運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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この世界の果てで

死にネタっていうか最期ネタというか。
グレイセスの未来への系譜編をやったらこんな流れもありだよね!
っていうか普通におとずれるよね!と勝手に主張する。

ラムアスだよ。
なんかラムダが可愛過ぎてもうダメだ。
あと、系譜ボス後のアスベルまじ天使で興奮した!!!

もう少し書けたらお仲間探し、するんだ。


 
 長い長い夢を見ていたようだ。
 ベッドの上でそっと自分の手を持ち上げて、胸の前の空間をぎゅっと握る。空気を掴んだ手の平は、もちろんそこに何らかの形あるものを見出した訳ではなかった。ただ脳裏に浮かんだ懐かしくて愛しくて、自分自身よりも身近にあるように感じられるものを、そこに縫い止めておきたいと願っただけだ。
 もしくはそれは、縫い止められたい、という彼の想いが沁み込んできたものかもしれないが、この際その区分は不要で無粋なものだ。どちらが抱いているにしろそれは同種のものであり、そして叶わぬと知っている願いの儚い残滓のようなものなのだから。
「俺、は――――――、ごぼっ」
 誰に問い掛けるでもなく開いた口に、室内を満たす冷たい空気が急速に流れ込んできて思わず咽返った。十分注意してゆっくりと口を開いたはずなのに、どうやら思っている以上に体は負担に耐えかねているらしい。
 仰向けの姿勢で見慣れ過ぎた天井を一瞥して、視線だけを左隣へと向けた。散らかり放題だった机の上は既に綺麗に整えていて、子供の頃の面影はもうない。意外に掃除好きだと自分で気付いたアスベルが整理して以来、あの机の上にものが出しっぱなしになったことはなかった。整理し終わった机を見てすっきりと気持ちが良かったような、けれど何処となく寂しいような、そんな感覚を味わったことすら今は懐かしい。
 今はその上に大きな半球体の水槽が置かれていて、真っ赤なハスの花が浮いている。ラムダのコアと同じ色合いだと言ったのはソフィだ。深い眠りの中にあり、あまり表に出てこないラムダを、彼女なりに気遣った故の選択だろう。もっとも本来の役目は室内の湿度を保つために水をたたえられているものなのだが、それはごく瑣末なことだ。
「……は、ぁ」
 そうやって気遣いをさせてしまうほどには、今アスベルの体は環境の変化に弱くなっていた。
 わかっている。これは仕方のないことだ。誰しも年を取るし、加齢から来る老いに逆らえはしない。寧ろ今まで大きなけがや病気をせずにここまで生きてこれて、ゆったりと不可逆的な老いを実感出来るような環境にいる、その得難い状況をこそ感謝するべきなのだろう。限りある命をその限りの果てまで過ごしてこれた自分は、これ以上ないほどに幸せだ。
 それでもふっと胸が締め付けられるような苦みが広がるのは、置いて行かれる哀しみや喪失感を、フェンデルの雪が大地を覆いつくしてしまうかのように、今までいくつも積み重ねて味わってきたからかもしれない。あの哀しみを味合わせずに済むのならば自分はその十倍でも百倍でも苦しいものを背負うものをと切実に願うが、それはどうやっても叶わぬ願いなのだ。
 この手で守りたいものほど、自分はここに置いて行かなければならない。
 この腕で抱きしめていたいものほど、離れていかなければならない。
 一緒にいたいと願う心を残して、つかんでいる手を自分から離さなければならない。
 時間は僅かしか残されていない。どうすればいいのかなど正しい答えはいまだに見つからない。それでも、もう二度と触れることも声をかけることも出来なくなるというのに、想像もつかない永遠の中に、ただ生きて知って欲しいというアスベルの我儘な願いを叶えるために、彼をここに置いて行かなければならないのだ。
「――――……ラムダ」
 このまま瞼を下ろせば二度と上げることが叶わぬかもしれないという恐怖を飲み込んで、見慣れた天井を視界から閉ざす。アスベルの中に居るラムダとの会話は言葉を口に出さなくてもただ考えることだけで可能で、視界を閉じて二人が初めて向かい合ったあの場所を思い描かなくても問題はないのだが、アスベルは慣れない頃のラムダとの対話の時を思い出すようにそっと目を閉じてあの空間に身をゆだねた。
 小さな瞬きの後に視線を上げれば、そこはもう見慣れた自室ではなかった。
