運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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無価値な不安

手を汚した後の青年と、裏切る前のおっさんは美味しいよねー。
と、定期的に書きたくなる。
たぶんログをたどれば同じような話が出てくると思うけど、
気づかないふりをして投下しておこう。

裏切りたくない、などと感じるとは思いもしないおっさんはいいよね。
おっさんは自分の感情が一番わかってないよね。
そんな妄想。


 
 長い黒髪が揺れて手招きする。
 近づいて触れれば何してるんだよと呆れた声が返ってくるものの振り払われることはなく、指先に絡めて梳り、そのまま首筋へと指を差し入れて肌に触れる。
「くすぐってぇよ」
「だって好きなんだもん」
「だってとか言うなよおっさんのくせに」
「青年冷たい!」
「普通の反応だろ」
 やや憮然とした表情で、細長い指に手を払われた。
 だがそれは拒絶というよりは照れ隠しのようで、剣を下げたままの手に重ねれば小さな溜息が落ちてきたがやはり振り払われることはなかった。
 この青年は受け入れると決めたら本当に何もかも受け入れてしまう。レイヴンという存在も、隠しごとをしていることや胡散臭さもはっきりと理解している癖に、それでも丸ごとに受け入れて許してしまうのだ。いつか自分の不利益になる行動をするのではないかと感づいている癖に、伸ばした手を振り払わずに、求める体を拒否せずに、重しにする心も否定せずに、ありのままそのまま受け入れ受け止める。そしてレイヴンは、自分がそれを一番酷く裏切るとわかっていながら、多くのものを抱えさせている。
 ズルイとわかっている。自分は何も与えるつもりはないのに、ユーリと共に居て重しを寄り掛からせれば自分が楽になるからと、この関係を持続させているのだ。それももう少しの間だからと、言い訳にもならない言い訳をしながら。
「夢見たのよ」
「――はぁ?」
「青年の夢。おっさんをぎゅっと抱きしめてきて離したくねぇってオネダリしてく――って! その握りこぶしは止めて!」
「盛大に寝ぼけてるみたいだったから目を覚まさせてやろうかと思ってな」
「いやいやいや! それ、下手したら永眠するから!」
「下らねぇこと言ってるなら永眠した方が世間に良さそうだけどな」
 止めて頂戴と泣いて謝るけれども。
 あぁ確かにここで永眠してしまえば彼らを裏切ることもなければ、この空虚な体を引き摺って道具として無駄な動きをし続けることもなくなる訳で、それはそれでとても理想の状態のように感じてしまう。
 本当なら自分の活動を止めるのは至極簡単で、心臓魔導器を停止させる簡易な装置をそっと作動してしまええばいいだけのことなのだ。だが誰かがそれをなすのならば自分は邪魔をせずにただ黙って見ているのだろうが、自分がそれを行うとなるとどうしても実行することは出来なかった。それはただ死にたくないと願うからという訳ではなく、自分がこれで死のうとする、その行動そのものに酷く違和感を抱いてしまうからだ。
 自分はとっくに死んでいて死人なのに、どうして死ぬための行動が必要なのだろうかと、雨で濡れたコートを着込んでいるかのように心と体が重く億劫になって、途中からどうしても動けなくなってしまうのだ。
「で? どうして欲しいんだよ」
「……どうって?」
「夢みたいに抱きしめて欲しいのか?」
「ぁ――え、それって、絞め殺すよってこと?」
「あのなぁ……んなこと言ってねぇだろ」
 伸びてきた手に反射的に反応しそうになるのを抑えれば、何もしねぇって、と苦笑を含んだ声と共に手を掴まれていた。ぎゅっと絡める指先は力強くて、けれど痛くはない。
「何か悩みでもあんのか?」
「およ? どうしてそう思うのよ青年」
「前に女将さんが、夢の話をするのはよほど面白くて人に自慢したいか、隠れてる不安を見つけて欲しいかのどっちかだって、言ってたことがあったからな」
「それって子供の場合でしょ。夢の中の不安なんて」
「そうかもだけどな」
 言いつつも掴んだ手は離されない。
 まったくこの手のことに関しての察しの良さは嫌になるほどだ。具体的な何かに気づいている訳ではないくせに、妙に的確に事の本質部分に踏み込んでくる。
 いやそれとも、踏みこんで欲しいと自分が不覚にも思ってしまっているのかもしれない。だからこそ気づいているのかもしれない。ドンにも一度からかいと忠告として気を混ぜ合わせたような口調で言われたことがある。ユーリを随分と気に入っているようだと。ユーリの前では何か違う本来のも尾が出てきているのではないか、と。
 あの時は馬鹿馬鹿しいと思って否定したが、あながち間違いではないのかもしれない。もっとも、事実そうであったとしても自分のこれからの行動や結果が何か変わるのかと言われれば、そういったことは一切ないのだろうけれども。
 もう、そういう期待を抱く時間は終わっているのだ。
「最近ちょっとおかしいだろ」
「あらそう?」
「自覚ないってのがその証拠だろ」
「……。気のせいよ」
 気のせい、でなければならないことだ。
 気づかない方が良いこと、気づくべきではないことは、世の中にはたくさんある。
「あー、でも、最近ちょっと寂しいかもって言ったら、青年相手してくれる?」
「それがおっさんの本心ならな」
「あーら怖い」
 嘘ではないけど本心だけでもないのよねと、にへらと笑って見せる。
 言ってることの何処までが本当で何処からが作りものかなどと、自分自身でも明確な線引きなど出来はしない。この十年以上もそうやって、曖昧さで色々なものを誤魔化しながら過ごしてきたのだから。
「じゃぁ、いいぜ」
「いいの?」
「だってそれは本心なんだろ」
「……やっぱ青年は怖いわねぇ」
 知らないはずなのにどうしてこう胸に突き刺さるような言葉を口にするのか。
 もっとも突き刺さる胸にまともな感覚などもうないのだから、この感覚が心底どういうものなのかは理解しようがないのだが。
 だから殊更に軽薄に笑って、
「んじゃ遠慮なく頂くとしましょうかねぇ」
 無意味に無価値に無神経にしなやかな体に手を伸ばし、軋む思考を急ごしらえの欲望で塗り替えた。

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