運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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温かい雪

ま、クリスマスってことで雪のSS
これも別で晒してたんだけど加筆してこっちでも。
ナイユリっていいよね、と主張。
早くDVD&BD出してくれよーと日々悶々としてる。

> こさみ様
メールアドレス承りました。
通販再開まで今しばらくお待ち下さいませ!


 
「初めてか?」
 じっと空を見上げたまま動かない背中に声をかける。
 笑いながら問いかけた言葉にいつもなら即座に抗議の声が返ってくるのだが、元気の良過ぎる声は残念ながら返って来なかった。
 ただじっと、眼差しを真上に向けたまま、灰色の空だけを映している。子供のように顔を空へと向け、形の良い唇は薄く開けられたままだ。
「雪、初めて見るのか?」
 隣まで歩み寄ってもう一度問いを繰り返せば、真上に向けられていた瞳がゆっくりとナイレンの姿を捉えた。
 三度瞬き、隊長と小さく呟いた様子から、どうやら本気で一度目の呼びかけは聞こえていなかったらしい。アメジストに写り込む黒真珠のように艶やかな黒紫は、好奇心と歓喜を隠す気配もなく、大きく見開かれていた。
 珍しく感情をストレートに出した表情だ。
「……雪」
「帝都じゃ降らなかったか?」
「覚えてねぇ。昔は積ったってじいさんが言ってたけど」
「そうだな、ここ十数年は暖かいからなぁ」
「絵本でしか、見たことねぇ……」
 整った顔立ちは無防備な表情をしていると酷く幼い。ましてやその顔で絵本などと口にすると、随分と似合過ぎて微笑ましいぐらいだ。
 シゾンタニアは穏やかな気候だが、冬の冷え込みはそれなりに厳しく、深く積ることはないとはいえ毎年雪景色が街を覆う。ナイレンはここに赴任して長いので珍しくもなんともないが、帝都から出たことのないユーリにとっては初めて見るものなのだろう。
 ふわりと空から落ちてくる、雪。
 それを子供のように見上げるユーリ。
 ひときわ大きな雪に、黒髪を揺らして少し背伸びしながら宙に手を伸ばし、両手でそれを包み込んだ。まるで宝ものでも手にしているかのように。
 大切そうに手を開けば、白い掌の上に白い雪が淡く見えた。けれど雪は、すぐに体温で溶かされて消えていく。
 白い掌の中で、消えていく白い雪。
「――ここ、積るのか?」
 雪が消え少しだけ濡れた掌に視線を落したまま、ユーリがぽつりと呟いた。
「ん? あぁそうだな。年に何回かは白くなるぞ」
「白く……」
「街にも森にも雪が積ってな、白く染まる。綺麗なもんだぜ」
 白い景色の中では黒髪は鮮やかに映えるだろう。
 積った雪を前に、子供のようにはしゃぎながら走り回る姿は容易に想像できる。
 ついでにそれに対して小言を言っている幾人かの隊員の姿もまた、容易に浮かんでくる。
「隊長は雪、好きなのか?」
「ん? 別に好きも嫌いもねぇけどなぁ」
 子どもの頃ならば珍しくて楽しんだのかもしれないが、正直年をとれば天気一つに好きかどうかの感情を一々持ったりなどしない。冬の雨は冷たいなとか、霧だと視界が悪くて森へは行けないなとか、そんな実用的な感想しか持ちようがないのだ。
 そういった会話を交わす相手がいなくなって久しいということもあるが、天気についてどう思うか考えるなど、随分と懐かしく温かい気持ちにさせられる。
「ま、ちと寒さが堪えるから多いのは勘弁してもらいてぇ、ってところかな」
「あぁ年だからか」
「うるせぇよ」
 雪も寒さも別に嫌いではない。
 けれど、と声に出さずに思い浮かべる。降り積もった雪は音を吸収してしまい、子供の歓声すら静寂の中に閉じ込めてしまうようで、そんな静かさに覆われてしまうところは少し苦手であると言えるかもしれない。
 天気はともかく、静かなのは好きではない。
 息が止まり動かなくなり、話せなくなった人を思い出してしまうから。
 声の聞こえない世界は、重く苦しいものだ。
「あー、早く見てぇなぁ」
「――ったく、ガキだなお前は」
「だってさ、」
 雪を見つめて無邪気に笑っていた瞳が、ふと真剣な色彩を浮かべてナイレンを捉える。
「隊長が見たものは全部、俺も見てぇしさ」
 灰色の空の下。ふわりと舞う白い雪の中。
 ユーリはすぐに照れたように視線を逸らされてしまったが、小さなその一言は、冷たくなりかけた心をくすぐったく温めていった。

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