 何処までも広がる静かな湖のような水面と、そこに映し出される雲一つないスカイブルーの果てない空。遠くに視線をやっても水平線のように丸みを帯びた境界面が見えることはなく、あぁここは確かに自分の知っている世界とは違う場所なのだなと、もう幾度目になるかわからない、けれど何処となく楽しい確認をして微笑んだ。
 ここはラムダとアスベルの為だけに用意された世界。ラムダとアスベルが初めて正面から相対した時のままの世界。
 ラムダとアスベルの精神境界だと説明されたが、それならば二人だけの秘密の場所のようだと思ったものだ。二人が、誰にも邪魔されることなく自然にいられる場所が、ここだと。そうラムダの伝えた時のラムダの戸惑いは、昨日のことのように鮮明に思い出される。
 年を取ると昔のことほど鮮明に覚えているものだと、フレデリックに静かに笑われたのは、あれはもう何年前のことだろうか。今はもう会うこともできないけど。何もかもが鮮明であり曖昧だ。
「ラムダ」
「……」
 応える声はなかったが気配は感じられた。
 この変わらない場所にも変化はおとずれている。綺麗だけれどもどこか無機質だったこの空間は、一部分だけ色とりどりの花が咲いていた。フォドラのエレスを吸収した時の影響なのだろうか。それを少しずつフォドラが心を開いてくれている兆しかもしれないと思うのは、楽観的に過ぎるのかもしれないが信じていた。
 そこに意識を近づけると先ほどまで何も見えなかった空間に霧のような球体が現れる。
 手を伸ばして、初めてラムダの心と向かい合った時のようにその中心に手をやってぎゅっと握る。第三者から見れば紫がかった影の中でアスベルが手を握っただけのように見えるだろうが、アスベルはそうしてラムダと手をつないでいるつもりだった。頑ななところのある彼が少しでも心を見せてくれるようにと、いつもアスベルはそうやっていた。
 ラムダがここにいる限り。
 アスベルがここにいる限り。
 手を伸ばし存在に触れここにいることを確認して、そうしていつもまっすぐと向かい合う。ラムダには嘘をつけないから。いや、嘘をつきたくないから、まず自分の心をそうやって伝えるのだ。
「怒っているのか、ラムダ」
「……」
「違うな。哀しんでくれているのか」
「…………何故そう思う」
 手を離して微笑みかければ、不満を含んだ声が返ってきた。
「良かった。お前が黙ったままだと俺、結構寂しいんだぞ」
「くだらぬ」
「くだらなくなんか、ないさ」
 お前の心で言葉なんだから。
 言い聞かすように何度も伝えた言葉を口にすれば、今度ははっきりと不満を表すため息のような揺れが伝わってきた。周りの空間が少し冷たくなり震えているかのようだ。泣いているようだと思ったが口にはしなかった。ラムダには伝わってしまっていたかもしれないが。
「何をしに来た」
「お前と話をしに来たんだよ、ラムダ」
「我に話すことなどない」
「そういうなよ。これが――きっと最後だろうから」
「帰れ」
「……ラムダ」
 珍しく語気が荒くなったラムダに囁くように呼び掛ける。
 心が流れ込んでくるまでもなくラムダが抱えているものはアスベルにも良くわかった。それは生きていく上で誰もが幾度も経験せざるを得ないもので、けれどアスベルが思うものよりもきっと深いものなのだろう。
「ありがとうな」
「礼を聞く気などない」
「そう言うなよ。お前と向かい合っていると俺は、一番大事なものが何かってのををずっと忘れずにいられる」
「我には関係ない」
「お前に関係あるさ。当たり前だろ」
「……」
 戸惑い、拒絶、安らぎ、不安、寂しさ、安心、喜び、悲しみ。
 色々なものが混ざり合って締めつけられるように苦しく、けれどとても温かい。
 初めて彼を受け入れる時に恐怖がなかったかと言ったら嘘になる。不安がなかったとも言わない。けれど今ならはっきりと言える。彼の手を取れて、彼と共に歩むことができて良かったと。彼が様々なことを知って、温かな心をもう一度抱けたことが嬉しいし、何よりも彼が側にいること自体が嬉しかった。
 アスベルの中に居るもう一人。最後まで決してアスベルを一人にしない存在。とても狡いことを承知でそう思ってしまう。
「なぁラムダ、少し正直なことを話してもいいか」
「……何だ」
「俺、最近気づいたんだけど。何ていうか……そうだな、嫉妬しているのかもしれないんだ」
 少し気恥ずかしさを感じながらもそう口にした。それはソフィに自分と家族になろうと告げた時の、返される答えがほんの少しだけ怖かった、あの時のくすぐったさとよく似たものだ。
