運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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ここにいる

未来編のボス撃破後のシーンを少し。
あのシーン、はぁはぁせざるをえないよね!

ラムダは本当にいいツンデレ。
ちょっと何書くつもりか迷走したけど取り敢えずUP。
ラムアスは口は悪いけどラブラブだよね。


 
「頼む、ラムダ!」
 凛と澄んだ揺るぎない声と共に世界が広がった気がした。
 支配を受け入れる声。否――支配を促す愚かな男の声だ。
 人の身を支配するなど簡単だ。人の精神を支配するなど簡単だ。人は脆く弱く隙だらけで、身の内からじわりと力を染み込ませるだけでそれほど労せずしてその全てを支配することができる。抵抗など無意味だ。例え抗おうとも人がそれほど強固に拒み続けることなど所詮不可能で、誤差の範囲の時間差しかない。
 今までラムダがそれを実行してこなかったのは失った力が大きくてほとんど眠っていたからだ。目覚めても今まで何もしなかったのは必死に足掻く様を見ていただけのことだ。本気になれば許可されるまでもなく容易いことだったのだ。
 その気になればこのアスベルという男を簡単に乗っ取ってしまえる。それは事実だ。それだというのにこの男はいくらその事実を指摘してもラムダに対して恐れを抱くことなく、精神の境界は常に穏やかで拒絶の色合いが浮かぶことはなかった。
 ずっと静かにラムダを抱えていた。自身に身の危険が及んだ時も、ラムダが内から語りかけた時も、プロトスヘイスのことで悩んでいる時も、体をラムダに一時明け渡すと決めた時も、そして今このぎりぎりの状況下でも。ラムダを恐れることもなければ警戒することもなく、そして受け入れることに躊躇いもない。
 信じていると。世界を滅ぼそうとしたラムダを信じていると。自身を蝕むラムダを信じていると。自分の力の及ばぬことを理解しているくせに、全てを委ねることを恐れないと。
 愚かだ。この男はあまりにも愚かだ。
 ラムダとアスベルを隔てていた精神の境界が急速に薄まり拡散していくのがわかった。
 二つの意識が混ざり合い融合しラムダの支配下に全てが治まっていく。慣れた支配する感覚。ラムダが全てを飲み込んでいく感覚。全てを自分のものへと奪っていく過程。だが、いつもとは違う流れだった。
 支配する時にラムダは相手の精神を侵食していき、境界を壊し相手の中へと流れ込んで満たし染め変えていくのが常だ。相手を自分へと作り変えていくのだ。だが今は違う。アスベルの精神が広がってラムダを包み込むようにして満たし、自らラムダの意識下へと滑りこんでくるのだ。
 飲み込むのではなく流れ込んでくる意識。
 奪うのではなく満たされる感覚。
 侵食するのではなく招き入れられる温もり。
 ――くだらぬ
 ざわざわと揺れる不可解な自身の感覚を振り払うように呟くと、急速に広がった世界を自分の意識で埋め尽くす。全ての精神が、肉体が、一気に余すことなく自分の支配下に入ったのが確認するまでもなくわかった。
 抵抗も乱れも一切ない。全てがラムダのものだ。この愚かな男の意識は何処にも見当たらない。それなのに常に付きまとうはずの一人きりになった感覚は何故かやって来ない。全てを飲み込んだのはラムダのはずなのに、温かな手がずっとラムダを繋ぎ止めているような、温かな腕がずっとラムダを抱きしめてくれているような、慣れないくすぐったい感覚が付きまとっていた。
 だがそんな浮かんできた感覚を振り払うように瞳を開けた。自分の意識で、この体の瞼を押し上げた。
 抵抗なく動く体。乗っ取るというよりも生まれ変わったかのような、清々しいまでの一体感と開放感。だがそれと同時に少しだけ胸の端を占める、寂しいような物足りなさ。
 それらが何かを確認することはせず身の内の力を最大限に放出する。この男の願いを叶えてやるために。
 ――愚かだな
 易々と体を奪わせるとは愚かな男だ。敵であった身を信じるなど愚かな男だ。全てが上手くいっても自身に及ぶ危険が残るというのに躊躇わぬとは愚かな男だ。捨て身ではなく成功すると本気で信じているとは愚かな男だ。絶好のこの機会を得て尚、素直に体を返すと心底信じているとは愚か過ぎる男だ。
 そしてその男の願いを叶えてやろうとする身もまた、呆れるぐらいに愚かなことだ。
 砕け散りそうな力の奔流の中でラムダは小さく笑った。
 
