運命の果てまで

テイルズ(V/G/A/S-R/D)・FF・Dグレなど、ゲームやマンガに好き勝手萌える腐ログ

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犬を追う

現実逃避とわかりつつユリユリ。
前回のユリユリの少し前、な感じです。
この二人、シリアスでも軽くても可愛いと思う。
ユリユリブーム、起こんないかなー。


 
「お、いたぞ」
「ったく、面倒くせぇなぁ」
「あっちの方へ曲がったな」
「あー、はいはい」
 心底面倒くさそうな声が応じると、隣に並んでいた同じ高さの肩が、すっと飛び上がって屋根の上へと飛び乗った。
 今にも壊れそうな瓦を踏みしめた足は、けれど音一つ立てない。しなやかで軽やかな動きだ。粗暴な言葉に粗雑な動きを見せるくせに、行動に音というものが伴わない。まるで野生の獣のようだった。
 薄い月明かりを背景に、白い服が鮮やかに浮かび上がり、黒髪が影をつけるようにふわりと背を覆う。跳躍前に身を屈める獣の体躯そのもののように、滑らかな身体の曲線が美しい。
「――ドジんなよ」
「余計なお世話。鏡見て自分に言え」
 返ってくる言葉は可愛げの一つもない台詞だ。だが皮肉に眇められた瞳に反論する前に、白い影はあっという間に向こうへと走っていった。
 素早い動きは人のものというよりも、猫といった方が正しい身のこなしだ。身体つきは見た目にまったく同じなのに、身体能力その他、どうもユーリは彼に敵う気がしない。いや、実際最初にしっかりと負けてはいるのだが。
 それだけに彼がどういった状況に身を置いてきたのか推測できるし、だからこそ問い返したこともなかった。言わないのは言う必要がないからか、それとも言いたくないかなのだろうから。
 ふと現れてユーリの元にいついてしまったシロ。
 ユーリとまったく同じ姿形の――レプリカ。
 向かい合えば鏡に映したように感心するぐらい同じで、けれど動いて口を開けばユーリとはまた違う表情を見せる。同じでいて同じではない存在。違うけれども、どこか同じものを抱えている存在。
 一呼吸置いて、標的が向かっていた道を曲がる。
 路地の先に標的が――茶色い犬が見えた。
 逃げ出してしまった犬を捕まえて欲しい、というのがギルド経由でもたらされた依頼だ。どうやら下町に迷い込んでいるらしいということで、ユーリのもとに話が来たのだ。
 シロなどは「くだらねぇ依頼だな」と言っていたが、ユーリがこなしている依頼の大半がそういった「くだらない」に類するものだ。面倒な依頼がそうそうあってもらっても困る。
 請負人、などと名前ばかりが一人歩きしているが、その手の依頼など数えるほどしか請け負ったことはない。いや、依頼として受けたことなどないと言ってもいい。巻き込まれたか、もしくは依頼とは関係ない自身の行動かだ。
 とはいえ、どんな依頼だろうと受けたからには解決せねばならない。見つけては逃げられての繰り返しだったが、今回こそは捕まえたかった。
 だがユーリの姿を見ると、犬は一目散に前を向いて走り出す。
「ああっ、くそっ。待てって!」
 犬はそれほど足は速くないものの、迷路のように細い路地の中では追いかけるのは一苦労だった。狭い壁と散乱しているごみに阻まれて、なかなか近づくことが出来ない。
 狙ったように障害物の覆い路地ばかりを走っていく犬に悪態をつきながら、何とか見失わない速度で後を追った。
 だが如何せん人と動物の違いは歴然だ。人としては随分と俊敏に追いかけてはいるが、何とか姿を見失わないという程度に離されかかる。
 追いかけて曲がった路地の先、犬の姿が別の路地に吸い込まれそうになった。
 と、
「――蒼破追蓮」
「っ!」
 横合いから衝撃波が、犬の真横にあった木箱を破壊した。
