運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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目覚めの前

ラムアスで目覚めるちょっと前。
何だかいろいろ失敗したけどまぁUPっておく。


 
 まただ、と思ってラムダは意識を外へと向けた。
 自分の中の温度が塗り替えられるような居心地の悪い感覚。それなのに不快感を抱かない感覚。いつしか慣れてしまって違和感がなくなってきてしまっている感覚。
 ふわりと温かなものに包まれているような気配が広がり、冷たくモノクロな自分の世界に温度と色が添えられていくようだ。
 惜しげもなく、飽きることなく、繰り返し降り注がれてくる気配。拒否しても無視をしても変わることなく伝わってくる、愚かな男のくだらない気配。それなのに馬鹿馬鹿しいと繰り返しながらも完全に遮断してしまうことも出来ず、ただそれが鬱陶しいぐらい頻繁に自分に向けられるのを享受してしまっている。
「――きれい、だろ」
 返事を待っていない言葉が呟かれる。
 この愚か者の視線の先には菫色の髪をなびかせた少女が花畑で楽しげにしていたが、声はそれに向けたものではなかった。一人つぶやく、けれど独り言ではない囁きかけるような帯びた声。
 柔らかで包み込むようなそれが、慈しみとか愛しさとか親愛とか称されるたぐいの感情だと気付かされたのは何度目の時だったか。その時は酔狂なことをしていると、自己満足もここまでくれば立派なものだと聞き流していたものだが、それが毎日のように続くと小さな温かさが少しずつ手の届かないところにつもっていって、自身では制御の難しいものを生み出してくる。
 こんなものはとうの昔に絶望して背を向けたはずのものなのに。
 けれどあの時気の迷いで期待してしまったものでもあって。
 この温もりと声音に反応する言葉を自分は持っていないのだと思い知らされる。そう、拒絶でも拒否でもなくて、この声に応じる言葉を自分は持っていないのだと、愚かな温かさに包まれながらくだらないと背を向けているものの存在を知らしめられる。
「ソフィと初めて会った場所で、リチャード友情の誓いをした場所で、俺にとっては特別で大切な場所なんだ。ソフィもここが大好きだってよくここに来るんだ。だからお前も気に入ってくれたら、嬉しいな」
 嘘偽りのない嬉しそうな気配が伝わってくる。
 自分のことではなくて、他人のことで、何故こうものん気に幸せを感じているのか。何の利益もないことに嬉しいと感じるのか。大切なものなど弱みにしか過ぎない。しかもいつ自分を乗っ取るともしれない人外の存在に対して、何もかもを曝け出すように話しかけるのは愚の骨頂だ。
 目覚めたラムダがアスベルを絶望させるために大切なものを奪うとなぜ考えない。守ろうとしているものを壊すとなぜ思い至らない。弱みに付け込み体を支配するかもしれないとなぜ疑わない。ただ力を蓄える為だけに今休んでいるのだと、ラムダが自身に害を及ぼすかもしれないと、何故そんな想像しやすいことを少しも不安に感じない。
 愚かな男だ。
 投げつけてやろうとした言葉は、弱まった力では呻きのような音にすらならなかった。力をほとんど失った状態では、寄生している相手の思考に割り込むことすらできないらしい。
 だが呼応するようにアスベルの手が胸元に押し当てられた。偶然だとはわかってる。それなのにあの時のようにぎゅっと体を抱きかかえられたような錯覚が感覚から離れなかった。
「いつかお前とソフィと俺でここで色々な話をしよう。嬉しいことと楽しいこととか驚いたこととか、哀しかったことやつらかったことも。たくさん――話す事がなくなるまでたくさん、話をしよう」
 聞こえている訳ではない。ラムダの気配に気づいている訳でもない。それなのに優しく語りかけるように囁く声。包み込むような言葉。抱きしめるような手。
 愚かだ。
 愚かでのん気で、どうしようもない馬鹿だ。
 だがその声が心地良いなど、もっと愚かなことだ。
「お前に見せたいものも、お前と話したいことも、たくさんあるんだ。だから、」
 お前の目覚めをずっと待ってる。
 それに応える言葉もすべも今はないから、愚かなことだと罵倒してやる力も足りないから、くだらない戯言を子守唄のようにして深い眠りの中にもう一度沈むにまかせた。

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