運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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上手なキス

キッチン前にユリレイ?レイユリレイ?を投下。
どちらにしろおっさんの立場が弱いのは確実。


 
 いったいどうしてこんな状況なのかと嘆きたくなる。
 大したことではないと思っているのに、こんな時ばかりは存在を激しく主張する偽物の心臓が痛くてたまらない。落ち着かせようとしても自分の体以上に融通のきかないそれは、レイヴンの苛立ちも戸惑いも緊張も全て見透かした笑っているように壊れそうなほど早鐘を打っていた。
 あまりの動悸に息苦しくて呼吸の仕方がわからなくなるほどで、本当に自分の周りに空気が存在しているのかと確認するように口を開いた。冷たい空気が口内を満たして舌が乾いていく。吸い込んだ空気で喉の奥がひきつるような感覚が走った。体が傾いているのではないかと疑いたくなるほどに、三半規管は反乱をおこしたように揺れている気がする。
「どうしたんだよ」
 弾むような声で言葉が投げ掛けられた。
 レイヴンがそれだけ苦しんでいるというのに、もう一方の当事者はどこ吹く風、まったく意に介した様子もなければ、腹立たしいぐらいにいつも通りに皮肉な笑みを浮かべて見せる。これがまた無駄に綺麗な容貌なものだから、悔しいと思いつつも見惚れてしまいそうになるのだ。息苦しさに、別の意味に動悸が混ざるのが悔しくて、そしてそれを相手も気づいているのが悔しさに輪をかける。
「してこねぇの?」 
「う……」
「おっさんから言ったんだぜ」
 完全なる売り言葉に買い言葉だったのだ。
 そんなことで意地になるなど大人げないというか、いい年をして何をくだらないことをというか、キスが上手いとか下手とか経験が豊富とかそうでないとかの話題がどう転んだのか、それじゃぁお互い確かめあってみればいいじゃないかという流れになってしまい、それならば年上の矜持にかけてとレイヴンがユーリにキスをすることになってしまったのだ。冷静になれば完全にユーリにはめられただけのような気がする。冷静にならなくても気づきそうな気もするが。
 向かい合ってみればユーリは少しも引く気もなければ物怖じした様子もなくて、男にキスされるのが平気なのかと問えば、たかがキスだろと軽く返されてしまった。挙げ句の果てに、おっさんはキスもしたことがないのかと笑われてしまっては、腕を見せてやると答えざるを得ないではないか。
 随分と馬鹿なことは重々承知の上だ。
 身長の差を背伸びをすることで解消して、ユーリの肩に手を置いて顔を近づける。日中の移動が熱かったせいか僅かに汗の匂いが漂ってきて、だが不快な匂いではなくて何処か太陽の匂いに似ていて落ち着くものだった。だがそれでゆっくりとしていたら苦笑交じりの吐息が聞こえて、慌てて頭を振って顔を上げた。今は大人の男としてキスの腕を見せつけてやるところなのだ。
 馬鹿馬鹿しいが引けない、男だから。
 けれど体が動かない、おっさんだから。
「ま、おっさんが必死に頑張ってるのはなかなか見てて楽しいけど」
「これは……ふ、雰囲気を作ってただけよ!」
「冷や汗かきながらねぇ」
「黙ってキスされなさい!」
「へーへー。お手柔らかに頼むわ」
 口角を上げて笑う唇。細められた紫紺は一度レイヴンを捕らえたものの、長い睫毛の瞼にすっと隠されてしまう。見てない方がいいんだろと見通したような口調が腹立たしいが、笑いを抑えた声は体の奥の方の何かを揺さぶるようにくすぐったいほどに心地良い。
 近づいて唇を寄せれば空気越しにも肌に感じる体温。
 覚悟を決めるように生唾を飲み込んだ。と、
「ほらよ」
「!!」
 レイヴンが動く前にユーリの顔が傾いて唇が重なる。思っていた以上に柔らかい唇だ。
「な、にを! おっさんがするって――」
「本当に?」
 出来たのかよ。
 口には出されない言葉が聞こえた気がした。
「いいじゃねぇか、たかがキスだろ」
 おかずのポテトを一本横取りした時よりも軽い言い方だ。実際ユーリにとってはその程度のものなのかもしれない。出来れば、その程度を装っている、であって欲しいけど。
「で、もう一回おっさんからするか?」
「……何だか嵌められてる気がする」
「気のせい、気のせい。次は動かねぇよ」
 両手を広げてさぁどうぞと言わんばかりのユーリに、がっくりと肩を落とすしか出来なかった。

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