 驚いて足を止めた犬に向かって二発目が迫り、すぐ横の壁にぶつかった余波で犬の身体を吹き飛ばす。
 犬の身体が高く舞い上がり、そのまま落下してきた。
「うわっ――! よっ、と」
 慌てて飛び込んで、地面すれすれで犬を受け止める。
 腕の中に納まった犬は、完全に目を回してくったりとなっていた。
 どうやら衝撃で気を失っているようだ。
「おい、無茶すんなよ」
「はぁ? お前が鈍いからだろ。また逃がすとこだったじゃねーか」
 取りあえず怪我がないことに安堵しながら顔を上げれば、ふてぶてしい声が返ってきた。屋根の上で剣を肩に乗せたまま、にやりと笑う姿。
 間に合わなければ逃がすどころか死んでただろうと思ったが、相手の表情を見る限りは確信犯のようだった。犬がどうなろうと知ったことではないというのが半分、ユーリが間に合うと信じていたというのが半分、というところだろうか。
「だからって犬相手に技出すなってーの」
「当ててねーだろ。言うこと聞かない奴にはちょっとぐらいお仕置きしておかねーとな。こんなことで二日も振り回されちゃたまんねーぜ」
「あー悪かったな、つき合わせちまって」
 迷い犬を追って丸二日。乱雑な下町をコレほど呪った日もない。
 捕まえられそうで捕まらない、犬の姿を大の男二人で追い掛け回していたのだ。愚痴の一つや二つ言いたい気持ちはユーリにも良くわかる。
 依頼元がカウフマンだった時点で嫌な予感はしていたのだが、人の良いボスに困っているのを放っておけないとからとお願いされたら、無下に断ることは出来なかったのだ。それでなくても色々と、年少のボスには心配をかけっぱなしなのだから。
「本当お前って、くだらねぇ仕事ばっかだな」
「だから言っただろ。請負人だなんて、大層なことしてねーって」
「ああ、つまりそっちは『仕事』じゃねーってか」
「…………」
 軽い口調で核心を突いてくる。
 本当に、こういうところの察しの良さは嫌になるほどだ。
 それほど長い間一緒にいる訳でもないのに、生まれた時から一緒にいるような錯覚に陥る。シロがハンクス爺さんについた嘘ではないが、生き別れの双子だといわれても納得してしまいそうだ。
「怖い目すんなよ」
「お前が俺なんかを怖がるかってーの」
「拗ねるなよ」
「誰がだ」
 くるりと一回転して、シロが目の前に着地する。
 屋根に飛び上がった時と同様、音もなく静かな着地だった。ユーリのレプリカだというよりも、猫の生まれ変わりだとでも言われた方がしっくりするような身のこなし。
 いったい何を好き好んでユーリにまとわりつくのか。気になるところではあるが、問い質す気にはなれなかった。ここに居たいのであれば居れば良いと、そう思うほどには彼の存在をユーリは受け入れていた。
 何だかんだいいつつも、彼がまとう空気は嫌いではないのだ。
 誰にも告げることのないユーリの裏の部分を知っている、寧ろその部分に近い存在のシロは、傍にいるだけで自然と呼吸が軽くなる気がするのだ。至極勝手な甘えなのだろうけれども。
 だがきっとそれも、こいつは気づいているのだ。
「で? 今から届けに行くのか?」
「……もう遅いしな。持ってくのは明日だな。とにかく今日は早く帰って寝よーぜ。まじ、寝みぃ」
「誰かさんがドジらなきゃ、もうちょい早く終わったんだろーけどな」
「うっせ。それはクレープで手、打っただろーが」
「しつこくてすみませんねー、ご主人様」
「ご主人言うな、気持ちワリィ」
 いつも通りの、やや押され気味の悪態を交わしながら、狭い寝床へと肩を並べて歩いていった。


文句言いつつも手伝う白ユリたんと、
そんな白ユリたんを信頼してる黒ユリたん。
何だかんだと言いつつ、息ぴったりな二人を妄想するのが好きです。

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