運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

| スポンサー広告 | TOP↑

≫ EDIT

貴方が私にさせたこと

暗い話を書こうとした代物。
たぶんレイユリ範疇。映画ネタ込みです。

ただしユーリが病んでるので注意。
何でもOKな人だけどうぞ。
ホラーっぽい終わり方も笑って許して下さい。


 
 ユーリの背中まであと五歩。
 ふと、そこで立ち止まったのは、ユーリが左手の魔導器に触れていたからだ。
 コアは精霊に変わり、この世界の魔導器はほとんどがその役目を果たさなくなった。入れ物だけが残っている状態だ。もちろんユーリが腕に嵌めている武醒魔導器もその例外ではない。今はその役目を終え、もはやただの飾りとしての機能しかない。
 だがレイヴンは、それが特別な意味を持つものだと知っている。
 世界中の魔導器を精霊に変えることを言いだしたのはユーリだが、その時も腕の魔導器に触れていた。おそらくその時は無意識での行動だったのだろうが、彼は誰よりも先に自分の大切なものを手放す決断をしていたのだ。
「青年」
「なんだ、おっさんも眠れねぇのか?」
 その言葉に、やはり眠れないのかと、口には出さずに曖昧に笑う。
 レイヴンの呼びかけにユーリは小さく肩を震わせてから、振り向く時にそっと右手を魔導器から離した。何を考えていたのかと、聞く必要もないだろう。全てが終わったとは言わないが、一つの結末を得た今、彼が思いを馳せる相手をレイヴンは一人しか知らなかった。
 いや、一人知ってしまっている、というべきか。
「……思い出してたんだ」
 かける言葉を選んでいると、左に首を傾けながら体ごとレイヴンの方に向き直り、ユーリは笑った。
 何処か優雅に見える無造作な動きは、けれど足元の花を踏まないように気を配られている。
 そんな彼なりの細かな気配りを感心すべきか、そんな些細なことまでを気付いてしまうようになった自分に呆れるべきか、それとも続くべき言葉を恐れて意識を逸らそうとしている自分を自嘲すべきか、答えなどわからなかった。
「何を、思い出してたの?」
「気になるか?」
「言いかけたのは、青年でしょ」
「おっさんなら気づいてんじゃねぇのかって思ったんだよ」
 水面に反射する月明かりがユーリの表情を青白く映していた。
 乾いて張り付いた喉の奥が夜風に晒されて酷く痛む気がする。
「何を、思い出してた、の?」
「……思い出してたっていうか、報告してた、かな。あとそれと――」
「それ、と?」
「もしかしたら魔導器が嫌いなのかもなって……問いかけてた」
「誰に?」
「隊長に」
 薄っすらと浮かべる笑いが妖艶な舞台女優の手招きを見ているようで、普段の凛とした姿との違いにどくどくと心臓が暴れ出した。激しい音が、ユーリにも聞こえているのではないかと思えるほど、煩く体内に響き渡る。
「初、耳ね」
「何が――あぁ、魔導器が嫌いだってことか?」
「ずっと身につけてるしリタっちにも気を使ってたでしょ? 好きとは言わないけど、別に嫌いだって印象はなかったわよ」
「嫌いだよ」
 返事はごく短くきっぱりとしたものだった。
 淡々と口にされた単語が、鉛玉を飲みこんだように食道を冷たくしながら、胃に重い感触を残す。
「魔導器は、嫌いだ。あれが――あんなものがあったから、隊長が死んだ」
「……」
「あぁ、ちと違うか。隊長が守りたかったものは結界魔導器で守られたんだからな。そうだな、俺が嫌いなのは兵装魔導器とそれを開発してた連中、かもな」
 シゾンタニアでの開発を手掛けていたガリスタと、それを指示していたアレクセイと。
 言葉には出されなかったがそう続くのはわかった。
 アレクセイの残していた資料や書類から、随分と前からヘラクレスを開発していたのがわかったのはつい最近だ。その過程で人体実験をしていたことや、辺境の街で魔導器の実験や開発をしていたことも、多数実例があることが分かっていた。
 その一つに、シゾンタニアの遺跡の魔導器も、含まれていたことも。
 しかもあの時暴発が起こらなくとも、いずれは暴走させる計画があったことも。
 街の結界魔導器ではそれを防ぎきれないであろうことも。
 それらを含めて、レイヴンが知っていたこと、も。
「青、年――」
「なんで隊長は死ななきゃならなかったんだろうな」
「……」
「あの人はただ守ろうとしていただけだ。俺なんかにはわからないほど色々なものを抱えてたはずだし、問題もよくわかっていたはずだけど、それでも手の届く範囲のものを守ろうとしていた」
 諦めていた訳ではないのだろう。流されることを選んだのでもない。
 ただあの人は、時代の流れと自分の役割をよくわかっていたのだ。いつも目を背け続けていた、レイヴンやシュヴァーンとは違い、真っ直ぐと見ていた。
「隊長が死ななきゃいけないことなんてさ、何もなかったはずなのに。なぁおっさん、なんで隊長が死ななきゃいけなかったんだと思う?」
「それ、は……」
「なんで隊長は見殺しにされなきゃならなかったんだと思う?」
「! ――」
 それは遺跡で残していったユーリ自身のことを言っているのか。
 それとも危険を知りながら見ていただけだったレイヴンに言っているのか。
「ナイレン、隊長は……見殺しにされたなんて、思ってないんじゃない、の」
「隊長はな。でも見殺しにしたかどうかは、死んだ隊長じゃなくて――生きている人間が自分の胸に聞くもんだろ?」
 そうだろうと、同意を求めるように呟かれた、言葉。
「おっさん、は、」
「――あぁ、ちとズルイ聞き方してもいいか?」
 指先が伸ばされてきて、目尻から輪郭に沿って緩やかに滑り落ちていく。
 夜風に当たっていたせいか触れた指は冷たく、手首で光る役目を終えた魔導器が月明かりの下で嫌に色鮮やかに輝いているように見えた。
「俺は、どうしてあの遺跡で、隊長を、見捨てなきゃいけない、状況になったんだ?」
「ぁ……」
「何で、俺が隊長を……。誰も止められなかったのか?」
「あれ、は――」
「なぁおっさん。どうして――」

 ――俺ニ隊長ヲ見殺シニサセタンダヨ

 濁った闇色の瞳の中に自分の姿を見つめながら、引き攣った悲鳴が空気を震わせる音を、遠い世界のことのように聞いた。

| ヴェスペリア | TOP↑

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。