運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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一つ傘の下

レイユリ、のつもりだったけどユリレイに見える。
でも個人的にはレイユリなんだよなーと主張。

そんなSS。


 
「――面倒くせぇおっさんだなぁ」
 煩く打ち付けてくる雨音の中でも呆れた色の濃い溜息がはっきりと聞こえて、目の前の地面を叩いていた雨が止まった。泥濘の中にブーツが見える。ゆっくりと顔を上げればブーツの上には足が付いていて、その上には腰があり、さらに視線を上げればレイヴンを覗きこんでくるいつもの双眸があった。
 宿で借りてきたのか随分と古臭いガラの深緑の傘は、けれどそれを持つユーリの美しさをいささかも損なってはいない。分厚い雲に覆われた空、暗い傘の下、それよりも黒い髪が肩を上下させた余韻でふわりと左右に揺れて、その軽さは湿気た空気とは無縁のようだった。
 一歩近づく足。同時に肩を叩いていた雨が止まる。
「青年……」
「あのなぁ、気にいらねぇからって一々出ていくなよ。探す方の身にもなれって」
「だって青年冷たい」
「冷たかねぇよ。たかがサバ味噌却下したぐれぇで」
「親友くんのハンバーグってリクエストは聞いたくせに」
「肉が余ってたからだろ」
 また溜息が一つ。
 もちろんレイヴンだってたかが夕食のメニューが思い通りにならないぐらいで本気で機嫌を損ねた訳ではない。自分よりもフレンのリクエストが通ったからでも、笑顔で差し出されるデザートに辟易した訳でもない。ただそれが積み重なってきたことに、やさぐれ気味になる気持ちを抑えられなかっただけだ。
 何もかもを自分優先にして欲しいとは言わないが、少しぐらいはレイヴンのことを考えてほしいと思うのだ。どうもユーリはレイヴンに対してだけ容赦がないし、言葉も素っ気ないことが多い。
 いい年をして四六時中甘い関係を望んでいる訳ではないが、特別を意識させてくれてもいいのではないかと主張してもいいではないか。
「ガキかよ、おっさん」
「我慢した末の主張なのよ!」
「だからって傘も持たずに飛び出すなよ。風邪ひくぞ」
「青年が来るの遅かったから、寒い」
「おいおい、俺のせいかよ」
 そう言いつつも傘はレイヴンの上に差し出されたままで雨を遮ってくれていた。視線を合わせないようにもう少し目線を上げれば、ユーリの肩を雨が弾いていて、長い黒髪を伝った水滴が毛先から足元へと落ちてきた。それでもユーリはじっと動かない。
 面倒臭いと言いながら探しに来てくれる。面倒臭いと言いながら傘を差し出してくれる。面倒臭いと言いながら訳のわからないレイヴンに付き合ってじっとここにいてくれる。わかっているのだ、それがレイヴン相手だからこその特別だということぐらいは。
 ただ少し、もう少しだけ欲しいと、我儘に思ってしまうのだ。出来ればそれを二人きりの時だけでなく、他の皆がいる前でも示して欲しいと。レイヴンはユーリにとって特別なのだと、皆の前で見せて欲しいと。くだらなくて子供っぽ過ぎるものだとはわかっているが。
「――青年こそ、風邪ひくわよ」
「俺、若いもん」
「…………。どうせ年寄りですよ」
「そうそう。わかってるじゃねぇか。だからさ、」
 影が濃くなり近づいてきた。
 傘に当たって弾ける雨音がすぐ上に聞こえる。
 座り込んだレイヴンの目の高さに合わせてしゃがみこんできたユーリの表情は、呆れた苦笑を浮かべていたものの何故か優しい気配で、白い肌を滴り落ちていく雨粒に魅入ってしまった。完全にレイヴンの上にだけ翳された傘。
「風邪ひかねぇうちに戻ろうぜ」
「……傘、ちゃんと青年も入りなさいよ」
「おっさんが立ったら入れるさ」
 もう傘などあっても無駄なぐらいに濡れてしまっていたお互いの体を寄せ合って傘に入れば、雨は冷たいのに傘の下だけとても温かい気がした。

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