運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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声が届かなくなるまで

死にたがりおっさんのレイユリ
ユリレイっぽいけどレイユリ
だってこの二人なら突っ込むのはおっさry イエ、ナンデモアリマセン

少しですけど流血表現もあります
暗い雰囲気の話なので苦手な方は回避を


 
 姿が見えなくなるのはいつものことで。
 そういえば昨日はどこだかで騎士の葬式を見かけたなぁと思う。次いでその様子をじっとレイヴンが見ていたことも、のんびりと思い出した。
 急がなければならないなと思いつつも、レイヴンのことに関して思考は酷くゆったりしている。もう慣れ過ぎているのかもしれない。レイヴンがいなくなった、というその手の慌てた報告にも。
 とはいえ姿を消す切っ掛けなどあってないようなもので、どこでスイッチが入るのかなどユーリにも完全にわからなかった。おそらくレイヴン自身も把握などしていないだろ。
 下手をすれば自分にそういうスイッチがい入った、という状況すら意識していないのかもしれない。まったく、いつまでたっても手のかかるおっさんだ。
 ダングレストの中で、レイヴンの姿を探すのも習慣と化してきている。
 それなりに広い街で隠れようと思えばいくらでも隠れられるが、どうせいつものごとく人の少ない場所をふらふらとしているに違いなかった。
 居酒屋の裏路地、娼舘の一つ手前の路地の奥、橋のたもと、探すべき場所はそういくつもない。
 人目に付きにくい場所にいながらも、それほど奇をてらった場所にいることはないから、本当は早く見つけて欲しいという合図なのだということはわかっていた。
 本人が意識しているかどうかは別にして。
 何となくのあたりを付けて人通りのない暗い橋までやってくれば、案の定、橋げたの影に隠れた部分に頭の後ろで無造作に束ねた髪が目に入った。特に理由があってここに足を向けた訳ではないが、まず外れることはないのは自分でもおかしなものだと思う。
 特に足音を忍ばせるでもなく近づいた。
 後五歩、に近づいたところでレイヴンの方から振り返る。
「…………青、年」
「ひっでー面、してんなぁ」
「ねぇ青年、おっさんやっぱり――」
 この台詞ももはや聞くまでもないものだ。
 何処かに録されている音声が繰り返されているのではないかと思うほどに。
「言っただろ。おっさんに選択権なんかねぇって、何をしてもどう生きてもかまわねぇけど、おっさんの命は俺たち凛々の明星のもんだって」
「でも……でもね……」
「でももくそもねぇよ。とにかくその手、何とかしろよ」
 その、とレイヴンの左手を顎で指し、ユーリは辺りに充満しているある意味嗅ぎ慣れた血の匂いに呆れながら肩をすくめた。
 促されて虚ろな翡翠色の瞳もふらふらと自分の手首に視線を落とす。
「――手?」
 不思議なものを見るようにレイヴンは自分の手首を見下ろす。
 そこからはどくどくと血が流れつづけていた。足元にはいつもレイヴンが懐に忍ばせている小刀が落ちていて、一定量で流れつづける赤が地面に血だまりを作り、汚水を捨てるように川へと流れ込んでいる。
 痛そうなのに痛くないなのかなと、現実味のない赤さを追いながら思った。
 青白い顔と、ぐちゃりと濡れた地面の感触から、もう随分と出血しているはずだ。あと数十分遅ければ、冷たくなったレイヴンの体とご対面だったかもしれない。
 そんな間一髪のはずの状況にも少しも動じない自分に、ユーリは口の中だけで小さく笑った。
 もう今更、その程度のことでは慌てない。それに何故だか確信めいたものが自分の中にあるのだ。レイヴンのことに関しては、自分は決して間に合わないという状況にはならないという、根拠のない自信が。
 自分は必ず、レイヴンを生かしつづけると。
