運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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あなたの朧月

泣いてるおっさんシリーズ。
と、勝手にシリーズ化してみる。
一応レイユリ。

原稿はもうちょいでなんとかな、る、はず。


 
 月が綺麗だなと思ったのは、別に月を愛でる風流な心からでも、月見酒との名目で酒を片手に夜空を眺めていたからでもなかった。他に視線の持っていきどころがなく、自然相手の視線が向いているであろう方向を自分も見上げただけで、すぐに口を開く雰囲気でもなかったから目に映ったものをのまま胸中で言語化しただけだった。
 一歩足を進めて猫背の背中に近づく。
 レイヴンは動かず、ユーリもそれを気にしなかった。
 子供のように三角座りをしながら夜空を見上げてる姿を視界の隅で確認しながら、嫌に澄んだ空気の中に明るい円を描き出している月を見上げ、そうか月明かりでも影は出来るものなんだなと、当たり前だけれども新しい発見のような感想を抱いた。
 ジャリッジャリッ
 砂の粒がブーツの底に踏み潰されて音を立てる。
 先ほどまで聞こえていたはずの虫の音がいつの間にか消えていた。
「――泣くなよ、おっさん」
「泣いてない、わよ」
「嘘つくなよ」
「涙なんかとっくに枯れてるもの、出ないわよ」
 そうは言っても声が震えている。
 振り向くこともしようとしない。
「そうかよ」
「そうよ」
 レイヴンと背中合わせに真後ろに腰を下ろし、僅かに体重を預ける。
 肩甲骨の辺りに小刻みな震えが伝わってきて、それは自分の記憶が正しければ涙を堪えて体を掻き抱いている時のもののように思えたが、それを確認しようとは思わなかった。
 泣いているなら、涙が止まるまで何も言わずにここにいる。
 泣いていないなら、気が済むまで何も言わずにここにいる。
 どちらでも同じだ。ユーリがレイヴンに出来ることは百の慰めを重ねることではなく、千の道理を説くことでもなく、万の励ましを送ることでもない。
 ただ背中を預けて、体温を伝えて、時間を共有して、レイヴンという存在を見ている者がここにいると、伝えることだけだ。
 俺が、アンタを、求めてる、と。
「――月、綺麗か」
 背にした月がレイヴンとユーリの合わさった影を地面に描き出していた。
 周りの草木が風に揺らされ動く中で、二人の影だけは微動だにせず、何処か世界と隔絶されているようにも、世界に守られているようにも見えて、そんな普段では考えないようなことを考えるとでもなく思い浮かべている自分にユーリは苦笑した。
「綺麗よ。今にも……泣きだしそうだけど」
「朧月ってやつ?」
「……そう、ね。良く知ってるわね」
「前にエステルからな。素敵な名前でしょうって何度も言うから覚えちまったよ」
「そう……」
「あぁ」
 先ほど見たくっきりと鮮やかだった月の姿を思い出しながら、まったく本当にしょうがねぇなぁと、ゆっくりと瞼を下ろした。おっさんの目に朧月に見えるなら、自分はずっと振り向かずにいよう。
 ゆっくりと肌を撫でる夜風が、ただ心地良かった。
「んじゃ、朧月が見えなくなったら、戻るか」
「…………うん」
 それが無理なら朝まで付き合うさ。
 言葉にしない思いはまだ熱い体に押し込めて、再び聞こえてきた虫の音に耳を傾けた。

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