 さすがに年甲斐もないものだと思いながらの言葉は想像通り不満と、そして少し動揺した気配で受け止められた。こんな時アスベルは、ラムダのことを本当に可愛いなと思う。ラムダにしろソフィにしろアスベルよりも長く生きているが、新鮮で純粋なものを誰よりも持っているのだと感じられるのだ。
「…………。お前は、何故――そうも理解不能なことばかり言う」
「あ。こっち向いてくれたな、ラムダ」
「ここでは見ずとも見えている」
「俺もラムダのことは気配でもわかるさ。こっちを向いてくれたってことぐらいは」
 くだらぬ、とは返ってこなかった。言っても無駄だと思っているのかもしれないが、アスベルはそれを照れているのだなと解釈した。否定の気配は伝わって来ない。
 両手を伸ばして手の平で包み込むようにラムダに触れる。
 見た目は霧のような球体だがそうしていると人と同じ体温を感じられる気がした。
「最近あまり俺に応えてくれなかっただろ。ずっとフォドラと会話していて」
「まだ会話などと呼べるほどの意志の疎通はない」
「俺のことずっと放っておいて」
「……我が手を貸さねばならぬようなことは起きておらぬはずだ」
「そういうのじゃなくてさ。俺、寂しいじゃないか」
「何を……言うかと思えば」
 意を決して伝えたはずの言葉に少し怒ったような声が返ってきて、アスベルは手の中のラムダをなでながら戸惑いつつ首を傾げた。いつもラムダはアスベルに理解し難いと言うけれども、アスベルにとってもラムダの反応も予想外のものが多い。本当は少し強く言ってやろうと思っていたのに、そういう反応をされるとアスベルの方が悪いことをしている気分になる。
 少しも悪いことをしているつもりなどないのだが、ヒューバートには「兄さんは昔から鈍いところがありますから」と何度も言われているので、その辺りはどうも自信が持てないのだ。
「側にいるのにあまり話せないって寂しいだろ」
「我が抑えられねば、困るのはお前たちだろうが」
「そういうことじゃなくて、ただ俺はもっとお前と一緒に色々なものを見て、色々なことを話して、一緒に悩んで、一緒に答えを探したかった、ってだけさ。俺がそうしたかった、だけだ」
「…………。過去形で話すのだな」
 ふるりと空間が乱れた。
 空はいつの間にか雨雲を切り取ったかのような色に染まり、空を映していた水面も淀んで幾つもの波紋を走らせ、咲き誇っていた小さな花畑さえも色を失いモノクロに塗り替えられていた。ないはずの風が冷たく肌を撫で、見えない雨が体を濡らしていくような感覚。
 そんな気持ちにさせたかった訳ではないが、憎しみに荒れるのではなく哀しみに耐えるような情景は、すごく愛しいとも思ってしまう。人ではなくても、人以上に素直で繊細な心の情景だ。
「お前にはわかっているのだろう、ラムダ」
「――都合のいい時だけ我が全て知っているなどと思うな。常は、我に対して子供に教え諭すかのように語りかけてくるというくせに」
「お前は俺の知らないことをたくさん知っているけど、俺の知っていることでお前が知らないこともある。お互いの知らないことを補うのはおかしなことじゃないだろ」
「そのようなこと……。知らぬままでも良かったのだ、我は!」
「ラムダ……」
「アスベル、お前を――失う日など、知りたく、も……」
 ザアァァァ。
 語尾を掻き消すように暗い空から瀑布のように雨が打ちつけてくる。アスベルを非難するように叩きつけられてくる大粒の雨は肌に重く、けれども人の頬を伝う涙のように繊細で温かく、心が痛みと愛しさで満たされていく。
 泣いている。ただ哀しんで泣いている。どこかに怒りをぶつけるのではなく、ただただ己の中に沸き上がってくる哀しみに耐えながら、その哀しみすら貴重なものとして手放したくないと震えているように、泣いている。
「この期に及んで卑怯だ、お前は」
「すまない。そして――ありがとう」
「……」
「俺と共にいてくれて。でも大丈夫だ。お前は一人じゃない。ソフィはずっとお前の行く末を見守っていると約束してくれたし、俺の血を受け継ぐ者たちもきっとお前と一緒に歩んでいくはずだ、だから――」
「だがお前は――おらぬのだな」
 本当はこの身で、最後まで一緒に歩んでいきたいと願うのだけど、それは人としては叶わぬ願いだ。ソフィが人になれぬように、アスベルもまた彼らのような存在にはなれない。共に歩むことは出来ても同じにはなれないのだ。だが違うからこそ手を取ることができる。相手の存在を嬉しいと感じることができる。
 ソフィやラムダと出会ってアスベルはそれを実感した。