「血……」
「そ、おっさんの手から出てるんだよ。俺、治癒術とか使えねぇし早く治せよ。ってか魔導器もねぇから治癒術師なんていねぇし、医者を呼びに行ったらその間におっさんくたばってそうだし」
「治す、の?」
「そうだよ。治すんだよ」
 子供に言い聞かすように繰り返せばこくりと頷いて、お決まりの愛してるぜの台詞がたどたどしく暗がりに響いた。
 緑の光が体を包み込み、傷口をそっと癒していく。
 ぼうっとしていても術の発動には何のもの代もないのかと、妙なところで感心した。
「――ほら、帰るぞおっさん」
 手を差し出して、呼びかける。
「ぁ……」
「ん? どうした?」
「おっさん、まだ生きていて、いいの?」
「生きていていいじゃなくて、生きてなきゃいけねぇんだよ。俺のものを勝手に捨てようとすんなよ」
「凛々の明星のもの、でしょ?」
「どっちでも一緒。おっさんのものじゃねぇって点ではな」
 怪我をしていない右手の方を掴んで引き寄せる。
 簡単にユーリの方に引き寄せられた体は、随分と軽いように感じられた。あまりご飯を食べていないとはカロルの証言だが、これはお仕置きを兼ねてクレープでも口に突っ込んでやった方がいいかもしれない。
 どうせ優しく言い聞かせたところでにへらとわらって誤魔化そうとするのはわかっているのだ。問答無用で実力行使が、一番労力も少ないし確実だった。
 何でいい年をしたおっさんの栄養状態まで気に掛けなければならないのか。
 本当に手間がかかる。
「――何で、わかったの?」
 ふらりとついてきたレイヴンが、わからない、と泣きそうな声で言った。
 今の何処にそんな要素があるのか、想像がつかなくもないが、想像してやらないことにする。付き合っていたら、いつまでたっても浮上しようとしないのだから。
「はぁ? 何がだよ」
「おっさんがあそこにいるって」
「おっさんのことならわからねぇことねぇよ」
「……嘘」
「嘘にすんなっての」
 仕方ないなと溜息をついて立ち止まり振り返る。
 俯き加減の顔から見上げてくる瞳は何処となく怯えるような色合いを浮かべていた。ユーリを怖がっているというよりは、自分の存在そのものに怯えているのだ。
 人魔戦争で一度死んで。その後は道具として十年以上を過ごして。裏切り続け手を染め続け心を殺しつづけて。
 奇跡のように一度自分で踏みだしたのだが、それもやは常に自分の存在に疑問を抱いているのはわかっていた。道具として何も考えずにアレクセイに従って、それなのにアレクセイすら裏切って、アレクセイのいないこの世界で生きている。
 そのことに違和感を抱き続けているのだ。生きるのに不器用なこの男は。
「――血の匂い」
 何か適当な理由はないかと不真面目に思案しながら、傷は塞がっても血の後の残っている手首を見つめながら呟いた。
「……え?」
「喧嘩どころじゃねぇ濃い血の匂いが、風に混じってた。だからわかった」
「匂、い……」
「そう。おっさんが手首切って馬鹿みたいに垂れ流していた血の匂い。ダングレストじゃ騒ぎが多いっていっても、あんな無駄に放出してることそうそうないだろってこと。――満足か?」
 おっさんのことだから何となくわかるのだと、それで納得しないのはわかっている。
 ここにいて構わないのだと、どれだけ言葉を重ねても届かないことも知っている。
 大切に思っているのだと、いくら示しても体を抱き寄せても感情は届かないと痛感している。
 自分の忠誠も力も命も人生も、レイヴンは簡単に人に渡してしまえるくせに、誰かから与えられるものには酷く臆病だ。感謝の言葉一つ、好意の一欠けら、仲間としての視線一つ、信頼して預ける背中にすら、自分にはその価値がないと逃げようとする。
 いい加減に逃げるのを止めろと、言うのは簡単だ。
 大丈夫だと、繰り返すことも簡単だ。
 だがそれをレイヴンの中にまで浸透させるのは、星喰みを相手にするよりも厄介だった。
