運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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あの頃のままではいられない

ヒュー合流後、フェンデル潜入時ぐらい。
ヒュアス。
ラムアスはラブラブだけど、ヒュアスは近づけないのが良いと思う。


 
 美しいと、そう感じてしまった。
 そんなことを思うつもりも資格も自分にはないというのに。
 巨体の魔物に対して躊躇なくフロントステップで距離を詰める、白い雪の中でも燃えるように赤く揺れる赤い髪。身に纏っている白い服のせいで雪原の中に消え入りそうな背中なのに、人目を引く鮮やかで温かそうな髪だけは嫌に鮮明に視界の中で踊る。
 ヒューバートとは対照的な色合いだ。同じ血を引いているはずなのに、瞳は驚くほど同じ色合いを有しているというのに、髪だけは境遇を示すように全く繋がりを感じさせない。
 身軽な身のこなしは変則性に富んでいて、けれど何処か凛とした演武のような様式美も備わっている。騎士学校での七年などお遊びのようなものだと断じたが、それでもこの兄は己の強さを磨くことにひたむきに勤めていたのだろう。そこには数多繰り返された訓練で体に覚え込ませた迷うことのない流れるような動きと、揺るぎのない力強さがあった。
 ヒューバートとラントで剣を交えた時とは全く違う姿だ。
 あの時は瞳も剣捌きも迷いで彩られていて、苛立ちしか感じなかった。自分を捨てたはずなのに昔と変わらぬ笑顔を見せることに、手を振り払われることなど想像もしていなかった瞳に、ヒューバートに剣を向けることを頑なに拒む姿に、嘲笑とも侮蔑とも落胆とも嫌悪とも表現し難い感情ばかりが沸き起こってきて、一秒でも早くその顔を自分の見えないところに追いやってしまいたいと願ったのだ。
 それがラントにとって一番必要で、自分はただ忠実にそれを実行しているにすぎないと、誰に言う必要もない言い訳を心の中で繰り返しながら。
 あの時立ち去って行った背は酷く小さくて弱々しく、記憶の中のどの映像とも繋がらなくて、長年積もらせた恨みを少しでもわからせてやることができたと自分自身に言い聞かせながら、何故か心が一層軋むのを止められなかった。
 自分勝手なのは承知だ。そして恐らくそうやって手酷く扱ったとしても、生まれた時から自然に兄である彼がヒューバートを本気で厭うことはないと心のどこかで信じていた自分もいたのだ。リチャードの攻撃からヒューバートを守るように動いたアスベルに驚きはなく、昔と変わらないなと思ってしまった自分は随分と卑怯なのだろう。
 赤い髪が魔物を翻弄するように小刻みに跳ねる。白い服に身を包んだ体は騎士と呼ぶには細身で、懐に飛び込みながら戦う姿はどこか危うさを感じてしまう。だがその動きは鋭く力強く、体を捻り様々な体勢から自在な攻撃を仕掛ける流れるような動きは、あの体型から繰り出しているとは思えないほど重い一撃を繰り出していた。打ち合えばアスベルの方が吹き飛ばされそうに見える相手でも、強靭な足腰と絶妙にコントロールされた体捌きで、いとも容易く翻弄し反対に吹き飛ばしてしまう。
 綺麗に重心を安定させた細い体から繰り出される多彩な攻撃。乱戦になってしまっているからか、剣を抜かずに体術だけで畳みかけるように攻撃を積み重ね、懐に深く組み込んだ瞬間に抜刀してとどめを刺す。雪の中で閃光のような煌めきが走る瞬間は、戦いの中で時間を忘れて見惚れてし舞いそうになる鮮烈さだ。
 ヒューバートと対峙した時とまったく違う鋭さだった。それは迷いがないからか、それとも相手がヒューバートでないからか、その問いに自己満足な希望はあっても明確な解答は得られない。口にすればアスベルは本当に戸惑ったように曖昧な笑みを浮かべ、そんなんじゃないさと、何に対しての言葉か不明瞭なまま呟くのだろう。どう答えればヒューバートを傷つけないか、そんなことだけを考えながら。
 鮮やかな赤が僅かに沈み込んだ。
 反対にヒューバートは急速に意識を浮上させ、双銃をクロスさせながら構え直した。
 強烈な一撃をバックステップでかわすアスベルに向って躊躇いなく引き金を引く。弾けた銃弾は地面を穿ち、寸前で左へと避けたアスベルの服の裾を掠めるようにして兆弾し、魔物の胸元へと炸裂した。
 手を緩めずに連続で玉を叩きこむと、魔物の体が僅かによろける。その一瞬の隙を逃さずに、背後へと回った白い影が下から叩き上げるようにして白刃を閃かせた。まだ銃弾が弾けている最中なのに、ヒューバートの腕を信じているのか躱す自信があるのか、その踏み込みに迷いも躊躇いもない。慌てて引き金から指を離した時には、既に魔物の体を地面へと倒れ込む寸前だった。
 倒れ込んだ巨体で雪煙が舞う。白く染まった視界にアスベルの姿が一瞬掻き消え、すぐに赤い髪が無事であることを証明する。くるりと半回転した刃が流れるように鞘の中へと吸い込まれ、一瞬静止してからの納刀。ここが生身の戦いの場であることを忘れそうになってしまうほど清廉とした空気に息を飲み、だがすぐに大きく吐き出した。
「何を考えているんですか!」
「ん? ヒューバート、怪我はないか?」
「それはこちらの台詞です。僕の攻撃に割って入るなど正気ですか、貴方は」