「お前が最近俺の呼びかけにあまり反応しなかったのは、俺と別れたくないと思っていてくれていたからなんだろう。わかっていたから、気づかないふりをしたかったんだな」
「……アスベル。今のお前なら、我は乗っ取ることなど容易いのだぞ」
「でもお前はそうしない」
「何故そう言いきれる。今まで大人しくしていたからなど理由にはならぬぞ」
「お前はしないさ」
「まもなくお前は……死ぬ。その前に、と我が考えぬと? 完全に乗っ取ってしまえば体が死ぬことはないと、本当に考えておらぬと?」
「ならそうするか? 俺は、抵抗はしない」
 本当に抵抗する気はなかった。
 ラムダはそうしないと信じていたのも確かだが、それでもなおラムダがそれを望むというのならば、アスベルにしてみれば受け入れる以外の道など用意していなかった。
 それがラムダの手を取った時から心に決めていたことでもあるし、あの時とは違って一緒に歩んできたラムダが選ぶものならば、その答えは大切に守ってやらなければならない感情のはずだ。それもまた、とても人として真っ当な感情なのだから。
 だがラムダはそれを選ばない。アスベルが一番よく知っている。もしかしたらラムダもアスベルもそれを一番に願ってしまっているのかもしれないけれど、互いのことを見つめた時にそれだけは選べないこともまた理解していた。融合してしまえば離れることはなくなるが同時に、相手を永遠に失うことにもなるのだと、知っているから。
「我に選ばせるのか。選べぬとわかっていて」
「俺は選んださ。生きている限りお前の手を握り続けると。お前を、守ると」
「だが、お前は……」
「俺はお前と共にいられて嬉しかった。これからお前と対話を続けていくフォドラや、見守っていくソフィ、共に歩むであろう血を受け継いでくれる者たちを、羨ましく思うぐらいに」
 これからラムダと共に居る者たちに嫉妬してしまう、それは本音だ。アスベルもフォドラと同じぐらいの時間ラムダと対話していたかった。これからソフィがしていくように見守っていたかった。血を継ぐ者たちが歩むようにラムダの傍らにただあり続けたかった。それが叶うならすべてを差し出してもいいと思うほどには我がままに願ってもいる。
 それでも選んだ。ラムダが世界の全てを知ることができることを。死で失われるものとそれでも残るものがあることを、哀しくてもこの世界が温かな場所であることを、知って欲しいと選んだのだ。生きている限りラムダを守ると――死と共にそっと背中を押してやると。
「……」
「世界は素晴らしいさ、ラムダ」
「我を残していくお前がそれを言うのか」
「素晴らしいからお前にはもっと見て欲しいんだ。わかってるだろ」
「数多の傷を受けてきた身で、まだそれを言うのか」
「でも俺はこれまで生きてこれた。お前やソフィや大切な人たちと一緒に。だからやっぱり世界は素晴らしいんだよ。それはお前が本当は一番感じているはずだ」
 出会えたこの世界を素晴らしくないとは思わない。お前が生きていくこの世界は素晴らしいと信じている。そうでなければこうしてずっと手を繋いだままでいられなかったはずだ。こうして優しく手を離す事も出来なかったはずだ。
 連れていきたいと、引き寄せて欲しいと、望みながらも手を離せるのは幸せを信じているから。
「生きて……世界を見てくれ」
「…………。お前との約束を守る義務など我にはないぞ」
「あぁわかってる」
 そうやって会話を続けようとしてくれていることを。
 言葉が途切れてしまっては終わりの時間が訪れてしまうことを。
 それが少しでも先であることを、お前が切実に願っていることを。
 でも、
「最期までありがとな。ラム――ダ」
「!」
 最後まで自分の声が相手に届いたかは、最後の最後にちゃんと名前を呼べたかどうかは、残念ながらわからなかった。
 だがいつしか打ちつけていたはずの雨は上がっていた。冷たく動かなくなっていったはずの体は温かくて、息苦しかった胸は詰まりが外れたようで、暗転したはずの視界は光に溢れていた。柔らかくて優しくて包まれているような、決して独りぼっちではない気配の中に居た。
 ――やはり世界は素晴らしいよ、ラムダ
 お前にこうして会えたのだから。
 そしてお前にもそうであったと、信じているから。


アスベルとラムダが幸せでありますように。
世界の素晴らしさが二人に降り注ぎますように。

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