ。何故大切なのだとか、何処が良いのだとか、どうしてだとか、そんなものは無意味な疑問だ。お前は何故東から昇るのだと太陽に問い掛けるほど愚かな問いであり、疑問を挟む余地のない摂理のようなものなのだ。この七年間も変わったことはないし、これからも変わることはないだろう。
 敵意を持って向けられたアスベルと同じ色の双眸でさえ、この想いを欠片ほども揺らしはしない。
 向けられた銃口も、突きつけられた刃も、身を裂いた冷たさも、吐き捨てられた侮蔑も、それがヒューバートからアスベルに向けられたものであるという意味以上の価値はないし、それだけで命の欠片まで差し出すことすら躊躇わないほどの価値があるものだった。
 だがそんなことはわからないだろう、ヒューバートには。
 いいや誰にも、この感情を推し量ることなど出来ないだろう。
 最小限に抑えられた扉の閉まる小さな音が響き、きっかり五秒の間をおいてから遠ざかっていく規則正しい足音が聞こえて、アスベルは笑みを浮かべながらゆっくりと瞼を押し上げた。
 懐かしい自室の天井には何の感慨もわかなかったが、今までここにヒューバートがいたのかと思うと、漂う空気すら甘いものを含んでいるように思えた。香水も石鹸の香もこの場所には含まれていないが、ヒューバートが吐き出した呼吸を受け止めた空気は、確かに独特の香を有しているのが感じられた。
 ゆっくりと身を起こせば傷だらけの体がずくりと膿んだような痛みを伝えてくる。大半は治癒術で癒されてはいるが全ての傷を治す事は出来ないし、痛みまでは完全に取り除くことはできない。暫くは剣を持つのも辛いかもしれないが、そんなことはアスベルにとっては瑣末なことだった。
「ヒューバート……」
 自分の唇を、先ほどヒューバートが触れたのと同じように触れる。
 掠めるように触れただけの指先だったが、そこに込められていたのは隠そうと必死にもがいている熱以外のなにものでもなく、はっきりとした欲の欠片を内包したものだった。そのことにヒューバートは気づいていたのだろうか。きっと気づいている。気づいていながら見ないふりをしている。
「そんなことをしても無駄なのに、な」
 本当に不器用な弟で微笑ましい。
 昔からそうだ。ヒューバートの心は純粋で真っ直ぐで素直なのに、それを上手に現わす術を知らない。もどかしそうに口籠り飲み込んでしまうか、心とは反対のことを強い口調で主張するか、そのどちらかだ。誤魔化そうとする表情が子供の頃の泣き顔から、取り繕った不機嫌そうなものに変わったとしても、根本的には何も変わっていなかった。
 何て愛しい弟だろうか。
 何て素直な弟だろうか。
 お前が心配してくれている兄は、ただ静かに身を屈めて獲物を狙う獣でしかないということなど、忠告してもきっと想像すらできないだろう。もう昔とは違うと口にしながら、いつまでもいつまでも子供の頃の情景を大切にしていることはわかっているから。
 傷以外から発せられる熱を呼吸一つで整えて、アスベルはそっと瞼を下ろした。
 七年間待ったのだから、この触れ合えない距離すら今は愛しく思える。

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