運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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昔の影をずっと追い求めて、

けれど昔の影から目を逸らす。
もう、自分は昔と違うことを嫌というほどに知っているから。
(なのに貴方はあの頃のままそしてあの頃以上に兄である)
(眩しい。目がくらむほどに)
(貴方の光で焼かれてしまいたいと願う。貴方の光を消し去ってしまいたいと怯えてしまう)

ヒュアス。
ちょっとほもを思い出そうと書いてますがやっぱり乗り切れない。
その内ちゃんと書きなおしたいなぁと思いつつUPります。


 
 澄んだ晴れの空をそのまま切り取ったような瞳と、夕日にかざしたアメジストのような瞳が、ヒューバートを中心に捕らえながらゆっくりと瞬きをした。
「――ヒューバート?」
 大きな双眸は実年齢以上に幼さを残したままで、成長した今でも子供の頃の表情豊かなあの頃を思い起こさせる。だが不思議そうにヒューバートを見返してくる表情は柔らかく笑っていたがやはり昔とは違っていて、そんな笑い方をさせてしまう一端を自分も担ってしまったのだと思うと、鉛のような痛みが肺を満たしていくようだった。
 そんな表情が見たい訳ではない。
 そんな表情をさせたい訳ではない。
 けれどそんなことを言えばもっと曇らせてしまうであろうことはわかっているから、ヒューバートとしてはその変質に気づかないふりをし続けなければならない。この兄は、自分が傷つくことには微塵たりとも頓着しないくせに、というか自分が傷ついていることに酷く鈍感で気づかないこともあるくせに、人が傷つくことを極端なほどに敏感で嫌がるのだ。
 特に身近なものが傷つくことは、その身をどれだけ捧げることも厭わず盾になろうとする。堪ったものではない。ヒューバートは自分が兄にとって最も近しい存在の一つだと知っていた。ヒューバートが傷つけば、その何十倍もこの兄は誰にも言わず、もしかしたら自分でさえも気づかずに苦しむのだ。
 自惚れでも誇張でもなく、一方的に兄を恨んでいた時や双銃を向けた時でさえ、そのことを疑ったことは一度もない。だからこそ、ヒューバートは傷つく訳にはいかないし、そんな思いを抱いていることなど欠片も悟らせる訳にはいかないのだ。
 真っ直ぐと見つめてきて柔和に表情を崩していても、決して一点の疑いも濁りもない昔の天真爛漫な表情にはならないことを、嘆く資格など自分はもう手放してしまっているのだから。
 手を伸ばして頬に触れた。
 逃げることも身構えることもせずに、肌をなでる指を受け入れる。滑らかな肌は先ほどまで外気に当たっていたせいか冷たい。
「――振り払わないんですか?」
「振り払う? 俺が? どうしてだ?」
「こんな状況だとそうするのが普通でしょ」
 つい口調が非難がましいものになった。だがアスベルはよくわからないといった表情で首を少し傾げただけで、やはり動こうともしなかった。振り払うこともしなければ抵抗もない。アスベルは今、二人部屋の宿のベッドに押し倒され、ヒューバート圧し掛かられているというのに。
 自由に動けぬように体重をかけられて、片手は指が食い込むほどの強さで肩を掴みシーツへと押し付けているのに、まるでそんなことは当たり前だとでもいうような表情だ。
「お前はどうなんだ、ヒューバート」
「……。僕が、なんだというんですか」
「お前は俺を振り払いたいのか?」
「……」
 まるでラントからヒューバートが追い出した時のように身を切るような気配が伝わってくるのに、問いかけてくる表情は少し困ったように微笑む最近見慣れてしまった表情で、悔しくなって唇を噛みしめる。
 辛いなら言えばいいのに。苦しいなら吐き出せばいいのに。亡き父親の想いを知った時のように声を上げ涙も拭わず感情のままに吐き出せばいいものを何故そうしない。身勝手に非難したくなる。何故ヒューバートに向けて、その抱えているものを叩きつけてくれないのかと。
 決してヒューバートには向けないとわかっているからこそ、思ってしまう。
「――兄さん」
「ん?」
 遠い。近いが故に遠い。
 本質が変わっていないことはわかっている。アスベルはヒューバートに対しては子供の頃からいつでも兄で、多くの無茶で泣かされはしたけれど、怪我をしたり父親に怒られたり迷子になった時も、決してヒューバートの前では泣きごと一つ言わずに笑っていた。
 そこに少し、複雑で重いものが加わっただけなのだ。
 だがそれゆえにヒューバートでは、あの頃のような笑顔を引き出す事がもう出来ない。
「僕が何を考えているのかわかりますか」
「なんとなくはな」
「本当にですか?」
「お前は俺の弟だから――」
 そんな言葉は迷いなく力強くて。今にも消えそうな微笑と対照的で。
 無言のまま唇を重ね、股を開かせるように膝を間に割り入れても、抵抗もなければ表情も変わらなかった。色違いの澄んだ双眸が、優しい眼差しを湛えたままに、ヒューバートの戸惑いを含んだ顔を静かに映しているだけだ。
 儚げなのに、揺るぎなさを湛えたまま。
「僕がこれから何をしようとしているのかわかっているのですか」
「そういう言い方、お前らしいなぁ」
「……」
「お前は時々難しいことを言うから、俺がどれだけ正しくわかってやれているのかはわからないけど、」
 手が持ち上がり指先がヒューバートの胸元をとらえる。
 そこには押し返すような力はこもってなくて、ぴたりと手のひらで包むように押し当てられていた。ヒューバートよりも少し短い指で、でも少し関節は太くて手の平の厚みがあって、そして僅かに体温が低い。
 記憶から繋がる自分の良く知る兄の姿と、だが確実に離れていた七年間を過ごしてきた兄の姿とが重なり合って、眼の前のアスベルの姿が酷く曖昧になるようだった。
「――僕が、」
 消えてしまうような気がして手を強く握る。
「僕が兄さんを守れば、兄さんは……昔のように笑ってくれます、か」
「はは……。ソフィに守られて、お前にも守られるのか? すごく情けないなぁ、俺」
 苦笑と共に呟かれたが、その表情は今まで見せていた微笑よりも心からの笑顔に見えた。
 自分を見ているはずの瞳が何故かヒューバートを見ていないように感じられて、今触れ合っているのにひどく遠くにいるように思えて、ヒューバートは広がる苦い胸の痛みにアスベルから手を離した。受け入れられているのがわかるからこそ、離さざるを得なかった。
 アスベルはヒューバートの手が離れてもそのままの姿勢を崩さず、視線を動かすこともなくそっと瞼を下した。
 それはとても穏やかで優しい表情だったのに、どうしても近づけないものがそこに存在している気がした。昔と同じはずなのに確実に昔と違って、昔と違うと断ち切ろうとすれば蜃気楼のように見えてくる昔と同じ姿。
「……兄さ、ん」
 見えなくなった双眸に、今だけは昔と違ってしまった紫紺でもいいから自分に向けて欲しいと切実に願ったが、それに応えるようにアスベルの瞼が震えると、最後まで見ていられなくてそっと視線をそらした。
 きっと自分の願いは叶う、そのことが妙に怖く感じられた。


昔のように笑っていて欲しいけど、そんな兄に自分は不似合いで。
ならば変わってしまった兄ならば自分に近いのかといえば、それもやはり違って。
自分が願えば100%叶うとわかっているからこそ、怖い。

貴方が欲しい。でも差し出してくれる貴方に、本当の貴方の心は存在しているのですか?
でもその問いの答えはきっと僕の中にも貴方の中にも見つからない。

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