運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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三度目の死を迎えるまで

以前リクを頂いたCP全部書いた、よね?
おいおいまだ書いてないだろうってのがあったら尻叩いてやって下さい。

そんな訳で今日はユリレイ。
レイユリでもいいんだろうけど、たぶんユリレイ。
まぁタイトル通りのネタなので苦手な方は回れ右!


 
 ゆっくりと瞼を押し上げて、真っ暗な視界に光を招き入れる。
 眠りの中から意識が浮上してきて一番最初に行うはずの行動がいやに億劫で、瞳を覆う薄い膜を取り払うことがこんなにも困難だっただろうかと、妙に鈍い思考で考えてはみるもののそれで答えが出るはずもなく、やがて温かな手の平が頬に触れたことでようやく、暗闇の中に薄ぼんやりとした姿が浮かび上がってきた。
 光の中、見えた姿は闇のように黒い影。
 辺りの景色を遮るように垂れ下がるものの正体が細く長い髪であることを、頬をくすぐる慣れた感覚で理解する。
 この感覚は良く知っていた。
 朝目覚める時にいつも自分の頬をくすぐる感覚だ。
 柔らかな光を自覚するよりも先に、肌に触れる細くやわらかな感覚に意識が浮上させられて、まだもう少し眠っていたいのにと不満に思いつつも、続いて降り注いでくる低く優しげな声が自分の名前を呼ぶと、やはり心地良い夢の中よりもこの声の主と共に見る世界の中に戻りたいといつも願うように思うのだった。
「――レイヴン」
 そう、この声だ。
 ぶっきら棒な口調なのに優しげで、低く迫力のある声なのに柔らかで、喧騒の中でも紛れることなくレイヴンの名を呼び、そして静かな空間では空気の中にしみわたるように厳かに伝わってくる。
 偽物だったはずの名前が、彼に呼ばれるだけでまるで命を得たように聞こえる。
 意味のない記号の羅列だったはずが、何よりも貴重な響きになる。
 捨ててしまいたかったはずのものが、ずっとずっと腕の中で抱きしめていたくなる。
「…………青、年?」
「目、覚めたか?」
「ん。まだ……眠い気がするけどね」
「寝過ぎだよ。ボケるぜ。ってか、ボケてるからその台詞か」
「もう、酷いわねぇ」
 いつも繰り返す日常の応酬だったが、喉が渇いて声がかすれ、自分でも随分と聞き取りづらい声だった。
 笑おうとしたが肺の奥に何かが詰まったような痛みが走り、胸を抑える様にして咳き込んだ。
 その間中、細い指先が無言でレイヴンの肌を撫でてくれていた。剣をふるうとは思えないほど細く整った指先は心地良く、けれど何処となく寂しげな動きに思えて、呼吸を整えながら左手でそっとその指先を握った。
「青年の体温、高いわね」
「おっさんが低いんだよ。戦闘だけじゃなくて体温維持までサボってんじゃねぇよ」
「夏は涼しくていいでしょ?」
「……そうだな。涼をとるのに丁度いいかもな」
 まるで死人のような冷たさだと、レイヴンの手を握りながら昔そう言ったのはユーリだった。
 反対にユーリの手の平は熱く感じるほどに温かくて、生きているのだなと実感させてくれると、レイヴンはそう答えたものだ。
 冷たい手と、温かい手と。
 触れ合って、体温を分け合って、やがて同じ温度になって。
 繋いだ手の温もりを感じるのがレイヴンは好きだった。何よりも深く繋がり合っているようで、ユーリの全てが自分の中に注ぎこまれているようで、自分がここで生きているのだと教えてくれているようで、それだけでこの世界が柔らかな色彩に包まれていると思うことが出来た。
「――ねぇ、青年」
「なんだよ」
「おっさんのこと――好き?」
 レイヴンを覗き込んでいた紫紺の瞳が、小波を打つように揺れた。
 泣かせてしまうかもしれないと思ったが、揺れた深い色合いは二度瞬きを繰り返した後には、いつもの皮肉を湛えたからかい交じりの眼差しに戻っていた。
「……嫌いだよ」
「そっか。安心したわ」
 最初の一文字目が微かに震えていたことはお互い気づいていたが、精一杯の微笑を浮かべたままお互い共に気づかないふりをした。
 気づかない方がいい。
 気づかないでいないと、全てが崩れてしまう。
「――でも、」
「でも?」
「おっさんのクレープは好きだぜ」
「……本当に、甘いもの好きね」
「だから、また作れよな」
「――そう、ね。また、ね」
 今度、また。
 優しく微笑んで、優しく微笑まれて。
 それはそれはとても優しい嘘だとお互いが知っていたけれど、本当になればいいと切実に願いながら、繋いだ指先が同じ温度にならないことには気づかないふりをし続けた。

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