 
「ありがとな」
「……お前ほど愚かな男は知らぬ」
 聞こえているかどうか不安に思いながらも声をかければ、案外すんなりとラムダの声が返ってきて安心した。だが隠す気のない不満が込められていて、アスベルは少し戸惑い顎を掴みながら首を右へと傾ける。
「怒っているのか?」
「身に覚えがあるのならそうであろう」
「お前なら大丈夫だと思ったんだよ」
「その自信が何処から来るのか……呆れるな。まぁいい。せいぜい我に感謝するのだな」
「してるさ」
 心底からそう答えたのに、のん気なものだと、溜息交じりの言葉が返ってきた。ただの気のせいなのだろうが、ラムダが溜息をつくとそのくすぶった呼吸が胸の辺りをなでるようで、少しくすぐったい気持になる。手の平を左胸の辺りにそっと重ねたのは、その辺りにラムダが存在しているような気がしたからだ。
 実際は精神の内側に存在していて実態などはないのだと聞かされたが、彼が存在しているとしたらそこしかないと思っていた。欠けては生きていけないその中心に、休むことのない鼓動に合わせて存在しているのだとアスベルは信じている。
 半年前までは手を取り合うことはおろか意識することもなかったというのに、今では自分の中にラムダがいない状況など想像することも出来なかった。半年前までは一体その空白に自分は何を抱えていたのかと不思議に思ってしまうほどに自然に受け入れている。言葉や気配が返って来ずとも、ふと覗いた鏡の向こうに紫に染まった自身の左目を見つければそれだけで満たされるような気がするのだ。
「お前がいたから俺は今こうして生きていられる。感謝していない訳がないだろ。それに今だってお前が……守ってくれているんだろ」
「……何のことだ」
「俺の体。いくらお前に同化されていてもこの体に影響は免れないって言ってただろ? でも今何もないってことは、お前が何かしてくれているんじゃないのか」
「くだらぬことを……。何かあれば我にとっても不都合であるというだけだ」
 不機嫌な響きの肯定はきっと照れ隠しだ。
 少し嬉しくなって微笑めば、へらへらと笑うなとさらに不機嫌さを増した声が返ってきた。だがその声を温かいと感じるのは、決しておかしな感覚ではないと思うのだ。
 ラムダが自分の意思でアスベルに力を貸してくれた時のように、自分の意思でアスベルだけでなく仲間も守ってくれた時のように、そしてラムダ自身にも負担があるにもかかわらずフォドラで力を貸してくれた時のように、とても優しくて心地良い響きに包まれている。
「今度は俺がお前に借りを返さないといけないな」
「ふん……。人の身で出来ると?」
「どうかな。お前に何を返せるか、これから一緒に考えていかないとな」
「何故我が考えねばならぬ」
「だってお前のことだ。何か希望があるだろ」
 世界をラムダに見せるといったがそれはアスベルの願いで、せっかくこうして共存し言葉を交わす事の出来る状態にあるのだ、一方的なものではなく一緒に探していきたいと思うのだ。
「我にはすることがある。勝手にすればいい」
「そんなこと言うなよラムダ。お前がいるのに放っておかれたら俺も寂しいじゃないか」
「……くだらぬことを」
 呆れたように声が返ってくるが完全な否定は感じられなかった。
 そういえばラムダから拒絶を感じたのは言葉を交わした最初の頃だけで、あの時も完全なものではなかったように思う。
「すぐには決められないかな。――じゃぁ次までには考えておいてくれよ」
「……。それ、はなんだ」
「ん? 指切りだよ。約束する時にはこれだろ」
「馬鹿にするな。そのようなこと子供しかせぬ行動だ」
「そうか? 俺は普通にソフィともするぞ」
 指先を差し出してみても今この場にラムダの姿はないが、そのまま小指を折り曲げてここに存在しないラムダの指と絡めるようにする。窓に映ったアスベルの姿は宙で指を折り曲げているだけだが、アスベルには指先にラムダが存在しているような温かさが感じられる気がした。
 視線を上げれば空を映した色と紫電を飲み込んだ色が並んでいる。声しか聞こえないラムダが確かにアスベルの中に存在していることを示す色だ。体を明け渡した時は両瞳ともアメジスト色に染まっていたと後で皆に聞いたが、その様子をアスベルも見てみたかったなと少し思った。ラムダがどんな眼差しで世界を見たのか、そこに宿っていた意志を見てみたかったと。
「…………気が向けば、な」
「ありがとうな、ラムダ」
 声に出してそう言えば、くだらぬと、ほとんど口癖のようないつもの台詞が返ってきて、アスベルは窓に映った色の違う瞳を見つめながら笑った。

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