 魔物を吹き飛ばすほどの威力はあるのだ。人一人の体を破壊するには十分な威力がある。それに剣とは違い一度放たれてしまった後は止めることも軌道を修正することも出来ないのだ。もちろん狙いを定めているから魔物以外を打ちぬくことなどあり得ないが、それでも身を躍らせるなど正気の行動ではない。
 八つ当たり気味なことを自覚しながらも苛立ちを込めて声を荒げたが、アスベルはその苛立ちの正体をまったく理解できないというように不思議そうな表情を浮かべたまま、頭を掻きながら首を右に傾けてはにかむように笑った。
「俺のこと心配してくれたのか。ありがとう」
「な! ――そんなことを言っているのではありません!」
「だったら何だ?」
「そんなこと――」
 少しは自分の身を案じて下さいと言いかけた言葉は、素直になれぬ感情に喉の奥で押し止められてしまった。
 今更な台詞だそんなものは。この武器をアスベルに向けて傷つけたのは他でもないヒューバートだ。本気になりきれないアスベルに向って容赦なく突きつけ、多くのいい訳で自分を塗り固めてその身を傷つけ、一番心を抉るであろう言葉を突き立てて追い払ったのだから。
 今になって心配を口にしたところでとんだ茶番だ。
「俺は大丈夫だよ」
「何を、根拠に」
「お前の腕は信用してるし、それにわかるだろ呼吸で。兄弟なんだから」
「…………」
 そんなことは何の保障にもならない。
 なのにアスベルは兄弟だからと、そんな甘くて拙い言葉で全てを肯定してしまう。ラントで刻んだ傷は心身ともに深いものだったはずなのに、そのことについては一言も言及することなく、ただヒューバートの身を案じて当たり前のように信用する。
 変わらない。幼いあの頃と何も変わらない真っ直ぐな心根。世間知らずでヘドが出そうなほど甘い考え。なのに、何処かで安心している自分がいる。
「大丈夫だよヒューバート」
「――――」
「誰かを守れるなら傷なんか大した問題じゃない。いずれ癒えるんだ。それで失わずに済むなら――俺は、」
 言葉の最後は独白に近い響きで、酷く脆いものが覗いたような気がした。だがそれを確かめようと口を開きかけた時にはアスベルらしくないそんな気配は霧散していて、いつもの能天気にしか見えない柔らかな笑みを浮かべていた。
 スカイブルーの双眸が真っ直ぐとヒューバートを捕らえながら眇められる。同じ色だと言われる瞳の色。けれどヒューバートのものよりも温かみがあるように思えた。同じ空の色だとしてもアスベルのものは春を迎えた空の色で、ヒューバートのものは秋が終わろうとしている空の色だ。同じ空でも、同じ色でも、称えている印象がまるで違う。
「さぁ、先を急ごう、ヒューバート」
「……」
「ほら教官たちももう先に行ってるぞ」
 立ち止まったままのヒューバートに当たり前のように差し出された手。その手を振り払い傷つけたのは他でもない自分なのに、躊躇うことなく差し出される。今もしこの手を振り払っても、きっとまた次の戦闘後には同じように差し出されるのだろう。馬鹿みたいに何度も。苛立つほど真っ直ぐと。
 本当は望んでしまっている心にヒューバートが屈してしまうまで、幾度でも。
「子供扱いしないでください」
 差し出された手を当たり前のように掴んでいた子供の頃。それが差し出されないことなど、その手を自分が掴まないことなど、一度も想像したこともなかったあの頃。あの頃と同じように差し出される手。あの頃と違って掴み返せない自分。
「……そうか。じゃぁ行くか」
 宙に浮かんでいた手は空気だけを掴んで下ろされた。
 昔とは違う、少し言葉を飲み込んだような笑みと共に。
 向けられた背中は自分よりも少しだけ肩が高くて、ぴんとした背筋も足取りも力強く迷いのないものなのに、何故か今にも膝をつきそうな脆さを感じて胸が痛んだ。あの後、ラントを出たあの後、自分の知らないところで膝を折り崩れていたのかもしれないと想像して、冷たいフェンデルの空気がに突き刺さるようだった。
 それなのに痛む胸がそのままに、その背を美しいと思ってしまった。戦闘時に見せた力強い美しさとは対照的な、触れるだけで割れてしまう薄氷のように脆そうなその背に、薄暗い愉悦を伴った感情が込み上げる。ラントで自分が兄を追い出したあの時の、力なく項垂れて言葉を失ったアスベルの晒された細い首筋を思い出してしまい、言葉にすることの許されない湿った感覚が広がった。
 兄は、アスベルは、自分のことで心を痛めている。これ以上失いたくないと願い、けれどいつも通りにする以外に術を知らなくて、そうして昔と変わらないままに昔と違う表情を浮かべて見せる。ただヒューバートだけに向けて。
 落ちてきていない眼鏡を形だけ掛け直して、アスベルと三歩分の距離をあけてついて行った。それは昔よりも離れた位置だったが、昔よりも別の意味で近い距離のように思えた。


ヒューバートもアスベルも微妙に病んでいるように見えますが、
病んでませんよ悩んでるだけです本当です(言い訳)。
ヒュアスは完全に和解するまでがおいしいよね!
アスベルさんはヒューバートに含むところはないけど、
やっぱりラントでの拒絶を内心では引き摺っていたら萌える。

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