「そっか、血の匂い、か。そうよね。あれだけ血が流れてたら誰だって気づくわよね」
 その言葉にユーリに対する悪意はないのはわかっているのでそのまま流す。
「ねぇおっさん、青年に迷惑、かけた?」
「そうだなぁ。パフェ食ってる途中だったから最後は一気に食ったしな。あれはもうちょい味わって食いたかったところだ」
 まだ後二個は食べるつもりだった、とは黙っておいた。
 一応少しだけ気を使ってみたのだが、リタに言わせればバカっぽいの一言で済まされてしまうだろし、ジュディスに言わせればおじさまと一緒で貴方もずれているのねと、不本意極まりない言葉で締めくくられていただろう。
「迷惑なおっさん、見捨てる?」
「残念ながら。迷惑かけられるのも慣れてきたし」
「でも、邪魔でしょ?」
「邪魔かどうかは俺が決めるんだよ。俺のもんだから」
「凛々の明星の、でしょ」
「一緒」
 おっさんだから。おっさんのままで。ただいて欲しい。それが偽らざる本心で、迷惑なところも面倒なところも全部ひっくるめておっさんなのだと認めているのだ。
 だがそれをレイヴンは認めない。
 自分が酷く不安定なことは自覚しているからこそ、そんな自分を見捨てて欲しいと口にする。
 役に立たないから、迷惑をかけるから、負担になるから、道具として働けないから。だから見捨ててと。もう生きていなくていいと言ってと。アレクセイと同じように、お前は役立たずだと切り捨てて欲しいと、言葉で態度で視線で訴えてくる。
「見捨ててやらないし、手放してもやらねぇよ」
 だがユーリはそれを許す気はない。
 どれだけ自分を傷つけようとしてもいいし、迷惑も面倒もかけてもいいけれども、捨てて欲しいという願いだけは叶える気はない。死にたいという願いを叶える気はない。
 少なくとも、ユーリが死ぬなと呼べばたどたどしくも応じようとする、その僅かな意志でもあるうちは、手放す気はないのだ。
「――おっさん、苦しい」
「それは血が減ったからだろ。メシ食ってねぇところに血ぃ流したら、誰だって苦しくなるもんだよ」
「体が重いし、すごく、苦しいのよ?」
「体力が低下すると防衛本能が働いて力を温存しようとするから体が重くて鈍く感じる――ってリタが言ってただろ、この前。ちゃんと食べて体力付けて血が戻ったら軽くなるさ」
「そんなことじゃないのよ。すごく苦しいの」
「そんなことだよ。――けどまぁ、もし、」
 俯いた頬を両手で挟みこんで、自分と視線が合うように顔を上げさせる。
 暗がりの中でも明るい瞳がユーリの姿を中心に捉えると、怯えた猫のようにすっと瞼を伏せぎみにして斜め下へと視線を反らした。短い睫毛が、ふるりと瞼の上で小動物のように震える。
 緩く開いた口元から、悲鳴未満の短い息が吐き出された。
「その時が来たら、俺が殺してやるよ」
「青、ね――――」
「もう本当にダメで、耐えられないぐらい苦しくなったら、俺が責任を持って殺してやる。預ってる命を、ちゃんと壊して返してやる」
 雫が零れ漏れて、ユーリの手の平を濡らす。
 それは触れている頬よりも、温かな涙。レイヴンの体より涙の方に命が宿っているのではないかと、そんな考えが一瞬頭をよぎるほどに、優しい温もりを有していた。
「……いつ?」
「その時が来たら、だよ」
「それは、いつ?」
「さぁな。俺にもわかんねぇよ」
 涙を拭うことはせずにそのまま手を離し、しとどに涙を流しつづけるその体を抱き寄せた。
 抱きしめた胸元がレイヴンの涙で濡れる。あれほど温かく感じた涙は、けれどユーリの胸元を冷たく濡らした。
「だからその時を迎えるために、今は生きてろよ」
 いつかちゃんと死なせてやるから、だから自分では死なないで生きていろと。
 そんな言葉でしかつなぎとめられない自分が悔しく感じるが、それでもただ、今は生きていて欲しかった。

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