運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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全てお前のものだと何故信じないのか

アスヒュな雰囲気のヒュアスが好きです。
ヘタレ攻め弟×男前すべて受け入れ兄、が大好物。
何だかレイユリの時と同じことを言ってますね。
ちなみにヤンデル兎×拒絶虎が好きです。たいばにです。

続きはそんな自己満足な弟兄。
つくづく雰囲気だけのSSだなと思う訳ですよ。


 
 音をたてないように扉を開けて覗きこみ、ベッドの上の人物が軽い寝息を立てていることを確認すると、ヒューバートは静かにけれど素早く体を室内に滑り込ませた。
 扉の閉まる小さな音が響く室内の半分はヒューバートの記憶の中とまったく変わっておらず、いやが上にも懐かしい気持ちにさせられる。手前の机には子供の頃に読んでいた本もそのまま並べられていて、奥の机は記憶通り色々と散らかっていてあの時から時間が止まっているようだ。
 埃一つない机は、今の時間を酷く曖昧にしてしまいそうだった。あの時のまま、あの瞬間から、もう一度やり直せるのではないかという角砂糖よりも甘くて脆い期待を本気にしてしまいそうになる。そんなことを望む時間はもうとっくに終わってしまっているというのに。
 ベッドの脇に立ち眠ったままのアスベルの顔を覗き込む。
 寝息は規則正しいものの顔色はまだ青白いような気がした。ヒューバートを庇ってリチャードのあの人間離れした攻撃を受け止めたのだ。状況的にはよくこの程度のけがで済んだものだと感心してしまうほどだ。
 白い服を血で真っ赤に染めながら、それでもヒューバートの前から動こうとしなかった背中を思い出せば心臓の奥を掻き毟られるように痛くて、爪を立てるようにして手をぎゅっと握りしめる。このまま皮を突き破り血が滲むほどに爪を食い込ませれば少しぐらいは自分の中でどろどろになった感情を少しは薄めることができるのだろうが、それが何の役に立つのだと冷ややかな自分の理性が嘲笑を投げかけてきて、結局は爪の痕を残しただけで力を抜いた。
「なぜ、当たり前だというんですか……」
 拒絶したのは自分の方なのに。再会したアスベルを拒絶し、否定し、そして感情のままに屈辱を与えて追い出したのはヒューバートなのに。
 再びラントの地を訪れたアスベルは、まるで演技でもしているのかと疑いたくなるほどず真っ直ぐと自分を見て言葉をかけてきた。むしろいっそ、ヒューバートをはめるために偽りの態度と言葉であったのならば、やはりそうだったのだと自分は七年間溜めていた感情を再確認して保てたものを。
 どれだけヒューバートが拒絶し疑い否定してもアスベルの空色の双眸は痛みを映す事はあっても曇ることはなくて、見つめられるだけでどれだけ自分だけが汚れてしまったのかを突きつけられているような気持ちにさせられた。
 信じていると、大切な弟だと、言葉だけでなく態度で示されるその真っ直ぐで淀みないものは、今のヒューバートには鋭い刃を素手で掴むのと同義だ。手紙が届かなかったのはお互いなのに、その上ヒューバートは先日実際の刃まで向けたというのに、何故まだ信じられるのか。
 ストラタでヒューバートは、三度目の手紙は書かずにそっと破り捨ててしまった。もう自分は必要とされていないのだと。だが同じく返事のなかったアスベルは、ラントに戻る直前まで騎士学校で書いていたという。少しも疑うことなく。子供の頃に同じだと思っていた気持ちは、いったい何処で変わってしまったのか。
「……兄さんが、悪いんです」
 ヒューバートは変わらざるを得なかった。見知らぬ土地で厳しい養父の元、自分が生きていくためにはラントを捨てて強くなるしかなかった。だから手にしていた全てを憎んだ。自分から捨てるために。
 それなのにアスベルは変わらない。変わった部分も多くあるが、少なくともヒューバートに向ける眼差しはあの頃と同じで、自分が捨てて踏みにじってしまったものを空色の双眸は未だにヒューバートの中に見ていて、その無条件の信頼は居た堪れなさと居心地の悪さを時間ごとに増幅させる。
 指先でアスベルの唇に軽く触れ、その指で自分の唇をなぞった。
 甘くて苦いものが口中に広がる。
 もっと変わっていてくれれば良かったのだ。自分のことなど忘れていてくれれば良かったのだ。もしくはヒューバートが疑ったように、ラントを追い出したことを恨んで復讐をしに来てくれればよかったのだ。そうすれば自分も後ろめたさを抱えることなく刃を向けることができた。
 愛しい兄を葬ることができたのに。
 愛しい兄に葬られることができたのに。
 それを許してくれない貴方は、
「貴方は本当に、酷い人だ――」
 かごいっぱいのキャンディーを抱えて甘い匂いを漂わせているのに、ヒューバートの好きな味だけを忘れてきて、それに気づかず笑顔で差し出しているかのようだ。
 顔を近づけてけれど唇には触れず、手を伸ばしけれど首には触れず、奪いたい衝動は短く息を止めて体の内側で噛み砕いて、長い長い溜息と共に吐き出した。今ならば、一度だけならば、全てを手に入れることができるのだろうけれども、そしてそれを渇望する自分がいるのだけれども、静かに上下する少し肌蹴た胸元も静かに受け入れてくれそうな気がしたが、薄いカーテンが間に下ろされているかのように直接触れることは出来なかった。
 息を飲み込んで離れ、ヒューバートは足早に部屋を出た。だから、
「――――臆病なところ、かわってないな」
 天井を見上げながらぽつりと呟かれた言葉を聞く者はいなかった。

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